なぜ、モノやサービスの提供にはお金が必要? お金の役割とは/14歳の自分に伝えたい「お金の話」④
公開日:2021/7/3
藤野英人著『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』から厳選して全11回連載でお届けします。今回は第4回です。「僕らのお金の使い方」が“社会の未来”を左右する――。稀代の投資家が「14歳の自分」に伝えたくなった、お金に使われず、お金で苦労しないための「考え方」とは? 一生役立つ「お金の話」が詰まった、老いも若きも必読の一冊です。
お金は「価値の交換」ができる便利な道具
もう一度、最初の問いに戻ります。
お金とは何なのか?
今度は僕自身の捉え方から少し離れて、もっとお金の「定義」に近い話をしたいと思います。
お金の役割とは「人と人が価値を交換する、あらゆる活動の媒体になること」だと僕は理解しています。
媒体とはつまり、間を取り持つ役割を果たすもの。ある人が自分でつくった、あるいはなんらかの方法で手に入れたモノやサービスを、他の誰かに提供したいとき、その交換取引の間を取り持つのがお金です。
では、モノやサービスを誰かに提供するときに、なぜお金が必要なのか? タダであげるのではなくて、お金をもらうやりとりが原則になったのには理由があります。
モノやサービスをつくるまでには、材料や知識、労力、アイディア、いろんなエネルギーやコストがかかる。これを経済学では「研究開発投資」と呼んだりします。
だから、完成品を誰かに提供するときには、そのかかった分を回収するためにお金を払ってもらうというわけです。
材料費のような目に見えるコストだけでなく、労力やアイディアといった〝目に見えないコスト〞にも値付けをして、価値の交換をどんどん可能にしていく。
君の家にあるもの、例えば、靴、お皿、筆記用具、布団、車……全部がお金を通してやってきたものです。そうやって社会生活は成り立ち、発展してきたのです。
お金がない時代には、物々交換で必要なものをすべてそろえようとしていたという歴史は知っていると思うけれど、今の生活を知っている僕らからすると、不便で非効率だっただろうなと想像してしまいます。
だから、昔の人は大きな不便を解消するためにお金を発明し、その役割を発展させていった。最初に使っていたのは石や貝殻。次第に青銅などの金属へと素材を変えて、お金の姿は進化していく。これが貨幣の誕生です。
貨幣が社会に流通し始めると、「誰かのために何かをつくる、何かをしてあげるという行動は、お金と交換される」というルールへの理解も広がっていきました。
お金を得ると、自分の好きなものや欲しいものが手に入ります。
だから、誰かの役に立つものやサービスをつくってお金をもらおうとする人が爆発的に増えていったのです。