木村拓哉×長澤まさみ『マスカレード・ナイト』で正反対のバディが帰ってくる! 招待客500人の仮装パーティーに潜む殺人鬼の“仮面”を暴け

文芸・カルチャー

更新日:2021/8/21

マスカレード・ナイト
『マスカレード・ナイト』(東野圭吾/集英社文庫)

 潜入捜査官と敏腕ホテルマンのあのバディが帰ってくる。2019年に公開された木村拓哉主演、長澤まさみがヒロインを演じる映画『マスカレード・ホテル』。その続編となる『マスカレード・ナイト』が今年の9月に公開されるのだ。

 原作は、累計発行部数470万部突破の東野圭吾氏の大人気シリーズ「マスカレード」シリーズの『マスカレード・ナイト』(集英社文庫)。『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』に続く3作目の作品だが、どの作品から読んでも、このシリーズの世界にのめり込んでしまうに違いない。一流ホテル・コルテシア東京を舞台に描かれる物語は、ミステリーとしてはもちろんのこと、ホテルの裏側に迫る「お仕事もの」としても見所満載。敏腕ホテルマンがどうやってワガママな客たちを満足させるのか、潜入捜査官はどんな推理で犯人を追い詰めていくのか。ページを捲るたびに早く続きが読みたいと胸が高鳴る。

 物語は、練馬のマンションの一室で若い女性の他殺体が発見されたことに始まる。難航する捜査の最中、警察のもとに届いたのは、この事件の犯人がホテル・コルテシア東京の年越しカウントダウン・パーティー、通称「マスカレード・ナイト」に現れるという密告。捜査本部に呼び出された警視庁捜査一課の刑事・新田浩介は、かつての事件同様、潜入捜査のためホテルのフロントクラークとして働くハメに。「マスカレード・ナイト」は、参加者全員が素顔を仮面で隠す大規模な仮装パーティー。次から次へと正体不明の怪しい人物がホテルを訪れるなか、タイムリミットは迫ってくる。

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 以前の捜査の時にはフロントクラークだった敏腕ホテルマン・山岸尚美は、今やコンシェルジュに昇格。だが、ホテルに泊まる客たちは相変わらず一癖も二癖もある者ばかりだ。「情熱的なプロポーズを演出してほしい」という会社経営者と、「プロポーズを断りたいが、良い方法はないか」というその恋人。「夫のために思い出の誕生日ケーキを食品サンプルで作ってほしい」という女性と、その女性に一目惚れをし、「2人になれる時間を作ってほしい」という男性…。無茶な要望ばかりの客たちのために、山岸は奮闘するのだ。

 先の事件で新田と山岸との間には強い信頼関係が築かれたが、それでも、ホテルマンと警察官の間には、軋轢は絶えない。ホテルを訪れる人はみんな「お客様」という仮面をつけているもの。普段の顔を隠し、普段の生活では味わえない体験を求める客たちのために、その仮面を守りながら、最高のおもてなしを提供するのがホテルマンの仕事だ。だが、警察の仕事は、仮面を無理やりにでも引き剥がすこと。一刻もはやい犯人検挙のため、少しでも不可解な行動をとった客を見逃すわけにはいかないのだ。

「忘れるなよ、化けているのはおまえだけじゃない。向こうだって化けている。決して騙されるな」

 警察官もホテルマンも、この物語の登場人物たちは自らの仕事に誇りをもち、目の前のことに全力を尽くしていく。その懸命な姿には思わず心動かされる上、さらにそこにミステリアスな事件の謎が絡み合い、無上のエンターテイメントを形づくっていく。映画を見る前にぜひとも本でもこの作品世界を体感してほしい。どうやって映像化されるのか。想像を巡らせながら読めば楽しみは増えるばかりだ。

文=アサトーミナミ