“生産性の高い時間の使い方”とは?「ゼロを1にする」3つの方法/「疑う」からはじめる。③
公開日:2021/7/14
澤円著『「疑う」からはじめる。』から厳選して全8回連載でお届けします。今回は第3回です。常識に縛られたら、思考は停止する――既存の価値観、古い常識、全部疑ってみよう。問題設定と解決策は、すべてここからはじまる! 元マイクロソフト伝説のマネジャーが新時代の働き方、生き方、ビジネススキルを提案する1冊!
「ゼロを1にする」こと以外は、仕事にしない
● 「ゼロを1にする」ための3つの方法
本来、クリエイティブな仕事をしなければいけない人たちにまで同質性が強制され、「時間給」的な働き方を強いられていることは、非常に大きな問題であると認識しなければなりません。そして、「生産性の高い時間の使い方」とはなにか、働く者一人ひとりが自分自身に問いかける必要があります。
わたしというひとりの人間が、もっとも価値を出せることはなんだろう?
自分の働く価値を再定義するには、「ゼロを1にする」ための仕事にどれだけの時間が割けるのかを突き詰めることがきっかけになるでしょう。「ゼロを1にする」ということは、この世にまだないなにか新しいものを生み出すこと。そのためには、必然的に「考える」時間を確保しなければなりません。
それは、何者にも邪魔されずにひとりで考える時間かもしれないし、いろいろな価値観を持つ人と考えをぶつけ合う時間もあり得るでしょう。
アイデアというものは、時間を区切って考えても出るとは限りません。1時間必死に考えてひとつも出ないかもしれないし、30分のディスカッションで5つ出るかもしれない。こればかりはわかりません。
ただ、ひとつだけはっきりしているのは、「ゼロを1にする」仕事に時間を割りあてなければ、いつまでもタスクだけに追われ続けるということです。
そこで、僕は3つのフェーズにわけて「考える」時間を自分なりに定義し、確保するようにしています。
①ひとりの時間をつくり、自分で考えを熟成させる。
②ディスカッションで、多様な人たちと考えを交換する。
③信頼できる誰かに話しながら、考えを構築・検証する。
これは、アイデアの成熟度によって最適な手法を選ぶということです。①なら、テーマについての理解度などを自分に問いかけるフェーズ。②なら、自分のアイデアが一面的であることを避けるために、複数人でのディスカッションで意見をもらうフェーズ。③は「壁打ち」という手法で、自分のアイデアが世の中に通用するような言葉に落ちているかどうかをたしかめるフェーズとなります。
これらのフェーズすべてを、僕は「ゼロを1にする」ための創造的な時間の使い方として大切にしています。
● 日本企業に欠けている「時間は借り物」という概念
「ゼロを1にする」ための仕事の時間の使い方を考えていくと、おのずと他人の時間の使い方にも敏感になっていきます。たとえば、ミーティング。
「僕にはこんなアイデアがあるのだけど、みんなの意見を聞かせてほしいんだ」と伝えれば、集まるみんなの目的がクリアになって、「ところでなんのためにここにいるんだっけ?」とはならないはずですよね。
でも実際は、「よくわからないけど、とりあえず集まった」というようなシチュエーションが多くありませんか。そうなると、結局はいちばん偉い人が気持ち良く話すだけの時間になってしまいます。
繰り返しますが、時間は有限でありもっとも貴重な資源です。その時間を自分の都合だけで浪費させるのは、それこそ時間泥棒なのです。
そこで僕は、自分のなかで価値があると思える場にしか行かないことに決めています。飲み会なども、気が向かなければ平気で断ってしまう。もちろんやみくもに断るわけではありません。ただ単に「自分が得をするか」という受け身の観点ではなく、「自分がそこで価値を提供できるのか」という観点で判断しているのです。
外資系の企業と比べた場合、日本企業に欠けているのは「時間は借り物」という概念かもしれません。欧米の企業では、1時間の予定のミーティングが45分で終わったとすると、「15 minutes back to you.」と言って会議を解散します。
つまり、「1時間借りていたけど45分で終わったから、15分返すね」ということです。この「返す」という表現が、時間に対する考え方を端的に示していると思います。
もちろん、なんでも欧米流にしようということではなく、僕が言いたいのは、このような時間の概念を持てるかどうかがとても重要だということ。「時間を借りる」という感覚があれば、目的のない会議に人を集めようなんて思いません。ましてや、自分が気持ち良く話すためだけに会議を招集するなど愚の骨頂ではありませんか。
そこで、これからは意識的に「時間がもっとも大切なもの」と思って人とコミュニケーションしてみてください。
もちろん、大好きな人とより深い関係を築けたり、会いたいと思っていた人と近づくことができたりする場所なら、どこへでも積極的に行ったほうがいい。そして、まだ温めている最中のアイデアでも具体性のないパッションでもいいので、とにかく「自分が価値を提供すること」を意識してアウトプットしてみてください。
失敗なんていくらでもしていいのです。
失敗しても、そこから学べばいいのだから。