日本人の真面目さがアダに!? 人と会えないことの弊害とは?/無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

暮らし

公開日:2021/8/10

最近ごはんがおいしくない、ふとした瞬間に不安になる…。コロナによる自粛生活で、沈んだ気持ちになっていませんか? それは“うつうつした気持ち”が原因かもしれません。

うつ病まではいかないが、以前より“うつうつとしがちな方”に向けて、心療内科医・産業医でもある石川陽平先生が、患者や自身にも応用している「毎日を少し楽にする実践テクニック」をご紹介します。

※本作品は石川陽平著の『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』から一部抜粋・編集しました

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無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる
『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』(石川陽平/KADOKAWA)

日々の生活で人と会えなくなった

変化①  お店の営業、イベントの中止・縮小

 コロナの流行をきっかけとして、身の回りで起きた変化として最もわかりやすいものはお店の営業時間の短縮や、イベントの中止・縮小ではないでしょうか。

・これまで気分転換に行っていたカフェや居酒屋に行けなくなった
・ジムで走って汗を流せばスッキリしていたが、営業時間が変わって行けなくなった
・週末に映画館や美術館、劇場などに行くのが楽しみだったのに……

 など、これまで好きだった時間や場所が持てずにリフレッシュできないという声はとても多く聞かれます。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置、各種の要請などで、多くのお店が営業時間を縮めたり、場合によっては休業・閉店してしまっています。さらには、

・ウインドウショッピングができなくなった
・好きなバンドのライブもことごとく中止に……

 などの声も聞かれます。営業時間だけでなく、これまで楽しみにしていた企画や催しも、延期・中止や規模縮小が相次いでいます。

「コロナだから仕方ない」と無意識に目をつぶっている部分はあるかもしれません。しかし、これは日常の大きな変化に違いありません。

「これまで好きだったことを、しない」という行動を私達は余儀なくされています。

 実際、海外などでもこれはかなり我慢ならないようで、ブラジルなどでは我慢しかねた若者が、政府の禁止している大人数のパーティーを開催しては警察などに指導される、ということが繰り返されているようです。

 日本人はとても真面目なので、中止や短縮も致し方なし、という我慢がなんとか通っている感じがありますが、我慢していないというわけでは全くありません。

 

変化②  「不要不急」の圧力

 これまで好きだった時間や場所を制限しなければならないときの、お決まりの文言となったのが「不要不急」という言葉です。『広辞苑』によれば「どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もないこと」と出てきます。しかし、そもそも、私達は何かをするときに「必要か、急ぐか」を毎回考えて行動していたでしょうか?

 仕事の業務は、「必要か、急ぐか」を考え、優先順位をつけて進める部分が多いかもしれませんが、プライベートの場合には、「好きか、そうでないか」で決めていました。

 例えば、コンビニでチョコレートを買いたいと思ったときに頭の中で起こっていることは、「このチョコを食べたいと思うかどうか」であって、「このチョコが私の体に必要かどうか」を考えているケースはごくわずかです。

 同様に、様々な活動が、「不要不急ではないか?」と検討を余儀なくされるようになりました。

・食品や日用品以外の買い物に行くのは不要不急?
・両親に孫を会わせるのは不要不急?
・外食するのは不要不急?

 これまでであれば自然とやっていたことに、いちいち「不要不急」に当たらないかという判断をしなければならず、好きなものを手放しに楽しめなくなっている環境を、私達は強要され続けているのです。

 これが、1〜2週間だけならば、致し方なし、ということもあるかもしれません。

 しかし、コロナの場合には、この原稿を書いている今時点(2021年5月)でも既に1年以上が経過しています。

無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

変化③  3密を避ける

 コロナの流行を抑えるために、キーワードとして生み出された3密。日本発祥ですが、わかりやすく効果的ということでWHO(世界保健機関)などでも使われるようになりました。3密は、密集・密接・密閉を指す言葉ですが、このうち特に集まること、接することは、コミュニケーションにとってとても大切なことでもあります。

 例えば、食事会や、ミーティング、イベントなど、集まることは私達の生活の上で欠かせない要素です。飲食店やオフィスはもちろん、大型商業施設、映画館、劇場、遊園地、美術館、スポーツクラブ、カラオケ、ボーリングなどなど、自宅以外のほとんどの場所は、集まることを前提として作られていますが、集まることはコロナウイルスを広げてしまいかねず、厳しく制限されるようになってしまいました。コロナを抑え込むために取られた措置で、制限を受けていないレジャー施設はないと言っても過言ではありません。

 しかし、これらの施設や場所は、私達にとって大切な場所であることは変わりません。これまでリフレッシュするために通っていたスポーツクラブに行けなくなったり、余暇を楽しむ大事な場所であった映画館やライブハウスが閉まってしまったり、ライフラインとまでは言わずとも、私達の生活にとって大事な要素が制限されてしまっていることは否めません。

 また、接することも人にとっては欠かせないことのひとつです。

 人と接して会話することの重要性は、言わずもがなです。けれど、コロナの流行を抑えるために、親しい友人や同僚と雑談したり、離れて暮らす家族のもとへ帰省したりすることがままならなくなりました。全て電話やチャットだけでコミュニケーションが取れるかというと、これも難しいでしょう。どうしても要件だけ話して、その他の会話が進まないことが起きやすくなります。

 人と接する行為が、やむを得ないながらも厳しく制限されているため、本来、豊かな生活に必要な、要件以外のちょっとした会話や、なにげない雑談をする機会を、私達は持ちにくくなっているのです。

<第5回に続く>