いつの間にか始まっていた就活。片っ端から50社ほど応募してみたが…/生きてるだけで、疲労困憊。⑤

文芸・カルチャー

公開日:2021/7/25

rei著の書籍『生きてるだけで、疲労困憊。』から厳選して全9回連載でお届けします。今回は第5回です。大学在学中に発達障害と診断された“陰キャ・オタク・非モテ”の発達障害会社員”。しんどい社会を少しでも楽に生きる…そんな考え方が詰まった珠玉のエッセイです。

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生きてるだけで、疲労困憊。
『生きてるだけで、疲労困憊。』(rei/KADOKAWA)

いつの間にか始まっていてあらゆる意味で終わってしまった就活

「えっ、人生もう始まってたの!?」と、進学や就職等の人生の節目に事あるごとに戸惑いを覚える人間は私だけではないだろう。私の場合は良い悪いは別にして基本的に高校以降は自己判断の連続だったが、大学3年生のとき、周囲が当然のように就活の話をしているのには面喰らった。ちなみに当時は就活開始学年に制限がなく2~3年前から就活する大学生も珍しくなかった。

 それまで私と同じように怠惰と惰眠を貪り、堕落した大学生活を送りつつ「俺達ずっとクソオタクでいようなw」と限界自慢し合った仲間の中で明確な格差が生まれたのが就活だった。最初は少し付き合いが悪いな~と思っていた仲間が、いつの間にか容姿をキッチリ整え当たり前のように内定をもらっていたのだ。

 内定を取ったオタク達に相談すると、当然のように「自己分析」「業界研究」「OB訪問」やらについて聞かれたが、当時の私には何がなんだかわからなかった。自分のこれまでの人生に「何故?」を投げかけ、動機や意思を掴もうとしたが、「多くを望まず、苦痛を避け、できるだけ楽に生きたいだけで意欲や将来の夢はまるでない」という身も蓋もない考えが明らかになった。当然エントリーシートに書けるわけもない。

 私は適当に空白だらけのエントリーシートを書き、労働条件の良さそうな企業に片っ端から50社ほど応募したが……まぁ結果はご覧のあり様である。

 何もわからぬまま生まれてきて、生来の不器用さにより何かにつけて失敗したりして叩かれ、訳がわからないながらも「皆と同じようにできる」ようになろうとし、そのように振舞っていたら人生の節目で「さぁ貴方の選択を試すときです!」と告げられる。決して「ボーッと生きてきた」わけではない。むしろそれなりに必死になったり艱難辛苦に耐えてきた。しかし、振り返ると「なんだこの人生?」としかいいようがないほど、そこには虚無が広がっているのだった。

<第6回に続く>