「いつも」「みんな」「たくさん」多用していませんか?“デキる人”は話し方が違う/「疑う」からはじめる。⑦
公開日:2021/7/18
澤円著『「疑う」からはじめる。』から厳選して全8回連載でお届けします。今回は第7回です。常識に縛られたら、思考は停止する――既存の価値観、古い常識、全部疑ってみよう。問題設定と解決策は、すべてここからはじまる! 元マイクロソフト伝説のマネジャーが新時代の働き方、生き方、ビジネススキルを提案する1冊!
● アウトプットしなければ、誰もあなたに気づかない
客観的に自分の立ち位置を捉えることができたら、次はそれをはっきりと言語化してみましょう。肩書や役職は会社から与えられるものに過ぎません。本当の自分の力を見極めるには、自分のコンテンツを新しくつくり、アウトプットし続けることが大切なのです。
僕は、アウトプットが人を大きく成長させると考えています。
その手段は、ブログでもツイッターでも街頭演説でも、なんでもいいんです。アウトプットをすれば、次第にそれに賛同してくれる人、つまり味方が増えていきます。味方ができれば、良質なフィードバックを得ることで自分の考えをより深めていくことができます。そして、「外のものさし」を持つことにもなり、より広い視点から自分を客観視でき、さらなる目標を考えることができます。
このアウトプットがどうも日本人は苦手。「あれをしてはダメ、これもしてはダメ」という教育を長く受けてきたせいもあり、子どものころから失敗を怖がる習慣がついてしまっているんですよね。
でも、多少不器用でもいいじゃないですか。どんどん積極的にアウトプットしていきましょう。
他者に対して、自分の熱いパッションをシンプルに伝えることが大切なのですから。
とはいえ、いい情報を上手にアウトプットするにはどうすればいいのでしょうか。
これはもう「鶏が先か卵が先か」のような話で、いい情報を発信するといい情報が受信できるものなのです。デキる人はアウトプットすることでどんどんいい素材を集め、どんどんいいコンテンツを生み出しています。
そのためには、常に優れた情報にアンテナを高く張りながら、必ず発信を同時に行うことが重要。アウトプットすると、それに対するフィードバックが返ってきて、世の中と自分の位置関係を認識することができます。「どんな考え方が世の中にあるのか」を知るうえでも非常に重要なアプローチになることでしょう。
僕自身も、アウトプットすることによって成功体験を得てきました。これはひとつの選択肢であり、アウトプットをすれば誰しもが必ず成功するとは言い切れません。ただ、ひとつはっきりしていることがあります。
アウトプットしなければ、誰もあなたに気づかない。
これは絶対的な事実です。
だからこそ、僕はキャリアに関する相談を受けたときには、
「とにかくアウトプットしてごらん!」
とアドバイスするようにしています。
● アウトプットの第一歩は「数える」こと
「でも、そのアウトプットするものがないんだけど……」
そうやって嘆く人もいます。
そこで、自分だけのコンテンツをアウトプットできる、とっておきのコツをご紹介しましょう。それは、とても簡単なことです。
数えられるものからはじめる。
つまり、自分の持っているものを振り返って、数字に変えるところからはじめてみるのです。でも、これがみんな結構できていない。
「数値化なんて難しいこと、自分には無理かも」と思う人の気持ちはわかります。なぜなら、僕も数字は大の苦手だから。
でも、アウトプットに難しい計算はいっさい不要。だって、数えられさえすればいいのですからね。
たとえば僕の場合なら、「『昨年(2020年)1年間で196回』のオンラインでのプレゼンをしました」。
あるいは、「マイクロソフト社にいたとき、『10年連続』で会社主催イベントの参加者の満足度アンケートでトップを獲得しました」。
そんな話は、単純に数えれば済むわけです。
では、これを聞いた人の気持ちはどのように動くでしょうか。
「そんなにやっているならプレゼンのプロにちがいない」
「10 年もトップをとり続けているなら、きっと講演やセミナーをしてもらっても面白いのだろう」
そんなかたちで相手に自分のことを、具体的に印象づけることができる。
そう、人は数字に注意を引かれるのです。
なぜなら、数字は世界の共通言語だから。
やったことは、ただ「数えた」だけ。でも、それだけで周囲にインパクトを与えることができます。数えることで、市場価値を高めることができるのです。
これはとても大切な考え方なのでCHAPTER05でも詳しくお伝えしますが、あなたのなかには必ずアウトプットできるものが存在します。ただ、それに自覚的でなかったり、スキルの組み合わせ方が良くなかったりしているだけのこと。そのために、数字で表現できる状態になっていないのです。
また、自分が得意だと思っていることは、できると思っているだけに意識的に振り返らないことも往々にしてあるでしょう。
そこで、アウトプットするものに迷ったら、まずは指折り数えられるものからはじめれば、きっかけをつかむことができるのです。
自分の「働き方」を考えるときにも、数値化することは結果を出していくうえでとても大切なアプローチとなります。
たとえば、あなたが人事部で採用を担当しているとして、採用人数だけを成果と捉えていれば、いつまでたっても成長はできません。そうではなく、その良い人材を採用するまでにいったい何人の人と会って、どのくらいの情報ソースを使って、何通くらいメールのやりとりをして、どのくらいの時間を費やして採用に行き着いたのか。そうしたことを、自分自身で分析してみるのです。
また、なにをもって「良い人材」と判断したかという定性的な情報も分析できるはず。「行動力」「機動力」「知力」……というように、まるでロールプレイングゲームみたいに能力を分解できるかもしれませんね。このように、「なにか数値化できることはないかな?」と考えるだけでも、いろいろなものが効率化できてあなたの働き方は以前とはまったく変わってきます。
ここで、すぐにわかる「デキる人」の特徴を紹介しておきましょう。それは、こんなことです。
ざっくりした言葉を使わない。
「いつも」「みんな」「たくさん」といった感覚的な言葉をよく使う人は、厳しい言い方になりますが、「わたしは、仕事ができない人間です」と自己紹介しているようなものだと僕は見ています。使う人にとってどうとでも意味が変わる言葉を使っていては、ビジネスで正確な現状認識ができるわけもなく、問題解決に至ることもありません。
「デキる人」はどんな場面でも具体的です。データを意識した状態で考えるクセがついているので、話す言葉にもあいまいさがないのです。
自分がふだん使いがちな言葉も変わっていくので、ぜひ今日から少しずつ数値化をする習慣をつけてみてください。
そして、「デキる人」になる第一歩を踏み出しましょう。