人里離れた村の“怪奇”。何体もの不気味な“カカシ”が村中に置かれていた理由とは…?

文芸・カルチャー

公開日:2021/7/10

怖い村の話
『怖い村の話』(都市ボーイズ:監修/宝島社)

 背筋が凍るけど読みたくなる。ホラー系の都市伝説には、嘘か本当か分からないなりの不思議な魅力がある。なかでも強く惹かれてしまうのは、人里離れた“村”を扱った逸話だ。ここ最近でも、福岡県にあったとされる“犬鳴村”や富士山の麓を舞台にした“樹海村”が映画化されて話題となっていた。

 いわくつきの村にあった真相はいかに……。若手放送作家2人による都市伝説を追いかけるユニット“都市ボーイズ”が監修した『怖い村の話』(宝島社)は、41編もの“村”にまつわる恐怖譚を収録。実話か否か。都市伝説自体の真偽は不明だが、それを元に、著者たちが拾い集めた証言は“実話”である。

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集落のいたるところに置かれていたカカシ

 得体の知れない話は、思いのほか尾を引く。本書に収録されたエピソードの1つ「青凪村」は、村人より人形の数が多い集落に残る“ある噂”に追った話である。

 かつては数百人の住民がいた青凪村は、今や、老人を中心に20人余りとなってしまった集落。ただ、異様なのは村人よりも村中に置かれたカカシの数が多いことだった。20XX年に閉鎖された村の小学校でも、教室の中に数十体のカカシが置かれているほど。道沿いの石畳にも、うっすらと笑みを浮かべるカカシが置かれていた。

 取材で足を運んだ監修者たちは、農作業をしていた老人にカカシについて尋ねた。しかし、どの村人たちも「知らない」「わからない」「いつの間にか置いてあった」と、明らかに不自然な回答しかしなかった。

 なぜ、いたるところにカカシが置かれているのか……。やがて、監修者たちはこの村の奇妙な歴史へたどり着くことになる。

不気味なカカシを作ったのは元・村長の老婆だった

 青凪村には、かつて110歳まで村長を務めていた老婆がいた。住民への聞き込みによると、その老婆には霊感・霊力があり、呪われた者は次々に変死を遂げたのだという。そして、監修者たちはさらなる“真相”へたどり着いた。

 老婆とその5人の子供、孫、ひ孫の一族はかつて、村人たちを“洗脳”していた。田舎暮らしを求めて移住してきた人や、たまたま仕事で引っ越してきた人を洗脳して、村から出られない精神状態に追い込んでいた。しかし、なかには洗脳が解ける者もいて、そうした人たちを殺害。犠牲者によく似たカカシを作り、他の村人への見せしめとして村中に置いたのだという。

 ただ、気になるのは老婆一族の今。監修者たちが聞くと、近隣の町に住む村の事情を知る1人が「本当かどうかはわからないけどね……。今いる高齢の村人たちは、老婆が死ぬと同時に洗脳が解けて、残った老婆の一族をみな殺しにしたらしいんだよ」と答えた。

 場所こそ明かされていないが、何とも不可思議な話。取材の中で、監修者たちは「あんた、いま取材に来てよかったと思うよ。老婆が生きている時に青凪村に行ってたら、あんたも洗脳されていたのかもな」と言われたという。

 すべての真相は闇のまま。それがいいのか悪いのかも、断定できない。しかし、現実にあってもおかしくないと思えるのが都市伝説の面白さだ。この他にも多数のエピソードが収録されているので、暑い夏の夜のお供にしてほしい。

文=カネコシュウヘイ