「宿題しなさい」と言っても聞かない子どもを動かす「Iメッセージ」って?

暮らし

公開日:2021/7/20

精神科医が教える ストレスフリー超大全

 ストレスが増えたと感じやすい今。ストレスに100%悩まされないようになることは、とても非現実的な話です。

 20万部を超えるベストセラーとなっている、精神科医の樺沢紫苑さんの著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全 人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト』(ダイヤモンド社)は、「ストレスゼロを目指すのではなく、ストレスに対する考え方・受け止め方を変えること」を教えてくれる1冊。

 さまざまなストレスに対し、「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」が示され、心と体を整える行動が明確にわかります。

 本稿では本書から一部抜粋して、「他人を変えるにはどうすればいいのか」についてご紹介します。

精神科医が教える ストレスフリー超大全 ―― 人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト
『精神科医が教える ストレスフリー超大全 ―― 人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト』(樺沢紫苑/ダイヤモンド社)

他人を変えるにはどうすればいいのか

 私の元に寄せられる相談の10件に1件は次のような相談です。

「夫が散らかしてばかりで、片づけをさせたい」
「部下の仕事が遅いので、意識を変えたい」
「子どもがきちんと宿題をするように変えたい」

 つまり、「他人を変えたい」という悩みです。そんなことは可能なのか、ここで説明していきましょう。

ファクト1 他人を変えるのは、究極のストレス

 ここまでも述べてきたとおり、他人の行動や性格を変えるのは、非常に難しいことです。本人が「問題意識」を持たない限り、不可能なことです。

 本人が「変わりたいと思わない」。もしも、本人の意思に反して、性格を変えられるとしたら、それは「洗脳」です。あなたは、部下やパートナーや子どもを洗脳したいのでしょうか。

 P74でも紹介したように、「他人と過去は変えられない」のです。変えられないものを変えようとすると、ものすごいストレスを受けます。1トンほどの巨大な石を一生懸命動かそうとしても、ただ疲れるだけです。

 それが原因で、精神的に疲れて、うつになる人もいます。でもそれは自分で「自分が疲れる原因」を作っているようなものです。「他人を変えたい」という人にはアドラーの「課題の分離」という考え方が役に立ちます。

健全な人は相手を変えようとせず、自分が変わる。
不健全な人は相手を操作し、変えようとする。
―アルフレッド・アドラー(オーストリアの心理学者)

「宿題をする」というのは、誰の課題でしょうか。それは、「子ども自身の課題(他者の課題)」であって、あなたの「自分の課題」ではありません。宿題をしないで怒られ、困るのは「子ども」本人です。

 子どもが宿題をするか、しないかは、自分で判断して、自分で決めることです。あなたが子どもの意識をコントロールすることはできませんから、そこでやきもきしても意味がありません。他者を尊重して見守るしかないのです。

 ほとんどの人間関係のトラブルは、「他者の課題」に干渉・侵害することで起こっています。「課題の分離」がきちんとできると、人間関係のストレスは大きく解消できます。

精神科医が教える ストレスフリー超大全 p.91
(C)meppelestatt

ToDo1 2つのメッセージを意識する

「他者の課題」(その人の課題)に対して、立ち入られたり、過剰に干渉されることを人は嫌います。ですから、「宿題しなさい」と子どもに言うほど、子どもは逆に反抗して宿題をしなかったりします。では、どうすればよいのか。放置するしかないのでしょうか。こんな、いい方法があります。

「Aちゃんが宿題してくれると、お母さんは嬉しいんだけどな」と伝えることです。自分の願望、希望を、ただ相手に伝えるだけです。主語がI(私)なので、「Iメッセージ」と言われます。

 一方、「(あなたは)宿題をしなさい」は、主語がYou(あなた)なので、「Youメッセージ」と言われます。

「Youメッセージ」は、あなたの思いやりからの言葉であっても、相手には命令、指示、指図、お仕着せ、おせっかいとして取られるので、反発、反感を買いやすいのです。

「Iメッセージ」は、あなたが勝手に思うだけです。「宿題してくれると、お母さんは嬉しい」というのは、1つの事実なので、「お仕着せがましさ」を感じさせることなく、「宿題をしてほしい」という願望を、マイルドに伝えられます。

 たとえば、「自分で出したものは、自分で片づけてよ」ではなく、「部屋がきれいだと、(私は)気分がいい」と言うのです。

「いつも遅刻ばかりして、どういうつもりだ」ではなく、「いつも時間を守る人は、(私は)信頼できるなぁ」というように伝えます。人を動かしたい場合は、「Youメッセージ」をやめて「Iメッセージ」で伝えることです。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)/精神科医、作家。1991年、札幌医科大学医学部卒。樺沢心理学研究所を設立。YouTube29万人、Facebook11万人、Twitter12万人など、インターネットメディアで圧倒的なフォロワー数を抱える。(各フォロワー数は2021年7月2日時点)