「宿題しなさい」と言っても聞かない子どもを動かす「Iメッセージ」って?
公開日:2021/7/20
ToDo2 情報提供し続ける
序章で「朝散歩」をおすすめしましたが、すぐにはじめる人は、ほぼいません。特に患者さんの場合、「調子が悪いのでできません」「寝起きが悪いので無理です」などと必ず言います。
その場合、「朝散歩しなさい」と言えば言うほど、相手はやりません。やがて、「具合が悪いのにできるわけがない」と逆ギレされることもあります。
そんなときは、「朝散歩」の「メリット」をたくさん伝えるようにします。
「朝散歩すると、体内時計がリセットされて寝付きがよくなり、睡眠が深くなります」
「セロトニンが活性化して、うつ病にものすごく効果があります」
「他の患者さんは朝散歩をしはじめて、すごく調子がよくなりましたよ」
そんな話をするようにしています。長い話も嫌がられるので3分ほどしか話しません。すると、最初は「無理です」と言っていた患者さんでも、いつのまにか「朝散歩」をはじめていたりするのです。
伝え方のコツは、「(やるかやらないかは別として)こういう情報がありますよ」「こういう統計がありますよ」「こういう科学研究がありますよ」と客観的・中立的に伝えることです。
「あなたにやってほしい」という感情を込めてしまうとマイナスです。クールに、「こういう情報があります」と伝えるほど、相手の「感情的なハードル」が下がり、効果的です。
片づけをさせたい場合は、さりげなくリビングの机の上に「片づけ本」を置いておくのがよいでしょう。このとき、「この本、絶対に読んだほうがいいよ」とは言わないことです。何ヶ月か置きっぱなしにしておくのが重要で、置いたことを忘れた頃に、相手はこっそりと本を読んでいたりするのです。
「やれ」と言うほど、相手はその行動をとりません。ただ、その行動をとると、「こういうメリットがありますよ」「こうやると楽にできますよ」という情報提供を根気よく続けると、忘れた頃に相手は動きはじめるのです。
ToDo3 半年以上待つ
ここまでの方法を駆使して、相手の行動を変えようとした場合、どのくらいの期間で効果が出るのでしょうか。
私の経験から言うと、「半年」かかります。
10人の患者さんに「朝散歩」をすすめた場合、すぐにはじめる人は1人。3ヶ月以内にはじめる人は2人。残りの7人は、半年以上してからはじめる。そんなイメージです。
治療開始の最初の1~2ヶ月は、しつこく「朝散歩」の話をしますが、途中から、その話題をしなくします。
すると、半年くらいして、「最近、調子がいいようですね」と聞くと、「朝8時に起きて散歩しています」とサラッと言うのです。「先生に言われたからやっているわけじゃないよ」というような雰囲気を醸し出しているのがポイントです。
人に「言われてやる」というのは、本当に嫌なものです。最終的に、やるかやらないかは自分の意思です。相手の意思、やる気、人格を尊重した上で、「Iメッセージ」「情報提供」を根気よく続け、ようやく半年くらいかけて、相手は変わりはじめるのです。イライラせず気長に関わりましょう。