身近だけど難解!? そんな心理学をかわいいイラストで分かりやすく解説した用語集
公開日:2021/7/2
人間の心を科学的に解明する学問である「心理学」は、現代人にとって最も使える身近な学問のひとつと言えるかもしれない。書店には子育て、人間関係、恋愛、仕事などさまざまな領域を扱う心理学の本が並び、雑誌の「心理テスト」はもはや定番企画。最近はテレビのバラエティ番組でも心理学を題材にしている。学校や職場のカウンセリングも一般的だ。こう日常的に「心理学」を目にする状況だと、「心理学の世界をもっと知りたい!(ただし手軽に)」という人も増えているのではないだろうか。実際、世の中には「超入門」「はじめての」「わかる!」などの枕詞がついた心理学本がたくさんあって迷ってしまうが、そんなときは『図解 心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』(齊藤 勇:監修、田中正人:編著、玉井麻由子:イラスト/誠文堂新光社)をオススメしたい。昨年5月の刊行から1年で早くも7刷という本書は、なんといってもそのわかりやすさと手に取りやすさが魅力の一冊だ。
身近に感じる心理学の世界だが、実のところその全貌をつかもうとすると、やたら人名や用語・理論が多く、しかも小難しい。本書はいわゆる「用語辞典」としてそうした人名や用語を解説するというものだが、とにかく画期的なのは「図解」がメインであること。文字解説は簡潔に、ビジュアルの力(しかもカワイイ)ですんなり理解できてしまうのだ。帯には為末大さん(元陸上選手、Deportare Partners代表)の「60分で心理学をおさらいできる本」という推薦コメントが紹介されているが、まさにその言葉の通り、気軽にページをめくるうちに奥深い心理学の世界が「俯瞰」できてしまう。
本書で紹介されているのは96人の心理学者と150以上の心理学用語。「自我」「愛着」「同調」「集団圧力」「自己実現」「承認の欲求」……などなど、よく出てくる心理学用語に「!?」となったり、心理学者の名前に「?」となったりしても、主要な心理学の知識が一冊にまとまっている&検索機能もしっかりしているので「用語集」としてすぐに調べられる。さらに心理学用語は「心理学の誕生」から「精神分析」「発達心理学」「性格の心理学」など10章に分けて紹介されているため、頭から順に読むと心理学の歴史について大まかな流れも理解できるようにも工夫されている。「わかりやすさ重視」といっても、その用語が中心的に論じられている文献や関連知識などもきちんとフォローしてあり、決して表面的な知識だけでは終わらない「深さ」が追求されているのもうれしいところだ。
ビジネスシーンでも心理学の理論は役立つといわれることもあり、今後はますます心理学の知識を単なる「教養」ではなく、使える「知識」にするのがカギになりそう。実は日本でも有数のビジネス街書店・八重洲ブックセンター本店の一般教養書ランキングで発売当初1位(2020年5月3日~16日)になった本書は、時流に敏感なビジネスマンにはすぐに「ピン!」ときた模様。心理学をより身近にするだけでなく、「気分転換にパラパラめくったら、仕事に使えるヒントが見つかった!」なんてこともありそうな、傍に置いておきたくなる一冊だ。
文=荒井理恵