アンチ・批判コメントを受けたときの気持ちの正体は何? SNSで否定的なコメントを受け取ってしまったら…
更新日:2021/6/29
こんにちは。臨床心理士/公認心理師の白目みさえと申します。平日は精神科でカウンセラー業務をしながら、SNSなどで漫画の連載をさせていただいております。皆さんは、日頃SNSを使っていてお困りのこと、ストレスを感じることがありませんか? 本稿では臨床心理士の視点から、「アンチ・批判コメント」について私の思いをお伝えできればと思います。
アンチと呼ばれる方が全員批判コメントを書くわけではありませんが、この記事では「アンチコメントを書いた人」を「アンチ」と表現させていただきます。
アンチ・批判コメントとは
わざわざ説明するほどでもないかもしれませんが、SNS上の誰かの発言に対する誹謗中傷、否定的な内容のコメントのことを言います。
「死ね!」「殺す!」「キモい!」のようなわかりやすいものから、それなりに論理的に正論を交えながら「あなたがいかに間違っているか」をこんこんと書き連ねてくるものまで多岐にわたります。
私なんかもありがたいことにたくさんのフォロワー様に応援していただき、いろんなサイトで連載のお話を頂戴したり、書籍化までさせていただいて、本当に感謝が止まらない毎日を過ごしております。ただ、ときどき辛辣な批判コメントを頂戴することがあります。
人の感情はそれぞれなので、どう感じるかは自由ですし、それを否定するつもりはありません。「言うてこんでええやん」とは思いますけど。「人気がある証拠」と言ってくださる方もいらっしゃいますし、「気にしないのが一番」「無視しとき!」とアドバイスくださる方もいます。
でもアンチ・批判コメントをもらったことがある方なら経験があると思うのですが……頭ではそうだと思えていてもなかなか気持ちが切り替えられないですよね。それはこんな現象が起きているからだな…というのを私の実体験をもとに分析してみました。
アンチ・批判コメントを受けたときの気持ち
私の場合、最初に目にしたときはすべてを放り出したくなるような、存在を消去したくなるような、心臓をえぐられるような、自分のすべてを否定されたような気持ちになりました。これまで積み上げてきたものがすべて崩されるような感覚。自分がやってきたもの何もかも、人格ごと否定されたようでした。たったひとつのコメントなのに、この世のすべてが敵になったような孤独感や恐怖感も抱きます。
そして、こんな心ないトゲだらけの言葉を投げつけられるような、自分は無価値で大切にされることのない、どうでもいい人間なんだという感覚もありました。大袈裟かもしれませんけど、やはりアンチコメントにはこれくらいのパワーがあります。アンチコメントを受け取ったことのある多くの人が、一度はこれに似た感覚を味わっているのではないかと思います。
この気持ちの正体は何?
人の脳の中には「ミラーニューロン」という神経細胞があり、これによって「感情」が「共鳴する」と言われています。「ミラーニューロン」とは、相手の行動を見るだけで、自分も同じ行動を取っているかのように反応する、人間の脳内の神経細胞のひとつ。
たとえば、目の前の相手がりんごを手にとった場合。自分は実際にりんごを手にとっていなくても、見ているだけで脳内ではりんごをとった相手と同じ反応が起きているそうです。
「察しの良い人」「共感しやすい人」っていますよね。相手が手を少し動かしただけでティッシュをさっと差し出すことができたり、相手の話を聞いているだけで自分も泣いてしまったり。もちろんこれらの現象すべてがミラーニューロンで説明できるわけではありません。推理能力や想像力、そして思考の構築方法などいろいろなものが組み合わさって、このような現象が起きています。
でもどうやらこの「共感能力」のもとにあるのは、相手の脳内で起きていることを自分もトレースしたかのように体験してしまう「ミラーニューロン」の作用が関係しているのではないかと考えられているのです。
このミラーニューロンは誰にでもあります。相手が発したもの。たとえば「態度」「表情」「体の動き」「文章」などからでも、このミラーニューロンは発動すると考えられます。
たとえば緊張している人の横にいると自分まで緊張してしまう経験はありませんか? 「怒ってないよ」と口では言っていても、(絶対怒ってるやん)というのが分かってしまい、こっちもなんだか怒りを感じてしまうことはありませんか? このように「相手の感情」というのは、できる人には割と簡単に「共鳴」できてしまいます。
さて本題に戻しましょう。
アンチコメントを受けて私が感じた感覚。それは「アンチ」の感覚とシンクロしてしまったと考えられます。
そもそもアンチコメントを受け取るような人は、誰かの共感を得るような形で世に出ています。その時点でそれなりに共感能力が高い人と考えられますので、裏を返せばアンチにもシンクロしてしまいやすい方と言えるでしょう。