現代は高速社会。そこで生きていくための課題は、密度の濃い時間を過ごすこと/本当に頭がいい人の思考習慣100⑤

ビジネス

公開日:2021/9/3

齋藤孝著の書籍『本当に頭がいい人の思考習慣100』から厳選して全5回連載でお届けします。今回は第5回です。現在、インターネットで容易に情報を得られるようになり、AIの進歩で「考える」という行為の必然性も減るような状況にあります。一方で、自身の能力に対して投資する傾向にあり、「頭がよくなりたい」と考えている人も増えています。そこで、ここでは教養・学びを自ら得て「頭がよくなる」とはどういうことかを理解し、その状態に常に昇華できるクセをつけるための習慣の身につけ方をお教えします。

『本当に頭がいい人の思考習慣100』を最初から読む

本当に頭がいい人の思考習慣100
『本当に頭がいい人の思考習慣100』(齋藤孝/宝島社)

思考習慣004 高速化
時間を細かく区切り密度を高める

今と昔は時間の濃度が違う

 結婚式などで「スピーチは3分以内にしてください」と言われると、「たった3分?」と思う人も多いかもしれません。しかし、3分というのは実はかなり長い時間です。

 テレビ番組の収録中、エンディングに「残り45秒あるのでまとめてください!」とスタッフさんに言われたら、現場の演者さんたちは「そんなに!? なんでそんなに余ったの!」と大慌てです。逆にいえば、上手なMC(進行役)は5秒あれば番組のまとめにオチまでつけて、「では、さようなら」と締めることができます。つまり、この5秒は実に濃度の濃い時間といえるのです。

 現代社会は昔に比べ、時間が非常に細かく区切られ、その区切られた一つひとつの時間の濃度がとても濃くなっています。

 改札口で前の人がSuicaのチャージ不足で詰まったりすると、そのわずか1、2秒のロスに対して後続の人は苛立ちます。手で切符を切っていた昔と比べたら、随分とスピーディになっているにもかかわらず……こういう高速社会に私たちは生きているということなのです。

15秒を「長い」と思えるようになる

 言い換えれば、時間を細かく区切り、密度を高めて仕事をしたり、趣味に没頭したりすることは、高速社会で生きるうえで必要なことでもあります。意識せずとも「15秒はけっこう長いな」と思えるようになれば、1分、あるいは3分あれば相当なことができるようになり、ひいては生活の密度を高めていくことにつながるわけです。

 私はテレビの台本は本番当日に短時間で読むことがほとんどです。というのも、収録というのは当日になって内容が変更になることが珍しくないためで、そうした短い時間で密度の濃い打ち合わせをするという作業は、高速社会を生きる私たちが慣れていくべき課題だといえるでしょう。

思考習慣005 関連づけ
バラバラの情報は「問い」を立てて一本の筋を通す

断片化された知識を体系化する

 知識が豊富ならば、それだけで「知性のある人」、すなわち「頭がいい人」といえるかといえば、必ずしもそうとはいえません。知識につながりがなく、バラバラな状態では、単に情報の断片が散らばっているだけ。いわゆる雑学的知識です。知識を活かすには互いに関連づけて整理し、適切な場面でアウトプットすることこそが重要なのです。

 バラバラの情報を体系的にまとめていくには、「問い」を立てて一本の筋に通していくという方法があります。

 たとえば、「産業革命とは何か?」という大きな「はてな(?)」について、ただ漠然と時系列に事実を書き連ねていくのではなく、「なぜイギリスで始まったのか?」「具体的には、何の変革か?」「世界への影響はどれほどあったのか?」という具合に、小さな「はてな(?)」の形で「問い」をたくさん立てていきます。

 すると、その答えとして集まった知識には、それぞれ関連性や共通点があるはずなので、一本の筋として産業革命の全体像が見えてくるのです。

「問い(?)」と「答え(!)」をワンセットで

「問い(?)」を立てながらアウトプットをしてもらった人は、話のポイントを理解しやすく興味深く聞くことができます。そして話し手に対して「この人は頭がいいな」という印象をもつことでしょう。

 具体的には、普段から生活の中で気になったことや思いついたことを、「?」をつけながら手帳などにどんどん書き込んでいきます。そして、後日調べたり、気づいたりした「?」に対する答えを、今度は「!」で書き込んでいくのです。

「?」に対して「!」がワンセットでひとつの知識として関連づけられますから、「?」と「!」が3セットほどあれば、「産業革命とは」という大きな「はてな」の説明として体系づけられます。

思考習慣006 振り返り
リフレクションタイムを挟んでインプットする

作業を終えたらいったん振り返る

 たとえば、受験生が数学の問題集に取り組むとき、1回やり通してそれで終わり、という人も多いと思います。しかし、実はこれは非常にもったいないのです。

 よほどの秀才でない限り、一度にすべては正解できないので、解けなかった問題も必ずあるはずです。それはその人の苦手なポイントであるため、答えを見て、しばらくしてからもう一度やってみても、やはり解き方を忘れてしまい解けなかったりするものです。

 そういう場合は作業からいったん離れて行動や考え方などを俯瞰して振り返るリフレクションタイム(振り返り)を設け、もう2回、3回と繰り返し取り組むようにします。

 1回目は、解ける問題と、解けない問題を分ける「作業」だと思って、さっさと終わらせます。解けなかった問題は答えを見て振り返り、リフレクションタイムをとり、2回目にトライします。そこでも再びできるものとできないものをふるいにかけます。

記憶のピークは7回目に来る

 仮に5回目なのに解けないとしても落ち込む必要はありません。リフレクションタイムを設けながら、解けるまで繰り返していきます。

 これは英単語を覚えるときも同じです。辞書を何度引いても覚えられない単語というのは必ずあるものですが、5~6回目あたりで記憶できる人が増えてきます。私の持論ですが、英単語の記憶のピークは7回目に来ると考えています。

 7回やればたいてい覚えられるものなので、7回目までは何度も立ち止まって振り返りながら、やってきたことをチェックしつつ、チャレンジを繰り返すようにしましょう。

 勉強に限らず、いったんやってみて、うまくいかなかった場合でも、立ち止まってフィードバックし、再度取り組んでみるということは、頭がいいといわれる人に共通する基本的なメソッドなのです。

<続きは本書でお楽しみください>