「頭がいい人」は、何をどのように捉え、実践しているのか?/本当に頭がいい人の思考習慣100①

ビジネス

公開日:2021/8/30

齋藤孝著の書籍『本当に頭がいい人の思考習慣100』から厳選して全5回連載でお届けします。今回は第1回です。現在、インターネットで容易に情報を得られるようになり、AIの進歩で「考える」という行為の必然性も減るような状況にあります。一方で、自身の能力に対して投資する傾向にあり、「頭がよくなりたい」と考えている人も増えています。そこで、ここでは教養・学びを自ら得て「頭がよくなる」とはどういうことかを理解し、その状態に常に昇華できるクセをつけるための習慣の身につけ方をお教えします。

本当に頭がいい人の思考習慣100
『本当に頭がいい人の思考習慣100』(齋藤孝/宝島社)

はじめに――「頭がいい人」はどのように思考するのか

 人から話を聞いて答えたり、本を読んでその内容を人に話したりする行為は、私たちが日常行っている基本的なコミュニケーションです。しかし、誰もが同じようにしているように見えるその行為も、その中身は人によってまったく異なります。

 正しく聞いて、正しく返す。あるいは正しく読んで、正しく伝える。シンプルにいえば、頭がいい人はこのインプットとアウトプットが正しくできている人です。

 本書は、この「頭がいい人」とは具体的にどんな人であり、日頃何をどのように捉え、実践しているのか。それを考えていくための一冊です。

 

 頭がいい人は、言いたいことを短い時間で要約し、わかりやすい言葉で無駄なく伝えることができ、また聞いている側は無駄な時間を使わず、情報を楽にインプットできます。

 相手の時間を奪わない、相手に迷惑をかけない人は「頭がいい」ということです。

 頭がいい人は会話が上手ですが、それは「おしゃべり」が上手という意味ではありません。滑舌よくペラペラと口が回る人を「頭がいい」と見る人もいますが、頭がいい人は情報を整理する力や要約する力、構成する力、説明する力などが備わっている人です。

 

 会話とは、イメージでいえば川の流れのようなものです。聞いている相手が、川にジャブジャブとつかって泳いできてくれれば、こちらの意図を伝えることはできます。

 しかし、流れが急で、泳いで渡るのが難しいと相手が感じたなら、踏み台となる石を置いてあげることで、その人は容易に川を渡ることができるはずです。

 会話における「踏み石」とは、カギとなるワードです。相手が川で溺れたり、流されたりしないように、キーワードとなる石を3つほど置いてあげ、その順に沿って説明することで、相手も踏み石をピョンピョンと渡るように理解できるわけです。会話ひとつをとってみても、頭がいい人はこうしたスキルを普段から何げなく使っているものです。

 こうした力を備えた人と組んで仕事をすると、そうでない人との仕事と比べ、成果は格段に期待できますし、何より仕事の最中も余計なストレスを感じなくてすみます。

 必然的に、職場での信頼も高まり、「あの人は頭がいいね」という評価につながるわけです。頭がいいということは、周りの人を幸せにするということなのです。

 頭がいい人は誰かの話を聞いたり、本を読んでいるときも、アウトプットすることを前提に聞いたり読んだりしているため、記憶の定着度や理解度が高いのも特徴です。

 新聞を読むとき、誰かに説明することをイメージしながら読んでみると、漠然と読むときよりしっかりと頭に入るものですが、要はそれと同じことです。

 その場合でも、先述したように3つほどのキーワードを選びながら読み進め、その言葉を基点に記憶をすることで、インプットはさらに質の高いものになります。

 記事中の言葉に振り回されるのではなく、テーマ全体がどういう構造になっているのか、その中で必要な3つが何なのか、それをピンポイントで突く力に長けています。

 

 こういう思考を普段から習慣づけている人は、ビジネスシーンでもその力を遺憾なく発揮できるでしょう。会議の席でもパニックにならず、テーマ全体を俯瞰して捉え、キーワードを拾い出し、限られた時間で説明することができます。

 企画書をつくる際にも、無駄にダラダラと書き連ねるのではなく、全体の構造の中から最も必要なポイントを3つ選び、A4用紙1枚にすっきりと落とし込めるのです。

 また頭がいい人というのは、物事の何が重要か、あるいは重要でないかを、自分の視点で理解できている人です。そして、この「自分の視点」を獲得しているということが、すなわち知性や教養を身につけているということにもなるのです。

 雑学に強いといわれる人は、たしかに豊富な情報を記憶していますが、頭の中でバラバラな状態で断片化している状態では、知識として仕事に活かすことはできません。雑学と教養とは意味がまったく異なるのです。

 得た知識を頭の中で整理し、再構築し、体系化できる人。頭がいい人は、この情報の整理力があるから正しいアウトプットができるわけです。

 

 教養とは、知識を身につけることで養われる心の豊かさだと言う人がいます。私も、頭がいい人とはそういう人のことではないかと思っています。

2021年4月
齋藤 孝

<第2回に続く>