育児でプレッシャーを感じていたら。親と子どもが健やかに過ごすための「心のお守り」

出産・子育て

公開日:2021/8/12

発達障害の子どもを育てる親が楽になる 子育ての「呪い」が解ける魔法の言葉
『発達障害の子どもを育てる親が楽になる 子育ての「呪い」が解ける魔法の言葉』(浅野みや/自由国民社)

「子どもはほめて育てましょう」「両親が笑顔でいると子どもが安定します」「お子さんはあなたを選んでうまれてきたのです」……子育てをしていると、こんなメッセージにしばしば出会うことがある。確かに笑顔でポジティブに、愛情あふれた育児ができたら理想的だし、こうしたメッセージを日々意識して実践している人もいるだろう。

 しかし、あなたがこうしたメッセージに「自分はできてない……」「プレッシャーみたいでしんどい」と感じていたら要注意。特にお子さんが発達障害を抱えている親の場合は、こうしたメッセージに知らず知らず追い込まれてしまうこともある。少しでも思い当たることがあるならば、『発達障害の子どもを育てる親が楽になる 子育ての「呪い」が解ける魔法の言葉』(浅野みや/自由国民社)を手にとってみてほしい。そうした言葉にむやみに振り回されないための心強いアドバイスをくれることだろう。

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 著者の浅野みやさんは15年以上にわたって2000人を超える障がい児や保護者に「発達の悩みを幸せに変えるコーチング」を実践してきたプロ。実はこれまで受けてきた相談の中に、こうした言説に苦しめられている親御さんがかなり多いことを実感して本書を執筆したという。著者はこうした「子育てによくある言説」は、親身に語りかけているようでいて、実は「子育ては~でなければならない」「~しちゃいけない」と強制してくるものであり、特に発達障害を抱える子どもと向き合い、人一倍子育てにがんばっているはずの親たちにとっては「呪い」になりかねないと指摘する。確かにただでさえ教科書通りにいかない育児に右往左往しているのに、「これが当たり前です。やって当然!」と振りかざされたら、「まだ足りないの!?」「あれもやらなきゃ~」と泣きたくなってもくるだろう。

 たとえば近頃は育児の世界では「自己肯定感」に注目が集まっており、「子どもの『自己肯定感』を高める言葉を使いましょう」との言説もよくみかける。とはいえ頭ではわかっていても、つい子どもに否定的な言葉を投げてしまうことはあるし、いつも「いい言葉」が簡単に出てくるわけでもない。それなのに「ああ、また失敗しちゃった……」と律儀に落ち込んでいたら、それこそまんまと「呪い」にかかっている状態だ。もし否定的な言葉をかけてしまったら気が付いたときにあとでフォローすればいいし、「いい言葉を言わなきゃ」と正解探しに苦しむなら気が付いたときに伝えてあげればいいと著者。何も1回の失敗で子どもの自己肯定感が下がってしまうわけでもないし「10回に1回でもポジティブなことが言えたら花マル!」なのだそう。

 このほか本書には、学校の先生から言われがちなこと、ママ友や親類などに言われがちなことなど、さまざまなケースを想定した「呪いの言葉」の具体例とその対策が紹介されている。とにかく「相手に悪気はなくても、呪いのように届いてしまう可能性のある言葉がある」という事実をあらかじめ知っておくのは大事なことかもしれない。知っておくことで心構えができるし、客観的になってダメージを回避できることもあるだろう。その意味では本書は親たちの「心のお守り」ともいえる。きっと心を軽くしてくれるに違いない。

文=荒井理恵