関ジャニ∞安田章大主演で『リボルバー』が舞台化! 原田マハの小説おすすめ5選!

文芸・カルチャー

更新日:2021/7/16

『リボルバー』(幻冬舎)
『リボルバー』(幻冬舎)

 ゴッホの死の謎を巡るアートミステリー『リボルバー』(幻冬舎)。魂を揺さぶるようなこの作品は「2021年No.1のエンターテインメント小説」との呼び声も高く、関ジャニ∞の安田章大さん主演で同作の舞台が始まるなど、大きな注目を集めている。

 作者の原田マハさんといえば、ニューヨーク近代美術館(MoMA)などの美術館への勤務経験があり、現在はフリーのキュレーターとしても活躍する異色の小説家だ。「アート小説の第一人者」などと称されるが、アートが題材ではない物語でも、私たちの心を揺り動かすような極上のエンターテインメントを提供してくれる。そんな原田マハさんのオススメ小説を5作品ご紹介しよう。

ルソーの情熱が胸を高鳴らせるアートミステリー『楽園のカンヴァス』

『楽園のカンヴァス』(新潮社)
『楽園のカンヴァス』(新潮社)

 はじめて原田マハさんの作品を読むならば、まずは『楽園のカンヴァス』(新潮社)がオススメだ。この作品は、史実とフィクションを巧みに織り交ぜる彼女のアート小説の魅力がギュッと詰まった一冊なのだ。物語の中心になるのは、ルソーの大作絵画「夢」。絵画の真贋をはかる現代の2人の研究者の物語と、ルソーの物語が次第に重なり合っていく。ルソーの絵画にかける情熱。そして、ある女性への一途な思い…。何かに恋焦がれるということの幸せを教えてくれるこの作品は、読めば読むほど、アートへの知的好奇心が湧き上がってくる一冊だ。

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不穏な今の時代だからこそ読みたい、平和への祈り『暗幕のゲルニカ』

『暗幕のゲルニカ』(新潮社)
『暗幕のゲルニカ』(新潮社)

 絵画には芸術家の強い思いが込められている。『暗幕のゲルニカ』(新潮社)は、そんな絵画の力を描く物語だ。反戦のシンボルとして知られるピカソの名画「ゲルニカ」。2003年2月、イラクへの武力行使が国連で可決されたその日、国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーに突然暗幕がかけられてしまった。現代のニューヨークで暮らすMoMAのキュレーター・瑤子と、大戦前夜のパリを生き抜くピカソと愛人のドラ。2つの時代が交錯する物語は、平和への強い願いを感じさせる。戦争へのやり場のない怒りを絵筆に込めたピカソ。絵画が世界を変えていくことだってできるはずだと信じずにはいられなくなる。不穏な空気の感じられる今の時代だからこそ、心に染み渡る一冊。

「絵はわからん」ビジネスマンが美術館創設の夢を抱く『美しき愚かものたちのタブロー』

『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)
『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)

「芸術って何だかよくわからない」と思っている人にこそ、オススメしたいのが『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)だ。上野にある国立西洋美術館の誕生秘話を描いた実話に基づく物語なのだが、その中心となるのは、芸術にまるで興味のないビジネスマンたち。物語の中心人物は戦前の実業家・松方幸次郎。松方は私財をなげうってロンドンとパリで絵画を買い集めるのだが、彼は「絵のことはわからん」と言ってのける。だが、松方には日本に本格的な美術館を作り、世界に通用する若者を育てたいという大きな夢があった。そして、その熱い思いは、あらゆる人たちを巻き込んでいく。美術館創設の裏にこんなドラマが隠されていたとは。美しい理想と不屈の信念。読む者を強く勇気づける作品だ。

日本初の女性総理大臣とその夫の深い絆を描き出す『総理の夫 First Gentleman』

『総理の夫First Gentleman』(実業之日本社)
『総理の夫First Gentleman』(実業之日本社)

 アート小説以外の作品も原田マハさんの作品はとびきり面白い。たとえば、政治がどうも信じられない今の時代にこそ読みたいのが、『総理の夫First Gentleman』(実業之日本社)だ。この作品では、20XX年を舞台に、日本初の女性総理大臣の姿を、その夫の視点で描き出す。読めば、誰もが「こんな総理大臣がはやく誕生してほしい」と思わされるに違いないだろう。しかし、すべてが順風満帆というわけではない。政治には陰謀がつきものであり、思うようにいかないことの連続だ。しかし、どんなことがあってもこの夫婦の絆は強い。互いを思い合う夫婦の姿に胸キュン。2021年秋には田中圭・中谷美紀W主演で映画が公開される予定とのことだから、この作品はこれからますます話題を呼ぶに違いない。こんな首相がいてほしいな。こんな夫婦になりたいな。あらゆる理想について考えさせられながらも、読後さわやかな気持ちになれる一冊。

原田マハさんの私小説? “映画の神様”が壊れかけた家族を救う『キネマの神様』

『キネマの神様』(文藝春秋)
『キネマの神様』(文藝春秋)

 原田マハさんの作品は、家族愛を描いてもピカイチだ。『キネマの神様』(文藝春秋)は、“映画の神様”が壊れかけた家族を救う奇跡の物語。マハさんによれば、この物語は限りなく私小説に近いもので、導入から3分の1はほぼマハさんの体験に基づいているのだという。ギャンブル好きで多額の借金を抱えている父・ゴウ。40手前で職を失った独身女・歩はそんな父に手を焼いていた。父娘2人の唯一の共通の趣味は映画。ひょんなことから、歩は映画雑誌の編集部に採用され、ゴウも映画ブログをスタートさせる。家族の絆が再び結ばれていくさまは圧巻。映画はこんなにも人と人を繋いでくれるものなのか。この本を読むと、“映画の神様”の存在を信じずにはいられない。読み終えた時、思わず涙が込み上げる温かい物語。

 アートをテーマとした作品でもそうでなくても、原田マハさんの描く人間たちは、皆、胸に強い情熱を秘めている。一心不乱に前へと進む彼らの姿に私たちは勇気づけられ、前を向く元気をもらうのだろう。「何だかやる気が出ない」という日にこそ、原田マハさんの作品を読んでみてほしい。その熱量に触れるにつれ、あなたにもきっと明日への活力が湧いてくるに違いない。

文=アサトーミナミ