グッバイ、ABCお笑いグランプリ/オズワルド伊藤の『一旦書かせて頂きます』⑱
公開日:2021/7/21
ラストイヤーというものを初めて経験した。
言葉そのままにもう2度と出れない。泣いても笑っても最後。背水の陣。背水人。ハイスイヒューマンズ。どうもハイスイヒューマンズです。
いいえ違います。
我々は第42回ABCお笑いグランプリチャンピオン。
お世話になってます。伊藤と畠中でオズワルドです。
という訳で、ABC優勝することが出来ました。
大会から1週間近く経ちこの記事を書いている今もガッツポーズのまま腕固まった状態です。これがチャンピオンジョークです。
恐らく関東の、しかもお笑いをあまり知らない方々からするとピンとこない可能性もあるので、この大会についてざっくり説明すると、「ABCお笑いグランプリ」とは、芸歴10年目以下で日本一面白い芸人を決める大会である。それ以上でも以下でもない。しかも漫才コントピンネタなんでもありのお笑い異種格闘技戦。
そこで我々オズワルドが優勝したのだ。
大会から1週間近く経ちこの記事を書いている今も頭に金箔の紙吹雪と優勝トロフィー乗ってます。これがチャンピオンユーモアです。
正直今回のABCについて書こうと思うと、チャンピオンジョークとかユーモアとか言ってる場合じゃないくらいどう考えても文字数が足りないのだが、思うところがあり過ぎてなにから書いていいのやらなの。
だから今回は、1番嬉しかった点に絞って書こうと思う。
そもそもこの大会は、元を辿れば関西のみの規模で行われていた。
歴史を見ると、ダウンタウンさんやナインティナインさんなどがチャンピオンとなっており、言うなれば関西の若手の登竜門的な大会だった。近年でいうと霜降り明星さんも優勝している。
それが何年か前からか全国区の大会となり、ABCお笑いグランプリは日本で1番面白い若手を決める大会へとなっていったのである。
僕は賞レースの熱量について、「M-1グランプリ」のみ経験があるのだが、あの大会の演者やスタッフさんの熱量は半端ではない。ABCにもほぼ同じ熱量を感じているので、それはそれは命懸けの大会ということになる。
ところがこの大会。実は過去1度も純粋な関東のチャンピオンを出したことがなかった。
何年か前までは、もしかしたらお客さんの関東の芸人に対しての距離もあったのかもしれない。実際M-1の初期の初期。まだ一般審査員による採点システムがあったころなんて、おぎやはぎさんへの大阪の採点は9点であった。もちろん100点満点中である。
が、そんなのはもう20年近くも前の話であり、我々も頻繁に関西に行かせて頂くことがあるが、そんな時代はとっくに終わっていることを実感している。
ではなぜABCで関東の芸人が優勝することがなかったのか。
これに関していくつか理由があるのかもしれないが、僕がひしひしと感じたのは、関西の芸人のABCに対する熱量。
めっちゃわかりやすく言うとワールドカップの時のブラジル。負けるわけにいかないのである。
この点において、関東の芸人はどうしても勝てない。故に優勝出来ない。
当然他にも要素はあるのだろうが、僕は最も大きな理由はそこにあるように思えた。
正にそれを目の当たりにしたのは去年のABCでのコウテイが優勝するところを見た時。我々は準優勝だったのだが冗談抜きでこいつらの方が優勝が似合うと思ってしまったのを覚えている。なんかめっちゃニュアンスだけど対するこっちが一瞬で筋肉痛になりそうな気合いだった。
だから今年の我々の気合いは半端ではなかった。いや別に去年もだったけども。ただ去年のコウテイを見たあとの僕らはABCという大会の重さをしっかりと受け止めていた。去年と同じ熱量でも気合いの質が違っていた。
要するに気合いで優勝を引き寄せた。運を引き寄せた。だって全員とんでもなく面白かったもん。差なんてそんなもんだろう。カベポスターとかなにあれ。出順次第で全然順位変わっててもおかしくないよ。あんなもんバケモンだよ。
なんやかんやと連ねたが、大阪の伝統ある大会で東京の芸人が漫才で優勝出来たことが1番嬉しかった。東京の漫才師を認めてくれてありがとうございました。
ABCお笑いグランプリは大阪贔屓の大会なんかではない。純粋に10年目以下の1番面白い芸人を決める大会である。
応援してくれた皆様、スタッフの皆様、審査員の皆様、そして変態揃いのファイナリストの皆様本当にありがとうございました。特にさや香、鼻くそ食べてくれて本当にありがとうございました。
最後に、ABCチャンピオンはその年のM-1グランプリの決勝には残れないというジンクスがあるらしい。
やかましわである。ジンクスなんて粉々にしてやる。
次はM-1グランプリ。必ず獲ります。優勝するんだ絶対に。
一旦辞めさせて頂きます。
オズワルド 伊藤俊介(いとうしゅんすけ)
1989年生まれ。千葉県出身。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020、2021ファイナリスト。