恋した女性のためならいくらでもつぎ込む! “アメリカの新聞王”の歪んだ愛の表現方法/世界の大富豪とんでも無駄遣い伝説
更新日:2021/9/7
特別コラム
偉人研究家真山知幸が語るウィリアム・ランドルフ・ハースト
人生で何が功を奏するかはわからないものだ。ウィリアム・ランドルフ・ハーストの場合は、父のジョージ・ハーストが新聞社の経営に苦戦したことで、思わぬチャンスが巡ってきた。鉱山の経営で財を成した父はサンフランシスコの日刊紙を買収したものの、自身の教養のなさから、持て余すことに。新聞社の経営は、大学を中退していた息子のハーストに任された。
ハーストも勉強熱心ではなかったが、新聞社の経営のことを難しくは考えなかったようだ。幅広い層に訴えかけるため、殺人事件や大事件の報道に力を入れ、中身は誇張してセンセーショナルに煽ったところ、大成功を収めた。
大富豪となったあとも、考え方はシンプルで、自分の欲望に忠実だったハースト。それに振り回されている人がいることに気づけず、孤独に陥ったのかもしれない。
映画監督のオーソン・ウェルズは、ハーストをモデルに映画を作った処女作「市民ケーン」で、ハーストを孤独で哀れな権力者として描いた。映画の結末は、愛人にも見捨てられるという展開で、これにハーストは激怒。さまざまな上映妨害を行い、興行的に惨敗させることに成功している。だが、そんな経緯も含めて作品は伝説化する。時を経て評価を高めて、「市民ケーン」はアメリカ映画のランキングでベスト1に選ばれることも。雲の上でハーストは歯ぎしりしていることだろう。