映画『孤狼の血 LEVEL2』がノベライズ! 刑事・日岡と最凶のモンスターの闘いは、一体どんなラストを迎えるのか

文芸・カルチャー

公開日:2021/8/20

小説 孤狼の血 LEVEL2
『小説 孤狼の血 LEVEL2』(柚月裕子:原作、池上純哉:映画脚本、豊田美加:ノベライズ/KADOKAWA)

 正義とはなにか――。柚月裕子さんが手掛ける『孤狼の血』(KADOKAWA)は、読み手にそれを突きつけてくる。警察と暴力団。この構図だけを見れば後者が“悪”とされがちだが、前者の組織の中にも醜い思惑が渦巻いている。その上で「正義とはなにか」が問われるのだ。重厚な物語は多くの読者を魅了し、その後、『凶犬の眼』『暴虎の牙』とシリーズ化もされた。また、2018年には『孤狼の血』を原作とする実写映画も公開されている。

 そしてこの夏、実写映画の続編となる『孤狼の血 LEVEL2』が公開された。本作で描かれるのはシリーズの世界観を下敷きにした、映画オリジナルのストーリーだ。暑い夏、観る者の体温をさらに上昇させるような、興奮必至の展開が待ち受けているだろう。

 映画を観た人、あるいはまだ観ていない人にもオススメしたいのが、映画オリジナルの物語を小説に落とし込んだ『小説 孤狼の血 LEVEL2』(柚月裕子:原作、池上純哉:映画脚本、豊田美加:ノベライズ/KADOKAWA)である。脚本を元に書かれた本書は、映画を忠実に再現している。その上で各キャラクターの心情や行動が丁寧に描かれており、映像とは違う楽しみ方をもたらしてくれるはずだ。

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 物語は広島を舞台に進んでいく。主人公は一匹狼の刑事・日岡。彼は暴力団同士の抗争を防ぎ、広島の安寧のためであれば手段を選ばない。粗暴で、ときには暴力団員を相手に凄んでみせる。その姿はまるで暴力団員そのものだ。

 日岡には“エス”と呼ばれるスパイがいる。彼が飼っているのは、チンタという青年だ。チンタは日岡に代わって暴力団に潜入し、内部情報を持ち帰ってくる。そこで得た情報を元に、日岡は平和のため立ち回るのである。それは綱渡りのような危険な行為。チンタの姉・真緒も常にチンタのことを心配している。しかし、手段など選んでいられない日岡は、「これで最後にするから」とチンタにエスを続けさせる。

 そんな日岡の前に立ちはだかるのは、最凶のモンスター・上林だ。出所後まもなく、刑務官の身内を非道な方法で殺害するような、冷酷な男である。彼の存在により、日岡が守ってきた広島の秩序は少しずつ崩されていく……。

 映画本編と同様に、本作はスピーディに展開していく。各シーンが次々と切り替わり、神の視点で一人ひとりのエピソードが描かれる。それらはやがて最悪なシナリオへと収斂していき、悲痛なラストを導き出す。

 復讐心が悲劇を生み、それがまた新たな復讐心に火を付ける。着火された導火線は、決して消えることがない。本作を読み終えたとき、きっと誰もが思うだろう。一体誰が正義で、誰が悪だったのか、と。

 その答えは、簡単には出せない。だからこそ映画を観て、あるいは本書を読んで、何度でも自身に問いかけたくなるはずだ。

文=五十嵐 大

映画『孤狼の血 LEVEL2』

映画『孤狼の血 LEVEL2』
原作:柚月裕子「孤狼の血」シリーズ 監督:白石和彌 脚本:池上純哉 出演:松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬ほか 配給:東映 8月20日(金)全国ロードショー ●3年前、暴力組織の抗争に巻き込まれ命を落とした刑事・大上。その後を継ぎ、刑事・日岡は広島の裏社会を治めていた。しかし、刑務所から出所した要注意人物によって、秩序が崩れていく。絶体絶命の窮地を、日岡は乗り切れるのか――。
(c)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

公式サイト:https://www.korou.jp/