料理の完成写真がない!? “映えない”投稿がレシピ本を発売するほど人気なワケとは?

暮らし

公開日:2021/8/3

ほぼ材料2つだけ! ウマすぎる時短おかず
『ほぼ材料2つだけ! ウマすぎる時短おかず』(yuko/KADOKAWA)

 Instagramのお料理アカウントがアップしている写真といえば、おしゃれな器にきれいに盛り付けられた色とりどりのいわゆる“映える”料理を想像する人は多いはず。

 しかし、今年6月に発売されたレシピ本『ほぼ材料2つだけ! ウマすぎる時短おかず』(KADOKAWA)の著者であるyukoさん(@_yu_ko.a.r)のアカウントは少し様子が違います。

子育て中のお母さんや仕事を持つ働き盛りの男女など、忙しい人たちに大人気

 ホーム画面を開くと、お料理の写真が並んではいるのですが、ほぼ調理途中のまな板の上の様子や鍋の中の写真……お世辞にも“映える”とは言い難いのですが、yukoさんのレシピは、子育て中のお母さんや仕事を持つ働き盛りの男女など、忙しい人たちに大人気です。

 yukoさんのレシピはなぜ愛されているのか? その理由をご本人のインタビューから探ります。

(文=須川奈津江 写真=ジャス、yuko)

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映えを狙っていなくてもおいしそう&作ってみたくなるyukoさんのレシピたち

――yukoさんのInstagramにアップされている写真は、料理を作っている途中経過はあるのですが、器に盛り付けられた完成写真がありません。何か理由があるのでしょうか?

yuko 本当はちゃんと器に盛り付けた姿を写真に撮って上げたいんですけどね(笑)。我が家は夫、私、高校生の長男、小学生の長女、そしてポメラニアンという4人+1匹の家族なのですが、みんな夕飯を食べる時間がバラバラなんです。

 それぞれが食べる時にフライパンや鍋から取り分けて盛り付けて、を繰り返しているので、全員分をきれいに器に盛り付けた写真が撮れないんです。かろうじて撮れるのが私が味見&晩酌のアテとして食べるために小皿にちょろっとのせたものだけなんですよ。でもそれも、まな板の上で撮った写真です(笑)。

私が味見&晩酌のアテとして食べるために小皿にちょろっとのせたものだけ

 だから、「レシピを本にしませんか?」と出版社からお話をいただいたときは本当に信じられなくて、「詐欺ですよね! やめてください!」って言ったくらい。いや、本当に失礼にもほどがあるって話ですよね(笑)。ごめんなさい!!

――そういう理由だったんですね。yukoさんのレシピは。映える写真というわけではないけれど、「作ってみよう」という気持ちになります。そもそも、Instagramにお料理の投稿をしはじめたきっかけは何だったのでしょうか?

yuko もともと、インテリア関係のアカウントをやっていたんです。でも、私はお酒を飲みながら料理を作るのが好きだったので、その様子を投稿し始めたらそっちが人気になってしまい、今は完全にお料理アカウントになりました。現在インテリアは別のアカウント(@_yu_ko.a.r.02)に投稿しています。

yukoさんレシピ定番「スイチリ味」の料理が生まれた理由

――yukoさんのレシピは、「スイートチリソース+マヨネーズ」や「めんつゆ+ゆずこしょう」など、ちょっと変わった調味料を組み合わせたり、パンチの効いた調味料を使ったりすることが多いですよね。レシピを作ってみると、「この調味料の組み合わせで、こんな味になるんだ!」とそのおいしさに驚くことが何回もありました。

yuko 私が料理に凝り始めたのは、当時小学生だった長男がきっかけでした。起立性調節障害で学校に行けなくなってしまった時期に、「私にできることってなんやろう? そや! ごはんを食べるのが好きな息子に、おいしいごはんを作ることくらいしかないやん!」と考えてリクエストを聞いたんです。

 そうしたら、「あの、春巻きについてるソースみたいな味のんが食べたい」と言われて。それまでスイートチリソースなんて使ったことがなかったのに作ってみたのが、「鶏アボカドのエビチリマヨ」というメニューです。これは、本にも「鶏アボカドのチリマヨ炒め」という名前でレシピを載せています。

 あとは、私自身が、グルテン不耐性であることが判明したことも大きな契機でした。

 グルテン不耐性は、小麦粉など、グルテンが含まれているものを食べると体調を崩してしまう体質です。そうすると、一番好きな料理であるグラタンも、関西人(※yukoさんは大阪在住)に欠かせないたこ焼きやお好み焼きといった粉モンも食べられない。加えて、外食や市販のレトルト品も食べるものが制限されてしまうんですよ。

 それらを食べたいと思ったら、自分でグルテンフリーの材料を使って作るしかない。そうして生まれたのが、某フライドチキン店の味を目指した「ざくざくフライドチキン」や某雑貨店のレトルトカレーになんとか近づけようと研究を重ねた「あのバターチキンカレー」なんです。(※どちらもレシピはyukoさんの著書やInstagramで見ることができます)

yukoさんレシピ定番「スイチリ味」の料理が生まれた理由

「冷蔵庫にあるもの」で作る人は簡単に、食べる人はおいしい料理が完成!

――現在、たくさんの人たちがyukoさんのアカウントを見たりレシピ本を買ったりして、レシピを作ってくださっていますが、人気の秘訣はなんだと思いますか?

yuko フライドチキンやカレーなど、たまにこだわって研究することもあるけど、基本的に私の料理はどこにでも売っている食材でできる簡単なものばかりです。料理は毎日のことだから、作る人はある程度はラクができて、食べる人にとってはおいしくないと続かないと思うんです。

 だから、私のレシピは顆粒だしも使うし、めんつゆやポン酢、焼肉のたれなどもどんどん使います。各メーカー様の企業努力で、“おいしい”ことが約束されている調味料たちです(笑)。そして、使う食材はどの家庭でも冷蔵庫に入っているようなものばかり。それらを使って、簡単においしいものができるからたくさん見ていただいているんじゃないかと思います。

 そして、私の料理は、あんまり包丁を使わないんですよ。特に肉を切るときはキッチンばさみを使うことが多いので、まな板をいちいち洗う必要がなく、これが時短になるんです! 実際、夕飯はメインとなるおかずと汁物、サラダ、ご飯は最低限作るようにしているのですが、全部で30分ほどで作ってます。だから、忙しいお母さんたちにも受け入れられているのかもしれませんね。

 ありがたいことに、レシピ本『ほぼ材料2つだけ! ウマすぎる時短おかず』を買っていただいた方からもたくさんメッセージをいただいています。「今日は冷蔵庫にあるものでこれ作れるじゃん!」とか「こういう食べ方もあるんですね」とか「家族に大好評です」とか、温かい言葉ばかりで、嬉しくて嬉しくて……私は皆さんのことを最近「神」と呼んでいます(笑)。

――飾らないyukoさんの人柄とちゃんとおいしい料理、人気の理由がわかった気がします。ちなみに、すでに夏休みが始まって家族の昼食作りに悩んでいるという方に、おすすめのごはんはありますか?

yuko ああ、夏休み、本当に悩みますよね。我が家も長女は偏食なので今でもものすごく頭を抱えていて、簡単にできる焼きうどんやおにぎり、トーストにチーズとちりめんじゃこをのせて焼いたやつとかになりがちです。

 あとは、前の日の残りのおかずを丼にすることも多いです。唐揚げならめんつゆと卵でとじて唐揚げ丼、ハンバーグなら目玉焼きのせてロコモコ風に、カレーなら和風だしを足してからとろみをつけてカレー丼に。お昼は何品も作れないからおすすめですよ!