「次にくるマンガ大賞2021」コミックス部門第2位『ウマ娘 シンデレラグレイ』 競走馬の名と魂をもつ少女たちのレースが激アツ!
公開日:2021/8/25
ユーザーから「次にくる」と思うマンガを募集し、そこでノミネートされた作品から投票によって大賞を決める“ユーザー参加型”のマンガ大賞「次にくるマンガ大賞」。7回目となる今年、ついに受賞作品が決定しました! コミックス部門とWebマンガ部門を合わせたエントリー総数は3,582作品、投票総数は約51万票。その中からコミックス部門で第2位に選ばれた『ウマ娘 シンデレラグレイ』(久住太陽:漫画、杉浦理史:脚本、伊藤隼之介:漫画企画構成/集英社)を紹介!
田舎に現れた灰色の髪の少女。ライバルたちとのレースに勝ち、未来に“怪物”と呼ばれる彼女の名はオグリキャップ。その伝説的な走りを描いた物語が『ウマ娘 シンデレラグレイ』だ。
名馬の魂を宿す少女たちのレースバトルに“怪物”参戦
有名競走馬を擬人化した「ウマ娘」たちを育成し、レースバトルで勝たせていくメガヒットスマホゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』。本作のリリースより前に、ゲームに登場するキャラクターたちをピックアップしたアニメとコミカライズ作品も既に製作されている。
ウマの耳と尻尾、そして超人的な走力をもつ「ウマ娘」たちが居る世界では、彼女たちのレースバトル「トゥインクル・シリーズ」が国民的人気スポーツとなっていた。
物語は岐阜県にある「カサマツトレセン学園」から始まる。カサマツでは“中央”の華やかなトゥインクル・シリーズにははるかに及ばない「ローカルシリーズ」が開催されており、学園に入ったウマ娘たちはまずはこの“地方”のレースに出るため、自分を磨くのだ。
新入学生たちの中に、灰被り(芦毛=グレイの髪の毛)の少女・オグリキャップがいた。彼女は薄汚れたジャージを着ており、その見た目から周囲から嫌がらせを受ける(本人にその自覚はない)。またウマ娘たちの間には「芦毛は走らない(勝てない)」という呪いのようなジンクスもあった。
だが彼女は、自身の走りであっという間にカサマツのトップレベルであることを認めさせる。
カサマツでウマ娘のトレーナーをしている北原穣(きたはらじょう)はオグリキャップの走りと潜在能力に魅了され、彼女を自分のもとへ誘う。彼はSP1(東海地区最高格のレース)である「東海ダービー」優勝を目指すことを告げ、オグリキャップも北原と組むことに同意した。
北原は彼女と会うまで「(カサマツには)自分と重ね合わせて心の底から応援したくなるようなスターがいない」と嘆いていた。だがそれが「カサマツにスターがいると伝えたい」と思えるようになった。
オグリキャップはデビュー戦こそ2位だったが、2戦目で初勝利を飾りその後連勝していく。ただ走りたかっただけの彼女は、いつしかその名の通り頂き(キャップ)に立ちたいと思うようになる。
しかし彼女は「東海ダービー」には出ることはなかった。カサマツの怪物の強さは“中央”に知られ、オグリキャップはスカウトされたからだ。かくして彼女は北原のもとを離れ、新たな戦いのステージへ旅立った。カサマツ発の“スター”ウマ娘として。
風を切り裂き疾走する灰被りのシンデレラに人々が見た夢
オグリキャップは地方とはいえ12戦10勝、うち2位2回という成績で中央へ移籍し、いきなりのGIII・重賞レース(中央の上位格レースでGI、GII、GIIIがある)で2連勝を飾る。力を見せつける彼女だが、移籍のタイミングが悪くGIクラシックレースに未登録だった。このままでは同世代の最強ウマ娘を決める「日本ダービー」に出ることもかなわない。
しかしオグリキャップの走りと強さは1万人ものファンの署名を集め、マスコミ、そして日本トレセン学園の事実上のトップであるシンボリルドルフをも動かす。果たして彼女はダービーに出走できるのか? 26話からの展開(2巻~3巻)は、かなりアツいので必見だ。
さらにオグリキャップと同じ芦毛の“白い稲妻”タマモクロスも重賞レースを連勝し、存在感を増していた……。
風を切りさき、大地を踏みぬいて走るウマ娘たちのレース描写はド迫力の一言。レース中の疾風のようなオグリキャップと、普段のマイペースで少々天然ボケなところとのギャップもまたいい。純粋なスポーツ漫画としての完成度の高さは抜群で、丁寧に描かれたライバルたちとの1戦1戦にはアツくさせられる。
田舎の灰被り少女が、実力を認められてスターダムにのし上がるシンデレラストーリーは、間違いなく「だれもが自分と重ね合わせて心の底から応援したくなる」はずだ。
文=古林恭