猫にいい記憶だけ残す飼い方って? 3日で忘れられない飼い主になる方法
公開日:2021/7/10
「猫は3年の恩を3日で忘れる」……猫のつれなさを表すこととして、有名なことわざですね。
猫の飼い主さんの間でも賛否両論ありそうなこのことわざ、果たして本当なのでしょうか?
猫は「心が大きく揺れたこと」は覚えている
猫はたしかに忘れやすい生き物であるようです。ただし、心が大きく動いたことはしっかり覚えているもの。
こわい、いやだ、不安だといったネガティブな感情か、楽しい、おいしい、気持ちいいといったプラスの感情のいずれかに気持ちが大きく揺れたとき、そのときの感情と体験が結びついて記憶されます。
以前、家に来たお客さんを覚えている場合、その人がすごくイヤだったか、好ましかったかのどちらです。おいしいおやつをもらったといった体験があると、猫にプラスの感情とともに覚えてもらいやすくなります。
このことを踏まえると、3年も飼ったのに3日で忘れられるとすれば、猫にとってすごくイヤではなかったけど、心に残らない飼い方だったということですね。と考えると、ちょっと悲しい気がしますね。
トラウマを定着させないため記憶の上書きを
では、うっかり猫にいやがられることをしてしまって、ネガティブな記憶を植えつけてしまった場合はどうすればいいのでしょう?
そういったトラウマ解消のためには、同じ体験をいい記憶で上書きすることが大切です。
たとえば、いつも飼い主さんといっしょに寝ていた猫が、急にベッドや飼い主さんに近づかなくなった場合。寝ている最中に飼い主さんが寝返りして、気づかないうちに猫を下敷きにしてしまったといったことがあるのかもしれません。そうすると猫はベッドを「痛い思いをした場所」として記憶したり、飼い主さんを「痛い思いをさせた相手」と見なしてしまう可能性があります。
その記憶をポジティブなものに戻すためには、早めの対処が肝心です。
ベッドの上でおやつをあげるなどして、ベッドにプラスのイメージを取り戻します。
おやつをあげるときは、飼い主さんの手からあげるのもポイント。お皿に入れて与えると、飼い主さんではなく、猫がそのお皿にいいイメージを抱いてしまう可能性があるそうです。
こういった対応を、トラウマになりそうな体験が起きた週のうちに2~3回行うと、上書きがスムーズにいくのだとか。
かしこくて繊細な猫を幸せにする飼い方を
猫はかしこくて繊細なので、思わぬことにストレスや楽しみを感じ、記憶することがあります。飼い主さんにも興味津々で、よく様子を見ています。
彼らの様子を見逃さず、いい記憶が残る飼い方をしてあげたいものですね。
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監修者
茂木千恵(もぎちえ)
ヤマザキ動物看護大学(動物臨床行動学研究室)准教授。獣医師、博士(獣医学)。日本動物看護学会、日本獣医動物行動研究会所属。大学での教育活動のほか、猫や犬の問題行動の治療カウンセリング、問題行動予防のための調査研究などを行っている。
荒川真希(あらかわまき)
ヤマザキ動物看護大学(動物臨床栄養教育学研究室)助教。認定動物看護師、修士(獣医保健看護学)、ペット栄養管理士、日本動物看護学会常務理事。日本ペット栄養学会所属。CATvocate 取得。猫の泌尿器疾患予防を栄養学的側面から研究し、動物看護学の実践的教育を行っている。