値段がついていてもモノが買えないってどういうこと? モノの価値とお金の関係/14歳の自分に伝えたい「お金の話」⑥

暮らし

公開日:2021/7/5

藤野英人著『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』から厳選して全11回連載でお届けします。今回は第6回です。「僕らのお金の使い方」が“社会の未来”を左右する――。稀代の投資家が「14歳の自分」に伝えたくなった、お金に使われず、お金で苦労しないための「考え方」とは? 一生役立つ「お金の話」が詰まった、老いも若きも必読の一冊です。

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14歳の自分に伝えたい「お金の話」
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(藤野英人/マガジンハウス)

「パワフル」だけれど、「万能」じゃない

 さて、自分の好きなものや欲しいものと交換できるお金。じゃあ、これをたくさん持っていたら、生涯安泰かというと、実はそうじゃない。

「お金があればなんでも手に入る」とは言えないからです。

 

 例えば、空気、太陽、海。こういった自然の恵みは、どんな資産家でも買うことはできません。

 あるいは、愛情や友情、信頼、尊敬。人の心もまた、お金で買えるものではありません。

 少し前に「女性の心はお金で買える」と言って炎上した起業家がいたけれど、これは半分本当で半分間違いです。

 たしかに高級レストランの食事や、高層マンションから見えるきれいな夜景で女性の恋心に火をつけることはできるかもしれないけれど、それだけで愛を永続させるのは難しい。

 つまり、世の中にはどんなお金持ちでも買えないもの、値段がつかない〝プライスレス〞な価値がある、ということ。もしかしたら、買えないものの数のほうが多いのかもしれません。

 

 また、値段はついていても、モノの数が足りないから買えないというパターンもあります。

 君もおじいさんやおばあさんからよく、「昔は買いたくても買えるものが少なかったんだよ」という話を聞かされていましたね。

 実際、第二次世界大戦で敗戦した日本では、ベビーブームで人口が増えるペースに対して、モノをつくるための労働者や工場、モノを売るためのお店や流通網が圧倒的に不足し、深刻な「供給不足」が続いていました。

 お金があっても、モノがない。だから、お金持ちよりも「つくる人」の立場が強く、「お願いだから売ってください」「お前には売ってあげてもいいぞ」といった会話があちこちで交わされていたのです(お金を払うお客さんのほうがエライ、とされることが多い今の世の中とは、ずいぶん様子が違いますね)。

 

 その時代からだんだんとモノの供給は増え、一方で人口が減って買い手も少なくなっているから、今は「モノが溢れる時代」だと言われています。

 商品は絶えず供給され続け、お店に行けば、いつも棚いっぱいの商品が並んでいる。

 ただ、そんな現代でもまだ、簡単に買えないものは存在しています。非常に貴重な素材や技術を使って、世界にまたとない商品やサービスを生み出す人には、「それを売ってください」という人がたくさん集まります。

 希少性が高く、需要が大きいほど〝価値〞は上がっていく。そして、価値に比例して、集まるお金も増えていく。

 そんな視点で、世の中の「価格」を観察してみてください。きっと面白い発見があると思いますよ。

<第7回に続く>