3ステップのくり返しが重要! ドラッカーが定義する、将来の成功をつかむための戦略計画/新訂 まんがと図解でわかるドラッカー④

ビジネス

公開日:2021/7/30

藤屋伸二:監修、nev:イラストの書籍『新訂 まんがと図解でわかるドラッカー』から厳選して全5回連載でお届けします。今回は第4回です。ベストセラームック『別冊宝島 まんがと図解でわかるドラッカー』の内容を書籍として大幅改訂! 経営の神様・ドラッカーの理論を事例と60のキーワードとともにひもといていきます。将来の成功のために今、何をすべきか? 目標設定後の戦略計画は3つのスパイラルが重要だった!

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新訂 まんがと図解でわかるドラッカー
『新訂 まんがと図解でわかるドラッカー』(藤屋伸二/宝島社)

将来の成功のためにいまからできること
戦略計画という発想で成果を引き寄せる

目標を設定したら、達成するために何をすべきかを決定する必要がある。やるべきことを仕事に落とし込み、行動に移し、成果とするための〝作戦〟が戦略計画だ。

和訳 未来のために、いま決め、いまリスクをとり、いま行動すべきである。必要なのは、長期的な計画ではない。戦略的な意思決定、つまり戦略の立案(戦略計画)だ。

原典 (The future) requires decision—now. It imposes risk—now. It requires action—now… The skill we need is not long-range planning. It is strategic decision-making, or perhaps strategic planning.
— Management: Tasks, Responsibilities, Practices —

戦略計画とは成果が伴う思考と判断である

 いまどのように行動するべきか。その意思決定に必要なものを戦略計画という。ドラッカーは戦略計画を以下のように考察している。

 ①戦略計画とは、手法ではなく、分析や判断を伴う思考である。

 ②戦略計画とは、どのようになりたいかを考え、どんな手段をとっていくかを考えることである。

 ③戦略計画で「将来どうするか」は決められない。未来は予測できないからだ。だが見えない将来に対し「今日何をするべきか」は、分析をもとに決断できる。

 ④戦略計画とは、本質的にリスクを伴う。経済活動とは、手元の資源を不確かな未来の利益に賭けることだからだ。つまり、戦略計画の目的は、現在と将来を同時に経営することである。

Keyword 経営戦略
「誰に」「何を」「どのように」提供するかを決めること。独自化・差別化の方向性、方針を決めるものであり、商品開発・市場開拓・設備投資・人材育成の基準にもなる。経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)の分配(組織化)の基準でもある。

戦略計画の本質と活用

新訂 まんがと図解でわかるドラッカー

戦略計画の実践は3ステップのくり返し

 ドラッカーは戦略計画を次のように定義した。

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 つまり、①リスクを伴う意思決定を行い、②その実行のために体系的な組織活動を行い、③その活動の結果を期待した成果と比較すること。

 この連続したプロセスこそが戦略計画だ。

 37ページ図の①で重要なことは、「どんな仕事をするか」を決めると同時に、「どの仕事をしないか」を決めることだ。後者の決定の際は、いままで手がけてきた様々な活動、商品、工程、仕事について一旦白紙に戻し、「いまから実行するか、しないか」を考えなければならない。そして、答えがノーなら、どうすれば早くストップできるかを考える必要がある。

 ②は、チームや人に具体的な仕事を割り当てること。つまり、将来の成果をねらう活動に適切に資源を割り当てることだ。

 ③は、意思決定によってとったリスクより、成果が上回っているか、目標を達成しているか、なぜその結果になったかを検証すること。仕事を割り当てられた人に責任をもたせることでもある。

ドラッカーのツボ
戦略計画とはツールではない。より大きなリスクをとり、成果を出すための思考や判断である。

働きがいのある仕事環境のつくり方
「やる気」を出させる3つの方法

働く人が成果をあげるには、生産的で自己実現にもつながるような労働を通して、やりがいをもつことが必要である。ここではそのために上司が何をすべきかを見ていこう。

和訳 すべての資源のうち、人がもっとも活用されていない。人間の潜在能力が組織で活かされることがほとんどないことを、多くの経営者はよく知っている。

原典 Most managers know perfectly well that of all the resources, people are the least utilized and that little of the human potential of any organization is tapped and put to work.
— Management: Tasks, Responsibilities, Practices —

仕事にやりがいを与えるには自己管理をうながすこと

 管理者の仕事は、働く人に働きがいを与えること。自分の仕事、職場、成果に責任をもたせないといけない。

 もちろんそれは、「任せたから」と仕事を部下に丸投げすることではない。

 ドラッカーは、人のやる気(モチベーション)を引き出す労働環境の要素に次の3つを挙げている。①仕事自体が生産的でチャレンジ性があること、②自分の成果についてフィードバックがあること、③継続的に成長できる環境であること、だ(41ページ図)。

人をやる気にさせる仕事の与え方

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Keyword モチベーション
仕事における人のやる気。モチベーションを引き出すには、①正しいポジションに配置し、②高い水準の仕事を与え、③自己管理に必要な情報を提供し、④決定に参画できること、が重要。これらの要素がそろったうえ、さらに責任ある仕事を任せることで引き出される。

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 こうした環境下なら、働く人自身に自己管理の意識と自己啓発の意欲が生まれる。適度に相手に任せ、結果に適切な評価を下すことが働く人を成長させ、生産性を向上させるのである。

 もちろん、「失敗したら即減給・失職」では、責任を分担できない。人のやる気を引き出すには、チャレンジして失敗しても減給はない、次の仕事も与えられる、という保障が必要だ。

 身近な例でいえば、いざというとき部下に責任を押しつけるような上司の下では働く気がしない。逆に、守ってくれる人の下なら、安心してチャレンジできる、といった話にも通じる。

最も潜在能力が高い資源は「人」である

 働く人が仕事に責任をもつようになると、上司への要求が高くなる。だから、働く人が成果をあげるためには、上司は彼らに一目置かれる存在でなければならない。こうして全員がボトムアップすれば会社の成長にもなる。会社の最大の資源は人間である。組織の違いが人の働きを変える、とドラッカーは言う。物的資源や資金の〝使い方〟は、どの組織でも本質的に同じだが、人は違う。最も潜在能力が高いのに最も開発されていないのは、人なのである。

 人という資源をいかに活かすかで成果は変わる。マネジメントとは、人の強みを成果に結びつける方法である。

ドラッカーのツボ
会社にとって人は最大の資源。いかに人の強みを活かすかを、上司は考えなければならない。

<第5回に続く>

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