外来や産業医面談で増えた、病気ではない不安とは?/無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

暮らし

公開日:2021/8/8

最近ごはんがおいしくない、ふとした瞬間に不安になる…。コロナによる自粛生活で、沈んだ気持ちになっていませんか? それは“うつうつした気持ち”が原因かもしれません。

うつ病まではいかないが、以前より“うつうつとしがちな方”に向けて、心療内科医・産業医でもある石川陽平先生が、患者や自身にも応用している「毎日を少し楽にする実践テクニック」をご紹介します。

※本作品は石川陽平著の『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』から一部抜粋・編集しました

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無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる
『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』(石川陽平/KADOKAWA)

プロローグ

外来や産業医面談で増えた、こんな相談

 私は、産業医面談や心療内科の外来で多くの方とお話をさせてもらうのですが、次のような相談を受ける機会が増えました。

【働く場面で】

・会社の業績が落ち込み、ノルマやプレッシャーが強くなった。これまで気を許していた同僚と話すときですら、少し緊張してしまう。

・リモートワークで、パソコンや携帯でメールや業務ツールをつい頻繁に見てしまう。夜寝る前などにも気になって、返信をしなければと思う。

・メール連絡などがきているのではないかと常に不安になり、着信通知の音がするとドキッとする。たまに、空耳で通知音が聞こえることも……。

・家で仕事をするようになり、仕事とプライベートの境界がわからなくなった。気づいたら、家から一歩も出ていなかった、という日もある。

・メールやコミュニケーションツールだと、相手が怒って話しかけているのか、そうでないのかがわからず、つい相手の気持ちを探ろうとしすぎて、疲れてしまう。

・これまで仕事は好きなほうだったが、最近頑張ろうと思っても気力が空回りしてしまっているように感じる。

・業務や事業がうまく回っていない要因は、自分にあるのではないかと感じる。

・正直なところ転職をしたいと考えていたが、コロナ禍でよい求人もあまりない。今の環境には長く居続けられないと思うが、かといって転職も思いきれない……。

 

【プライベートの場面で】

・いつも何かに追われている感じがして、休日なども緊張感が抜けない。

・夜寝つこうとしても、仕事の緊張感が抜けなかったり、明日の仕事のことを考えてうまく寝られないときがある。

・以前であれば、土日は好きなことができていたのに、最近はつい自宅で何もせずに一日が終わってしまう。

・街で「閉店」の貼り紙を見つけると、無性に寂しく、悲しい。

 産業医面談での会話のごく一部ですが、読者の皆さんにも思い当たるフシがどこかにあるのではないでしょうか?

 

病気ではないけど、うつうつしている

 これらは、コロナウイルスによる感染症が広まってからのことで、皆さん「うつ病」などの病的な状態かというと、そうではないことがほとんどです。しかし、以前までは普通に過ごせていて、心理面での不調を気にされたことのなかった方が、「あれ、こんなにうつうつした感じ、これまで感じたことなかったんだけど……。何かおかしい」と、相談にこられるケースが増えています。

 データで見てみましょう。

無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

 内閣府が2020年12月にコロナ流行前に比べて不安が増えたかという質問調査をしました。その結果、不安が増していない、不安はないと答えた方は24%、わからないと答えた方は7.7%でした。逆に言うと、約68%の方が、何らかの不安が増していると回答したのです。同じ数だけうつ病などの精神疾患の方が増えたということはありませんので、病気ではない、しかし「うつうつしている」「不安が増した」という状態の方が増えていることが見て取れます。

 この本では、まずはじめにコロナ禍によって変化した私達の生活や、うつうつを感じやすくなった背景を探ります。その次に、そのうつうつを解きほぐしていくヒントをご紹介していければと思います。

<第3回に続く>