親の介護や介護にかかるお金、遠距離介護もマンガでわかる! 親が元気なうちに知っておきたい「介護の話」
公開日:2021/8/27
アラフィフにもなると、いつもはバカ話で笑いあっていた友人たちとの会話にも「健康話」と「親の介護話」が増えてくる。健康については各自それなりに対処していても、親の介護となると話は別。始まっていたりいなかったりと状況はバラバラでも、みんなの心に共通するのは巨大な「不安」――ミリオンセラーとなった『キッパリ! たった5分間で自分を変える方法』(幻冬舎)の著者・上大岡トメさんの『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(主婦の友社)は、そんな介護への不安を少し軽くしてくれるうれしい1冊だ。ポイントはやはり「マンガ」であること。大事なことはしっかり文章で解説されているが、それでも読みやすさとわかりやすさは抜群だ。
「お母さんが腰を悪くして歩けなくなった」と知らせを受けて慌てて横浜の実家に帰った上大岡トメさん(山口県在住)が目にしたのは、すっかり年をとった両親の姿。ショックを受けたトメさんは、それ以来なるべく実家に顔を出すようにしたものの何をどうしていいのか不安ばかり…。そんなトメさんは鹿児島の両親と伯母を遠距離介護中の編集者・コンさんと、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子先生(本書の監修者でもある)に話を聞きに行くことに。ご自身も富山県にひとりで住む母を遠距離見守り中という黒田先生のアドバイスは率直で、経験者ならではの実感がこもっためちゃくちゃ参考になることばかり…。というわけで、本書はトメさんとコンさんと黒田先生のやりとりを通じて「介護にまつわる不安」をいろいろ解決していく1冊となっている。
内容的には介護保険といった介護の基本から、家の片付け方、高齢の親の精神面のケアなど、ひとまず知っておきたい介護にまつわる知識は網羅。タイトルにあるように「介護のお金」についても詳しく、「親の介護は親のお金で、が大原則」「どうやって親にお金の話を切り出すか」「親のお金で確認したいこと」などセンシティブな内容にもズバリ切り込んでくれていて、「そういうのが知りたかった!」と思わず膝を打つ。さらに遠方から介護しなければならない「遠距離介護」についても詳細で、多くの体験談も参考になるだろう。
なんとなく「親の老い」を直視したくない気持ちがあるのか、まだ親が元気だと介護の本は「そのうち読めばいいや」となりがちだ。だが、行政の介護サービスは自ら積極的に情報アクセスしないと充実した内容が受けにくいものであり、あらかじめざっくりとでも知識を得ておくとだいぶ違うだろう(実際「もっとあらかじめ調べておけばよかった」と後悔する経験者も多いのだ)。さらに本書には「親が元気なうちにやっておきたいこと」もきっちりアドバイスされているので、まだ具体的には動かないにしても心の準備はしておけそうだ。
実際、著者のトメさんは「なんとなく先延ばしにしてきた派」であり、いきなり現実がおそってきたことで介護のことを急いで調べるハメになった。その努力をこうしてわかりやすく提供してくれるのは読者としてはありがたいし、その焦りが切実なだけに「あー、うちも考えとかなきゃ」と身も引き締まる。とにかく気軽、でも頼りがいは抜群。アラフィフの友人たちに迷わずすすめたくなる1冊だ。
文=荒井理恵