1日3食食べて1カ月で5kgの減量も!? 『ザ・ラストダイエット』著者・ボクシング元世界チャンピオン木村悠さんにインタビュー!
更新日:2021/8/13
昨今流行りの糖質制限ダイエット。痩せたいけれど、ほかほかの白いごはんの誘惑には抗えない……そんなあなたに朗報だ。ごはんをしっかり食べながら、多くの人がひと月で3〜5kgのダイエットに成功するという驚異のメソッドを紹介する書籍が登場した。『ザ・ラストダイエット』(集英社)の著者・木村悠さんは、過酷な減量を乗り越えてきたボクシングの元世界チャンピオン。さまざまなダイエットを試した末にたどり着いた「人生最後のダイエット」とは、いったいどんなメソッドなのか? お話をうかがった。
(取材・文=三田ゆき 撮影=島本絵梨佳)
ボクシング元世界チャンピオンが「ごはんを食べる」ダイエットに出合うまで
――ごはんを食べて痩せるという夢のようなダイエット、「ザ・ラストダイエット」。木村さんはボクシングの元世界チャンピオンでいらっしゃいますが、現役時代はどんなダイエットをされてきたのですか?
木村悠さん(以下、木村):現役のボクサーは、試合の2カ月ほど前から体重管理、ダイエットを本格的に始めます。よくいうボクサーの「減量」は、試合前2週間から行うもっときついものなんですが、2カ月前からのダイエットは、一般のみなさんと同じような感じでしょうか。炭水化物を抜くダイエット、肉類抜きダイエット、りんごダイエット、バナナダイエット、ゴボウ茶ダイエット、断食のようなダイエットなどなど、とにかく痩せられそうなメソッドなら、どんな方法も試したと言っても過言ではないくらい。とにかく、楽して体重が減る方法を探して、ありとあらゆるメソッドをやってみました。でも、どれもこれだ! というものではありませんでした。
――「ごはんを食べる」というダイエット方法に巡り合ったのは、いつでしょう?
木村:プロになって5〜6年経ったころです。やはり僕もはじめは、「お米は太る」というイメージがありました。あるとき、栄養士の先生に「ごはんを従来の倍量、食べてください」と言われたんです。「え! 本当にお米を食べて大丈夫? 太ったら減量がキツくなるんじゃないか」という怖さはありました。
でもそのとき、試合に勝てないことが続いていたので、「なにかを変えないとこの先ボクシングをやっていけないかもしれない」とも考えていました。自分の過去を振り返ってみると、僕はピンチのとき、いつも自分を変えることで乗り越えてきたんですよ。それで、すんなりと「よし、やってみよう」とチャレンジできましたね。不安もありましたが、それより「自分を変えたい」思いが強かったのでしょう。そして、試合に勝てたんです。
――もともと、白いごはんはお好きだったのですか?
木村:お米は好きでした。ですから、「お米を食べないダイエット」はちょっとつらいところがありました。僕は、会社勤めをしながら二刀流でボクシングを続けていたので、朝、トレーニングをしてから会社に出かけ、仕事が終わるとジムに行く。すると、どうしてもスタミナが切れてしまって、集中力がなくなるんです。やっぱりごはんは、エネルギー源になりましたね。
「ザ・ラストダイエット」は僕も会社勤めをしながら取り組んだダイエット。誰にとっても負担の少ない方法なのではないかと思います。安くて、美味くて、効果がすぐに出る。続けやすいと思いますよ(笑)。
「白いごはんを食べて痩せる」 気になるその方法は?
―― 「ザ・ラストダイエット」では、食事のメインをごはんにして、おかずは「1食につき1品あればじゅうぶん」とのことですが……栄養が足りないのではと心配です。
木村:「多品目を食べて栄養をとろう」とみなさんがんばっていらっしゃいますが、お米自体にも、ビタミンやミネラル、食物繊維やタンパク質などの栄養素は豊富に含まれているんです。ごはんをしっかり食べていれば、1日に必要な栄養素は、だいたいとれるんです。昔の日本人はお米を主食として、おかずの量はそんなに多くありませんでしたよね。そのころは、太りすぎている人も少なかったのでは? 昔の日本人が食べていた食事に立ち戻る、とイメージしていただければいいのではないでしょうか。
――1日に食べられるお米の量は、男性で2合半(お茶碗に大盛り5杯)、女性で2合(お茶碗に大盛り4杯)くらいだそうですね。こんなに食べられない人は、このダイエットに向いていませんか?
木村:大丈夫、無理をして食べる必要はありません。基礎代謝から計算して「平均でこれくらい食べられます」という目安はありますが、もっと食べられる人もいらっしゃいますし、たとえば、今まで糖質制限をしてきた人は、胃腸が弱っていて食べられないこともあるようです。最初は、自分の食べられる量から始めてください。
「1日に3食、食べなきゃいけない」と思われている方もいらっしゃいますが、食事の回数も含めて自分の体調や胃腸のコンディションに合わせて食事を選択できるようになってくると、食べながら痩せるリズムもできてきます。2週間程度でリズムがつかめるようになりますよ。ひとつの目安は、「動物みたいに食べる」ということ。動物って、おなかが空いていないと食べないでしょう? 人間だって動物ですから、おなかが空いてから食事をするのが本来の姿なんです。
――「白米を食べて栄養をとること」「お水を飲んでからだを浄化すること」「代謝を上げること」「しっかり休むこと」が4つのポイントとなる「ザ・ラストダイエット」。運動はしなくてもいいのですか?
木村:はい。僕のダイエットにはステージが3つあります。第1のステージは、食生活を改善して、痩せる体質を手に入れること。「痩せる」目的を達成するだけならば、食事だけでOKなんです。
その次のステージに進み、ボディメイク=「腹筋を割りたい」「ヒップアップしたい」という目標を設定する人は、運動を取り入れて、からだつきを変えていくプログラムをこなしてもらいます。最終的には、ダイエット卒業のステージ──運動もそんなにしないし、食事も自由にとっているけれど、代謝が高い状態が維持されているため、体型が安定するという段階に至ります。
第1ステージで、ごはんを食べてお水を飲む以外に大切なのは、からだをしっかり休ませること。疲れたらきちんと休む。睡眠の質を高める。これが肝要です。お風呂に浸かってからだのこりをほぐす、マッサージやエステなども、代謝や血行の改善につながり、体重減を促進します。
「健康で長生きできる食の素晴らしさを、ひとりでも多くの方に知ってほしい」
――このメソッドを試した人のほとんどが、ひと月で3〜5kgのダイエットに成功しているということですが、どんな人がダイエットに成功してきたのでしょう?
木村:現在、僕がサポートをしている方は、40〜50代の男女が多いんですよ。万年ダイエッターの方もいらっしゃいました(笑)。おなかが出ていることを気にされている方もいらっしゃいます。ダイエットが成功しやすいのは、「素直で、まじめにやる人」です。僕に痩せさせてもらおうなんて、ゆる~く考えている人だと厳しいものがありますが、きちんと自分と向き合って「痩せたい」と考えている人は、みなさん結果を出すことができます。
反対に、このダイエットに向いていないのは「言うことを聞かない人」でしょうか(笑)。メソッドを自分の都合のいいように解釈されると、さすがに難しいかもしれませんね。でも、今、僕がサポートしている中学生の方も、60代の方も、まじめにやっている方は総じて結果が出ています。いつからでも始められるダイエットではないでしょうか? また、ずっと偏頭痛に悩んでいたけど、僕のダイエットを試して2週間くらいで症状がおさまったという方もいらっしゃいました。糖質を減らしていたため、脳に栄養が行き渡らなくなっていたのかもしれませんね。
「ザ・ラストダイエット」のもとになったメソッドは、もともと減量を目的としたものではなく、アスリートの食育のためのものなんです。痩せたい人はもちろん、我々ボクサーのような体重階級制競技のアスリートにも効果がありますし、たとえば胸板を厚くしたい、女性らしいボディラインになりたいという、からだづくりをしたい人にも有効です。
――ダイエットを卒業された木村さんご自身は、今後、どんなからだやメンタルを目指していきたいと思われますか?
木村:このメソッドを長く続けてきたおかげで、僕は食欲をコントロールできるようになりました。いくつになっても健康で、楽しくいられることを目標にしたいですね。「お酒を飲んじゃダメ」「外食はダメ」と我慢するのではなく、自由に好きなものを食べて、それでもダイエットをしなくていい体型を維持していきたいです。
「人生100年時代」と言われますが、やっぱりからだの不調を抱えていると、その100年の楽しみ方はまったく違ってくると思います。健康寿命を伸ばすことは、現代の大きな課題ですね。健康で長生きできる食の素晴らしさを、ひとりでも多くの方に知ってほしいと考えています。
ここ数年、糖質を制限するダイエットが流行り、「糖質は悪だ」と思っていらっしゃる方も増えています。日本のお米の消費量が落ちているという話も、以前から聞いています。でも、お米の持つ力をもう一度信じてよいのではないでしょうか? 痩せるだけでなく、睡眠の質も上がりますし、お肌もすべすべになります。お米を食べて育ってきた日本人の素晴らしい食文化を、より広く伝えていきたいと思います。