本音を話す相手を間違えてはいけない。精神科医が『ガラスの仮面』月影先生の言葉を引用して解説!
公開日:2021/7/18
ファクト2 誰でも仮面(ペルソナ)を使い分けている
「誰にでも本音を話すべきではない」とアドバイスすると、「本音と建前を使い分けるような生き方は嫌だ」と反論が返ってきます。
誰にでも本音を話さないということは、別に「嘘をつくこと」でも「偽りの中で生きていくこと」でもありません。
あなたは千の仮面を持っている!
―北島マヤへの月影先生の言葉(『ガラスの仮面』美内すずえ著、白泉社より)
演劇の天才的な才能を持つ北島マヤは「千の仮面を持つ少女」と言われますが、私たちも「千」まではいかないものの、「十」くらいの仮面を持っていて、それをつけかえながら生活しているのです。
心理学で「ペルソナ」という考え方があります。「ペルソナ」とは、「仮面」という意味で、私たちは、いくつもの「ペルソナ」を使い分けて生活しているのです。
たとえば、「会社」では、「会社員」の仮面をかぶり、「家」では仮面を取り「素の自分」でいられるかもしれません。さらに、上司と接するときは「部下」の仮面を、部下と接するときは「上司」の仮面をつけるでしょう。家にいても、子どもと遊ぶときは「親」の仮面をつけて振る舞い、夫婦の間では「夫・妻」の仮面をつけるのです。
実際に、上司、部下、家族と接するときは、「言葉遣い」や「表情・態度」が変わるはずです。誰でも「ペルソナ」を使い分けているのです。
会社でも家でも同じ心構えで、同じように振る舞い、素の自分をさらけ出していたとしたら、おそらく「会社」も「家族」も成立しません。
「本音と建前を使い分ける」という言葉は非常にネガティブですが、「ペルソナを使い分ける」と考えるだけで、人間関係の軋轢やストレスは大きく減らせるのです。
ToDo2 ペルソナを使い分ける
「本音」を言うべきかどうかで悩んでいる人は、「ペルソナの使い分けができていない人」です。
上司から嫌味を言われて、思わず反論したくなったとしても、「今は会社員の仮面をかぶっている。だからどう言えばいいのか」と考えるのです。本音で反論するべきかどうか、ちゃんと判断しましょう。
ちなみに、「ペルソナ」は、「パーソナリティー(個性)」の語源です。個性とは「素の自分」ではなく、「仮面をかぶった自分」なのです。個性というのは、決まりきった1つのものではなく、臨機応変、変幻自在に変わっていいものなのです。そう考えるだけで、ものすごく楽になるでしょう。
「本音を言わずに建前で生きる」と考えるとストレスが溜まります。会社はあなたの舞台です。そこで、あなたはスーパーサラリーマンを演じればいいのです。「理想の自分を演じてみる」のです。
「本音」を言う場合、「ペルソナ」をずらすというテクニックがあります。上司に対する不満をそのまま上司に言えばトラブルになります。「仕事」のペルソナでの不満は、「友人」のペルソナのときに親友に吐き出せばいいのです。
ペルソナは、単なる仮面ではありません。ときに、「盾」となって、ストレスや他人からの攻撃を受け止めてくれます。
仕事で失敗したとしても、それは「仕事」のペルソナが失敗しただけの話。あなたの全人格が否定されたわけでもないし、いちいち落ち込む必要などないのです。
ToDo3 「本音」と「感情」を分けて伝える
そうは言っても、「本音をどうしても伝えたい」という人もいるでしょう。その場合、本音を上手に伝えるコツをお伝えします。
あなたが言いたい本音は果たして本当に本音でしょうか。たんなる「感情反応」ではないでしょうか。
もし、感情反応を実際に言葉に出して言ったとしたら、絶対に後悔します。「本心から出た言葉」であれば、後悔などしないはずです。後で責められたとしても「心から思っているので」と堂々と言えばいいだけです。
たとえば、「バカヤロー!」という言葉は、「本心」から出た言葉ではなく、「一時的な感情」から出た言葉です。それを言葉にして相手に伝えると、必ず後悔します。
「一時的な感情」と「本来の考え、気持ち」(つまり「本音」)は、区別して考えるべきです。本音は、そう簡単には揺るがないものです。
本音の外側に感情がコーティングされているので、「感情」と「本音」を分けることは難しいのですが、「感情」と「本音」を一緒に伝えると、おそらく「マイナスの反応」が返ってきます。特に、夫婦喧嘩のほとんどは、このパターンです。本音を伝える場合は、「感情」を切り離し、冷静に「本音」だけを伝えるべきです。
「人間関係のトラブルが多い」「喧嘩が多い」という人は、「感情をぶちまける」クセを持っている可能性が高いので、「感情」を含んだ言葉に注意するようにしましょう。そうすることで、人間関係は良好になります。
さらに学びたい人は
映画『マスク』
難易度★
「ペルソナ」をわかりやすく理解するには、映画『マスク』を観るといいでしょう。内気で気弱な銀行員のスタンリー(ジム・キャリー)。思いを寄せる女性ティナの前では萎縮してしまい本心を打ち明けられません。そんなスタンリーが、偶然手に入れた「木製の仮面(マスク)」。それをかぶると、積極的で大胆、ノリノリ、イケイケの魔神に変身できるのです。マスクが巻き起こす騒動を描いたコメディ映画ですが心理描写も深いのです。マスクのキャラクターは、スタンリーにとって真逆の性格、つまり「なりたい自分」でした。彼はマスクなしでも、自分から行動できるようになり、最後には自分の気持ちをティナに伝えられるように変化していき、別人(本当の自分?)を演じられるようになるのです。この映画を観ると「ペルソナ」への理解が深ま
ります。