便利なはずのリモートワークがあなたを追いつめている…!? /無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

暮らし

公開日:2021/8/11

最近ごはんがおいしくない、ふとした瞬間に不安になる…。コロナによる自粛生活で、沈んだ気持ちになっていませんか? それは“うつうつした気持ち”が原因かもしれません。

うつ病まではいかないが、以前より“うつうつとしがちな方”に向けて、心療内科医・産業医でもある石川陽平先生が、患者や自身にも応用している「毎日を少し楽にする実践テクニック」をご紹介します。

※本作品は石川陽平著の『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』から一部抜粋・編集しました

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無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる
『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』(石川陽平/KADOKAWA)

仕事が家に入ってきた

変化  仕事の空間・時間・情報が急速に変わっている

 次に、仕事での変化を見ていきましょう。

 私達の働く空間や時間、扱う情報は数年単位で急速に変わってきています。遠方にいる人と情報伝達する手段が郵便しかなかったところ、1890年に電話が日本でも開始になりました。それから、パソコンによるメールが一般に普及しだしたのは電話開通から約100年後の1980年代後半です。それらを含めて、コミュニケーションツールの歴史を簡単に振り返ってみると、以下のようになります。

・1890年 電話が日本でも開始
・1980年代 パソコンによるメールが普及し始める
・1992年 NTTドコモが誕生し携帯電話が普及し始める
・1997年 携帯電話でもメールができるように
・2011年 LINEがメッセージサービスを開始
・2017年 Slackが日本語版を開始

 一般電話の普及から、パソコンのメールが普及するまで約100年かかっていたのに、その後スマートフォンの普及・LINEの普及・Slackなどの仕事上のコミュニケーションツールの普及は、約5〜10年おきに一気に広がっています。                                      その広がりに伴い、コミュニケーションツールがつなぐ仕事上の空間・時間・届ける情報も変わりました。

 

●つなぐ空間の広がり

 郵便・電話・パソコンのメールの時代までは、相手とやり取りをするのは基本的に「自分も会社・相手も会社にいる」という状態でした。

 しかし、スマホでもメールができるようになると、通勤中などでもメールを確認する時代になり「相手は会社にいるけど、自分は通勤中」ということも当たり前になりました。さらに、リモートワークになり、Slack、LINE、MicrosoftTeamsなどのコミュニケーションツールが使われるようになると、仕事の情報が自分の家にまでなだれ込んできます。

 仕事の空間が、会社の場所だけでなく、通勤中の電車の中、さらには自宅にまで広がったのです。

 

●返信までの時間

 仕事で求められるスピードも速くなってきています。郵便であれば、数日の猶予があり、「数日以内に返せばよいか」というスピード感でよいと感じている方が多いと思います。しかし、その後、

・パソコンのメールは1〜2日以内に返さないといけない
・スマホでメールを見たら数時間で返さないといけない
・SlackやLINEはすぐに返さないと「既読スルー」と言われてしまう

 という暗黙のルールができあがっています。

 仕事の返信に求められるスピードが、この20〜30年で一気に速くなってきています。

 産業医面談をしていて、

「常にメールなどの返信に駆り立てられている感じがする」
「仕事の依頼がLINEやSlackでくるのだけど、その通知音にドキッとする」
「メッセージはきていないのに空耳で着信通知音が聞こえる……」

 というお話は、かなり頻繁にうかがいます。

 最近のメッセージサービスは「仕事1000本ノック状態」に近く、そのノックがいつ飛んでくるのかわからない、という恐怖感にもさらされやすくなっています。

 

変化  リモートワーク 〜自宅が職場に〜

 コロナ流行により、大きく変わったことのひとつが、リモートワークの急拡大です。これまでも、国はリモートワークを広めようという働きかけをしていましたが、実際には全体の10%程度しかリモートワークは実施されていませんでした。しかし、コロナによりリモートワークが強く推奨されると、1年間で実施率は全国で30%弱、都内だと50%弱にまで跳ね上がりました。

・通勤の時間がなくなったので、寝る時間が増えた
・職場の嫌な人間関係から距離がおけたので、気持ちが楽になった
・休憩や息抜きがしやすくなった

 という声を聞く一方、

・社内でのコミュニケーションが大変
・自宅で遅くまで仕事をしてしまう
・夜寝る前についパソコンを開き、新たな業務依頼が入っているのを見て、翌日が憂鬱になる
・今は自宅が仕事場。どこでリラックスしていいかわからなくなった

 などの声も聞かれます。

 今まで、職場は仕事をする場所、自宅はリラックスする場所、という境界ができていたところ、その境界がリモートワークだとなくなってしまいます。冒頭の、「水槽の水」の話で例えるならば、一気に状況(水)が変わってしまったので、やる気スイッチをうまく入れたり切ったりする器用さを、急に求められるようになったのです。

無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

 

雑談がなくなった

 仕事の場面では、多くの会議がビデオ通話で行われるようになりました。リアルで行われた会議や職場であれば、会議が終わったあと、ちょこっと雑談が挟めたり、「○○さん、このまえのあれだけちょっと聞きたい」ということができていましたが、ビデオ通話での会議は「終わったら退室して終了」ということがほとんどです。

 特に、新しい部署に入ったり、新たな会社に入ったばかりの場合、これまでであれば、ちょっと聞けそうな人を探して「すみません、これどうやるんですか?」と聞けていたところ、リモートワークではなかなか気軽に聞けない、というデメリットがあります。

 仕事の内容に関わらないような、会社での「雑談」も減りました。
 雑談は仕事に不要、と言う方もいるかもしれませんが、リモートワークでも雑談を多くしている人ほどストレスが溜まりにくい、というデータがあります。

雑談をリモートワークでもできている人は、そうでない人に比べて、ストレスが解消しやすいというのです。

 雑談は、「ムダばなし」と言われることもありますが、本当に「ムダ」かというと、有用なことも多いようです。雑談の効用としては、以下のようなことが考えられます。

・自身でまだ整理されきっていない気持ち・感情・思考などを相手に伝えることで、頭の中が整理される
・雑談をすることにより、相手と自身とが人間同士の関係として円滑になりやすくなる(仕事・業務の話だけで、相手との人間関係がうまくいくことは少ないでしょう)

無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

 雑談を多く取り入れるために、オンライン飲みを始めている企業もありますが、その企画を立てるだけでもひと苦労です。

 手軽にするために、普段の仕事の中で雑談を取り入れられる方法がおすすめです。

・Webミーティングの冒頭2分間は雑談に当ててみる
・普段のチャットやメールの中でも雑談を入れるようにする

 などは今日からでもできますね。

<第6回に続く>