ラッコ、セイウチ、ホッキョクグマ……どうぶつの数だけ存在する、不思議な恋愛のカタチ
公開日:2021/7/14
メスのシャチ「おるか」とオスのシャチ「シャチ郎」。可愛いイラストで描かれた2匹が、テレビを見ている。テレビではヒトの生態について解説されているようだ。
シャチ郎が思わず驚きの声をあげる。
“オスとメス2匹だけで子育てするのも驚きやけど
大人になるまで20年以上もかかるの~!?
ヒト大変すぎひん!?”
これを機におるかとシャチ郎の、さまざまなどうぶつに関する恋バナが始まる。
『どうぶつの恋愛が不思議すぎて!』(まつおるか/KADOKAWA)は、どうぶつによって異なる恋愛や出産、育児について描かれた漫画だ。シャチをはじめとした海中生物、海獣、淡水生物が大好きな漫画家・まつおるかさんの「どうぶつ解説」コミックシリーズ最新作でもある。
読み進めるにつれて、「大人になるまで20年以上もかかる」ヒトを大変だと言ったシャチ郎の気持ちがわかってくる。本作に描かれた「どうぶつの恋愛」とあまりにも違うからだ。
例えば、大きなキバを持つセイウチ。このキバで氷を割り、ホッキョクグマと戦うのだが、求愛行動はとても美しい。
“オスがメスに精一杯ラブソングを歌うんやで”
見た目の似ているトドは声が野太い。
しかしオスのセイウチは喉からギターのような音を鳴らしてメスの気を惹こうとする。繁殖期に向けて、長い間ラブソングをきれいに歌うための特訓をしているそうだ。
多くのメスは6~7歳で結婚するが、オスは結婚できるまで15年ほどかかる。作中ではこのことを「年の差婚」と呼んでいる。
また、恋愛だけではなく子育ての過程も楽しく描かれる。アニマルパニック映画などでおなじみのナイルワニの見た目はとても怖いが、本書では実は子煩悩などうぶつであることが明かされる。
彼らは時折、自らの卵を大きな口に入れる。
“あんなに守ってた卵 食べてもうたで!!なんで!?”
おるかは焦るが、「いやいや」とシャチ郎は否定する。
“これは食べてるんじゃなくて
殻が上手く割れない子のお手伝いをしてあげてるんやで”
卵から孵った後も、自分の子を大きな口に入れて移動させてあげることもあるそうだ。とても母性愛の強い生き物なのだ。ヒトだけではなく、どうぶつも見た目だけで判断はできない。他にもシャチ、サメ、ラッコ、ホッキョクグマ、カバなど、数々の有名などうぶつたちの知られざる恋バナと、家庭でのエピソードが掲載されている。
本作を読めば、水族館へ行くのが今までの何倍も楽しくなりそうだ。
文=若林理央