「自分のため」に、本を読もう。読書に対する思い込みを覆す新常識

暮らし

更新日:2021/9/15

ものの見方が変わるシン・読書術
『ものの見方が変わるシン・読書術』(渡邊康弘/サンマーク出版)

 本をたくさん読んでいる友人に追いつきたいけど、読む時間がない。マンガよりビジネス本を読む人の方が偉いのでは?という劣等感がある――そんな、読書にまつわる悩みを抱える人もいるだろう。思い切って買った本を数ページしか読めず、次の読書になかなか進めないのもよくある話。この『ものの見方が変わるシン・読書術』(渡邊康弘/サンマーク出版)は、そんな人の背中を押す1冊だ。

 著者の渡邊康弘氏は、脳科学や行動経済学、認知心理学をふまえた読書法「レゾナンスリーディング」の提唱者。年間3000冊を読む、いわば読書のプロだ。第1章では、読書が苦手な人のために、著者が考える読書の新常識を解説。第2章以降はさらに踏み込み、迷い多き時代を生き抜く力を高める読書法を伝えている。

 渡邊氏は冒頭で、「自分のために読む」という考え方を持ち、読書の自由を取り戻そうと語りかける。本が最後まで読めない、内容を忘れてしまう、買った本が読まずに積んである、といった読書の罪悪感の原因のひとつが、著者の意見をちゃんと理解しなければ、という義務感だと語る。自分のための読書という発想を持てば、自分が気に入った1行や役立つ情報が見つかれば読む意味があると思えるため、読書に向き合う気持ちが軽くなるとか。

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 著者が提示する読書の新常識は、もしかすると本好きからは賛否を呼ぶ部分もあるかもしれないが、読書がツラい人を救うものばかりでもある。「読書にはまとまった時間が必要だ」などの罪悪感を生む7つの思い込みを、「休憩をはさみながら短い時間のほうが結果は出る」といった新常識に変換。それらの理由を多様な参考文献を参照することで、理論の強度を高めている。

 2章以降で紹介されるのは、読書によって学び、考える力を養う方法だ。著者は、変化が多い今の時代には、深く思考する理性と、自分なりの答えを導き出すクリエイティブな頭のよさをバランスよく持つことが重要だと言う。そして、このふたつは読書で磨くことができると語る。たとえば、本を読む前に水を一口飲むなどの行動で知的パフォーマンスや集中力を高める方法や、本の内容に対する安心感を得る「パラパラ、パカッ!の三分読書」などは、読書に向かう意欲を高め、クリエイティブな能力を磨く読書法だ。一方で、著者の問題意識の見つけ方や、「しかし」の後に来る著者の意見をピックアップし、先を予測しながら読む読書法によって、理論的な考え方も身につけることができるという。

 読書のハードルを軽くする新常識を伝えた後で、読書をより実りあるものにする方法を解説する構成も、この本の魅力である。新常識のパートだけを読んでも十分だが、最後まで読むことで、本に対するモチベーションが1冊の中でステップアップしていくはずだ。自分に合った本の見つけ方や書店の楽しみ方のほか、まずはマンガから学びをスタートしてみるなど、本が苦手な人にも役立つコツが盛り込まれている。巻末には、目的別に分類された著者オススメの275冊も掲載。日常的に読書をする人も、本書を通して新しい本の楽しみ方を見つけられるかもしれない。

文=川辺美希