一家に一冊ほしい家庭の医学書。「突然死」や「寝たきり」を予防する生活習慣とは?
公開日:2021/8/4
5年前、今は亡き祖母が脳出血で倒れ、一時寝たきりになった。なんでこんな風になってしまったんやろう……。そう泣く祖母を、筆者はどう支えればいいのか悩むと同時に、その時初めて自分や他の家族も同じ未来に行きつく可能性があることに気づき、怖くなった。
どうしたら大切な人と共に、1日でも長く健康でいられるのか。その日からずっと、そんな思いを抱き続けてきたからこそ、『身近な人の突然死・寝たきりを防ぐ心臓と脳の正しいケア』(鈩裕和/自由国民社)は胸に刺さった。
著者の鈩裕和(たたらひろかず)氏は医療法人社団つくしんぼ会の理事長であり、医師。本書は「突然死」や「寝たきり」が引き起こされる原因が詳しく知れ、予防に繋がる心臓や脳、血管のケア法が学べる1冊だ。
突然死や寝たきりを招く「動脈硬化」とは?
鈩氏いわく、突然死や寝たきりを招く心臓や脳の病気は血管が詰まったり、破れたりして起こるそうだが、その多くは「動脈硬化」が原因なのだとか。
動脈は体の隅々まで酸素や栄養を運ぶ重要な役割を果たしている血管だが、老化などによって弾力性を失うと、様々な物質が血管壁内に沈殿し、血管が細くなる。すると、血液の流れが滞り、「動脈硬化」という状態に。栄養や酸素が心臓や脳に運ばれず、狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などが引き起こされるおそれがあるという。
動脈硬化などの血管劣化の主な原因は、「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」「肥満」などの生活習慣病。この4つは心臓や脳の病気を引き起こす危険因子として知られ、「死の四重奏」と呼ばれてもいるそう(喫煙を加え、「死の五重奏」といわれることも)。
「死の四重奏」に含まれる生活習慣病はひとつひとつが危険なものだが、合併しやすく、もしも合併した場合には動脈硬化を促進するという特徴が。そのため著者は生活習慣を見直すことで心臓や脳、血管を守り、突然死や寝たきりを予防しようと訴えかけている。
例えば、心臓をケアするには、まず規則正しい生活を意識。生活リズムを一定に保つと自律神経のバランスが整い、心臓に負担をかける血圧の変動などを抑えることができるのだとか。
また、「ストレッチング」や「有酸素運動」「レジスタンストレーニング(筋トレ)」といった3種類の運動を組み合わせて行うのもおすすめ。
ストレッチは筋肉を伸ばし、関節の動きをスムーズにしてくれるため、準備体操や整理運動に最適。ウォーキングやサイクリングのような有酸素運動は大きな筋肉をリズミカルに動かすことで全身の血行を改善する効果が期待でき、レジスタンストレーニングは筋力をつけて運動を続けやすい体を作るほか、基礎代謝も高まるので虚血性心疾患の危険因子を減らすことにも繋がるそう。
各運動のやり方はイラスト付きで紹介されているので、ぜひ参考にし、日常に取り入れてみてほしい。
血栓を作らせない生活で健康を守る
突然死や寝たきりを予防するには、血栓を作らせない生活を意識することも大切。なぜなら、動脈硬化などで血管が傷んだ状態になると、通常溶けてなくなる血栓が常に作られ、溶けなかった血栓が血管を詰まらせてしまうからだとか。何かの拍子にはがれた血栓が心臓や肺、脳に運ばれると心筋梗塞や脳卒中などを引き起こしてしまうこともあるという。
そこで、本書では血栓を予防する生活ポイントを多数紹介。中でもこの時期、意識したいのがこまめな水分補給。鈩氏いわく、血液がねばねばしていると、脳梗塞や心筋梗塞などが引き起こされるリスクが高まるのだそう。夏、冬ともに脱水症状になりやすく血液の粘度が高くなるので、水分を十分に補う必要があるのだ。
冬は意外かもしれないが、空気が乾燥しているので体温の発散を防ぐために血管が収縮し、脱水症状になりやすいという。水分を摂取する際はジュースやアルコールは避け、水や麦茶、ほうじ茶を選ぶようにしよう。
本書で紹介されているケア法はあくまでも数ある予防策のひとつであり、突然死や寝たきりを必ず防げるというわけではない。だが、普段の生活を見直すきっかけが得られ、これまでとは違った視点からも健康を気に掛けることができるようになるはずだ。
なお、本書内には「突然死」に繋がるおそれがある症状や身近な人が心臓病・脳卒中で倒れた場合の応急処置なども掲載されているので、家庭の医学書として活用するのもあり。
ぜひ、家族と一緒に読み込み、自分と大切な人の未来を守ってほしい。
文=古川諭香