これさえあれば、借金も怖くない!?「お金を稼ぐ力」に必要なもの/14歳の自分に伝えたい「お金の話」⑩

暮らし

公開日:2021/7/9

藤野英人著『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』から厳選して全11回連載でお届けします。今回は第10回です。「僕らのお金の使い方」が“社会の未来”を左右する――。稀代の投資家が「14歳の自分」に伝えたくなった、お金に使われず、お金で苦労しないための「考え方」とは? 一生役立つ「お金の話」が詰まった、老いも若きも必読の一冊です。

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14歳の自分に伝えたい「お金の話」
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(藤野英人/マガジンハウス)

「借金」を恐れる前に考えたいこと

「お金を借りるのが怖い」というのも、日本人が貯金に偏りすぎる理由の一つだと思います。

 人からお金を借りちゃいけないよ。

 借金は人生をダメにするよ。

 そんなふうに教わることは多いですよね。

 たしかに、無計画に借金を膨らませたり、最初から返す気もなく踏み倒したりするのはダメです。

 でも、借金が返せなくなったからといって、人生そのものがダメになるということはありません。

 借金は、思ったよりも怖くない。なぜなら、日本には借金した人を立ち直らせてくれる救済制度が整っているからです。

 

 例えば、「自己破産」という制度があります。破産と聞くとまるで人生が終わってしまうかのように感じるかもしれませんが、実はこの制度、「借金で首が回らなくなった個人を追い詰める」ためのものではありません。持っている財産は手放さなくてはなりませんが、それでも返しきれない分の借金はチャラにしてもらえます。つまり、借金をリセットして、社会的信用をまたイチから築き上げるスタートラインに立たせてくれる制度なのです。命や家族を取られるわけでもなく、また新しいチャレンジを始めることができる。

 つまり、僕らは「いつでも再挑戦できる環境」を保証されているということ。だから、過剰に借金を恐れて、挑戦をしなくなるほうがもったいない。

 大事なのは、「何度でも再挑戦できる力」を鍛えておくことだと思います。

 

 僕自身、もし今持っている資産を全部取られてゼロになったとしても、なんとか這い上がってもう一度立ち直れるだろうという自信があります。

 お金がなくなって当面は生活に困るかもしれないけれど、これまでの経験で学んだ「お金を稼ぐ力」は消えないから、すぐに新しいことを始めると思います。

 お金を稼ぐ力とは、世の中の流れを注意深く観察して、自分の価値を提供できるお客様を見つけて、仲間を集める力。

 人生を守ってくれるのは資産だと思いがちで、預金通帳の金額が多ければ安心できると考える人は多いけれど、本当に人生を守ってくれるのは、知恵であり、仲間であり、勇気です。これらは、人生をいつでも立て直すために、お金よりもずっと、100倍も1000倍も大事なことなんだと君に伝えたい。

 例えば、君が将来、突然、大病を患ってしまったとします。医療費を払うだけのお金が十分になかったとしても、「代わりに払っておいてあげるよ」と助けてくれる友達がいればいい。自分のためだけにお金を貯め込む人生より、頼り頼られる仲間がいる人生のほうがずっと豊かだと感じます。

 借金はしすぎないに越したことはないけれど、借金による失敗を恐れ過ぎなくてもいいと覚えておいてください。

 借金で失敗した後に立ち上がる力を磨くために、知識や経験、人との関わりを積み重ねていく。そんな備えをしておくほうが、人生をタフに歩めると思います。

 

 僕自身、何度もピンチを味わってきましたし、僕が出会った魅力的な大人たちもみんな失敗や挫折からのサバイバーです。借金、裏切り、倒産、離婚。いろんな痛みを乗り越えている人ばかり。傷がない人はいないと断言してもいい。

 世の中で活躍している大人たちはみんな無傷で完璧な人間のように見えるかもしれないけれど、そんなことはない。

 みんな欠損だらけで、欠けたものをお互いに補い合いながら、どろどろになりながらもなんとか進んできた人たちなんです。

 でも、そんな人生が苦しくて投げ出したいかというと全然違って、そんな人生を心から楽しんでいる。

 もう一度言うけれど、お金の失敗は修正可能です。失敗を恐れて挑戦をする勇気を失うことのほうを恐れるべきなのです。

 だから、君も失敗から何度でも立ち直れる大人へと育ってほしいと思います。

<第11回に続く>