『はれときどきぶた』『虫眼とアニ眼』ダ・ヴィンチニュース編集部が読書感想文におすすめしたい推し本5選

文芸・カルチャー

更新日:2021/8/10

ダ・ヴィンチニュース編集部推し本バナー

ダ・ヴィンチニュース編集部メンバーが、月ごとのテーマでオススメの書籍をセレクトする、推し本“+”。8月のテーマは、「小・中学生の読書感想文におすすめの1冊」です。

解剖学者とアニメ監督の“眼”から世の中はどう見えている? 色褪せない課題図書『虫眼とアニ眼』(宮崎駿、養老孟司/新潮社)

『虫眼とアニ眼』(宮崎駿、養老孟司/新潮社)
『虫眼とアニ眼』(宮崎駿、養老孟司/新潮社)※宮崎氏描き下ろしカラーページあり!

『虫眼とアニ眼』は、宮崎駿氏と養老孟司氏が『もののけ姫』などの宮崎作品を通してその“心眼”で「自然と人間」を見つめ思いを語った対談集。「人間に関心が向きすぎている世界」には良し悪しがある。いつの時代も意外と人間は同じ問題で躓いている。大先輩でさえ私たちと同じようにお先真っ暗だったりする。だからと言って悲観せず、読者を好奇心へと繋いでくれる。2人の視点に触れただけで、物事が多面的に見えてくるから素晴らしいのである。
(中川寛子/ダ・ヴィンチニュース副編集長)


どんな大人になる? 繰り返し読み続けたい『星の王子さま』(サン=テグジュペリ:著、河野万里子:翻訳/新潮社)

『星の王子さま』(サン=テグジュペリ:著、河野万里子:翻訳/新潮社)
『星の王子さま』(サン=テグジュペリ:著、河野万里子:翻訳/新潮社)

 読み返すたびに真っすぐな王子さまの台詞にハッとする回数が増え、良くも悪くも大人になっていることを実感する。大切なことを見失っていないか確認するためにも、若いうちに本書に触れ、感じたことを書き残しておくことをおすすめしたい。何年後かに再読したとき、どれだけ自分が変わったかを教えてくれると思うからだ。ちなみに本書を初めて読んだ中学生の私は「おとなって変」と言う王子さまに共感したが、今そんな大人になっていないか見つめ直そうと思った。
(坂西宣輝)


どこが“ミソ”なのかを考えるだけで1本書けちゃう『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の百物語』(氏田雄介:著、武田侑大:イラスト/PHP研究所)

『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の百物語』(氏田雄介:著、武田侑大:イラスト/新潮社)
『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の百物語』(氏田雄介:著、武田侑大:イラスト/新潮社)

 本を読むのは無理―! というお子さんをお持ちの親御さんにこっそり耳打ちしたいのは人気シリーズ「54字の物語」の中から夏にふさわしいこちら。何も、読書をサボるススメではありません。何が素敵って、たった54字の中に起承転結すべて入っていて、想像と考察の余地がありまくりなところ。お子さんと一緒にまずは1編読んで、何を想像したのか、どの文言からそれを感じとったのか書いてもらう。それを繰り返すうちに1冊ペロリな上に、読書の楽しさのエッセンスを会得していること間違いなし!
(遠藤摩利江)



生きることに前向きになる1冊『キッチン』(吉本ばなな)

『キッチン』(吉本ばなな)
『キッチン』(吉本ばなな)

 中学生の頃の私が夢中だったもの――アガサ・クリスティのミステリーとビートルズの音楽、そして吉本ばななさんの小説だった。
特に本書の書き出し、

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。

 私にとって「春はあけぼの」などと同じくらいに印象深い一文だ。当時の私には、肉親やそれに近い存在との別れは経験がないもの。にもかかわらず、主人公が台所を愛し、冷蔵庫の音で喪失感を癒そうとする姿に、なぜだかとても腹落ちしたのだ。誰かと食べ物を味わうすばらしさ。そして生きることを考えさせてくれた1冊。
(宗田昌子)


30年越しに、名作を無限リピートした理由を考えた。『はれときどきぶた』(矢玉四郎/岩崎書店)

『はれときどきぶた』(矢玉四郎/岩崎書店)
『はれときどきぶた』(矢玉四郎/岩崎書店)

『はれときどきぶた』が刊行されたのは、1980年。読んだのは小学生の頃だから、もう30年以上経っているけど、当時は家でも学校でも、そこにあれば繰り返し読んだ。2020年代となった今でも読書感想文の「王道」であり、変わらず子どもたちの心をつかんでいるという本作だが、個人的にはえんぴつを天ぷらにするくだりと、トイレにへびが現れるシーンを、何度も読み返していた。ある意味、ぶたが降るよりも「目の前で起きてほしくないこと」として、少しの怖さも感じつつ、なぜか見入ってしまう。そんな魅力があった。
(清水大輔 / ダ・ヴィンチニュース編集長)