テレビもお金が存在していたからこそ誕生した!? お金が持つ“パワー”とは…/14歳の自分に伝えたい「お金の話」⑤

暮らし

公開日:2021/7/4

藤野英人著『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』から厳選して全11回連載でお届けします。今回は第5回です。「僕らのお金の使い方」が“社会の未来”を左右する――。稀代の投資家が「14歳の自分」に伝えたくなった、お金に使われず、お金で苦労しないための「考え方」とは? 一生役立つ「お金の話」が詰まった、老いも若きも必読の一冊です。

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14歳の自分に伝えたい「お金の話」
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(藤野英人/マガジンハウス)

「お金」が社会を発展させてきた

 考えてみてほしい。君が毎日当たり前に使っているもの、例えば家にあるテレビを思い浮かべて、そのテレビをイチから自力でつくることはできるでしょうか?

 設計図を書いて、部品のすべてを調達して、組み立てて、さらに電波をキャッチするための通信環境も自分でこしらえる。

 それを「全部自分一人でできる」と言える人は、おそらくいないでしょう。

 でも、それを悲観する人もいません。テレビを自力でつくることはできない代わりに、僕らは他人がつくってくれた完璧なテレビを手に入れることができるからです。

 お金を使って買えば、すぐにでも自分のものになるのです。

 人類を発展させた発明品の多くは、その前にお金が誕生していたから生まれたと言ってもいい。

 もちろん、お金がなかった時代にも他人のために一生懸命になれる人はいたはずだけれど、「お金に交換できる」という約束がある世の中になったから、熱心に努力する人、才能を発揮する人が飛躍的に増えていった。

 つまり、お金の〝人の努力や才能を引き出すパワー〞によって、文明社会の発展は加速したのです。そう考えると、お金はエライですね。

 

 このようにお金は誕生直後から人気を集めたわけだけれど、その価値を誰かが保証する必要がありました。

「このお金は本物で、好きなものと交換できる」と皆が信じないと、交換は成り立たなくなってしまいますからね。

 だから、誰でもお金を発行していいわけではなく、時の政府が正式に貨幣を発行することで、その価値を担保していたのです。

 ところが、いつの時代にも悪いことを考える人はいるもの。日本で最初にできた貨幣は、683年頃につくられたとされる「富本銭」で、中央に四角い穴が空いた丸い銭貨なのですが、ほぼ同時期の出土品として大量の偽銭が発見されています。その量は本物より多いというから、人間の貪欲さに驚きます。

 

 なんだか遠い先祖を情けないと感じるけれど、こんな見方もできます。その貪欲さが求めたものは「誰かの努力」であり、「誰かの才能」なんだと。

 努力や才能の成果が欲しいから、自分でお金をつくって手に入れてしまおう。そんなピュアな貪欲さで、精巧な偽銭をつくった人がたくさんいたというのは人間らしいなと、僕は感じてしまうのです。

 しかし、お金の偽造はいつの時代でも重罪です。当然、当時の政府も偽銭のつくり手を厳しく取り締まりました。取り締まったのだけれど、本物と見まがうほどの精度で偽銭をつくった悪人については、むしろその高い技術を評価して、役人として雇用したという話もある。

 そんな奇想天外な実話まで生み出してしまうのだから、お金はやっぱり面白いし、パワフルですね。

<第6回に続く>