仕事を速くする会議の方法は? トヨタに学ぶ最強のコミュニケーション術

ビジネス

更新日:2021/9/15

トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術
『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』(山本大平/すばる舎)

 トヨタ自動車の仕事術や哲学を伝えるビジネス書は数多ある。その中でも、この『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』(山本大平/すばる舎)は、若手社員のフレッシュな感覚で、トヨタに浸透するコミュニケーションのノウハウを学べるという点で画期的だ。

 新卒でトヨタ自動車にエンジニアとして入社した山本大平氏。若手時代にトヨタで仕事をしたのちTBSに転職、その後アクセンチュアで経験を積み、現在は独立してコンサルティングを手がけている。トヨタ退社後、外資系を含むさまざまな会社と仕事をした経験から、日本企業の多くは、コミュニケーションに無駄があり、スピードが遅いと指摘。意思決定やコミュニケーションの速度に優れた海外の企業と戦うためには、無駄を嫌うトヨタの「ギガ速」なコミュニケーションに学ぶべきと述べている。

 本書は、スリム化を徹底するトヨタの「時短会議術」や、上司や取引先とのコミュニケーションを効率化する方法を中心に解説。書名にもある「会議は30分」や、「会議には担当者のみで上司は同席しない」「会議中にメモはとらない」といった会議に関する習慣のほか、「上司への報告と承認取得はペライチの資料を使って1分で済ませる」など、時間をかけずに質の高いコミュニケーションを行うコツと、それが成果につながる根拠が、実体験に基づいて綴られている。

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 社会貢献や安全のためコミュニケーションの相手に不要な忖度をしない姿勢や、社員を成長させる骨太な指導法、仕事をスムーズに進めるための人間関係の作り方まで、特に社会人になったばかりの若手に響くテーマも幅広く語られている。そこで紹介されるトヨタの教えは、著者が生産現場に近い部署で働いた経験に基づいているからか、ビジネスノウハウが豊富なトヨタのイメージからすると、意外なほど泥臭い。トヨタは「なぜを5回繰り返す会社」として有名だが、「なぜ」は実は5回以上ではないという実態や、「なぜ?」「その定義は何か?」と部下に問い続け、自分なりの答えを考えさせる思考訓練法は、地道だが人を育てる習慣だ。トヨタが、大企業でありながら、地を這うような反復によって結果を出してきたことを示す逸話が詰まっている。

 本書の特徴は、社会人になりたてのピュアな感覚で受け取ったトヨタの教えをかみ砕き、若い読者になじみやすいストレートな言葉で伝えていることだ。「ギガ速」「ペライチ」「超」などの口語も、ニュアンスがより伝わる言葉ならば、ためらわず使っている。そんな語り口で紹介されるエピソードからは、生産現場にいる「オヤジ」と呼ばれる強面のエンジニアたちの「命を預かる仕事だから妥協できない」という熱い思いや、厳しいダメ出しを受け続ける若手の姿がリアルに思い浮かぶ。大企業らしからぬゴリゴリのコミュニケーションが共通言語として浸透するトヨタの生産現場は、良いものづくりがもっとも尊ばれる日本製造業のユートピアなのかもしれない。

 全体的にライトな読み心地で、各パートを簡単に振り返るページもあり、読書慣れしていない人にも親切。「伝える」ことがうまくいかずに困っている20代や、肩肘張らずにトヨタの仕事術に入門したい人に、ぴったりの1冊だ。

文=川辺美希