「news every.」藤井貴彦アナの言葉はなぜ視聴者の心を打つのか? その秘密である27年間続けてきた習慣とは
更新日:2021/9/2
リモートワーク中、テレビのニュースを流していることが多い。夕方は、日テレの「news every.」と決めている。理由は、メインキャスターを務める藤井貴彦アナウンサーがいるからだ。コロナ関連の暗いニュースが多い中で、藤井アナのコメントにほっと心が和らぐことがある。危機感をいたずらに煽るのでもなく、無責任に楽観するのでもなく、考えた抜かれた真摯な言葉で視聴者に寄り添う――。藤井アナの言葉に救われた、という方は日本中にたくさんいるのではないか。
どんな人生を送ればあんな言葉が出てくるのだろう? 本書『伝える準備』(藤井貴彦/ディスカヴァー・トゥエンティワン)にその秘密があった。キーワードは、タイトルにもある“準備”だ。藤井アナは、頭に浮かんだ言葉を、そのまま伝えているわけではない。「相手はどう思うだろうか?」「もっといい言い方はないだろうか?」何度も問い直すことで、心を打つ言葉になっていくという。本書を読めば、仕事でのプレゼンや部下へのアドバイスなど、日々のコミュニケーションにも役立つヒントがあるはずだ。
部下へのアドバイスは「言い換えで」
よく「上司にしたい」と言われる藤井アナは、後輩へのアドバイスも“準備”している。なんと、後輩の仕事ぶりを観察しながら、「もし聞いてきたら、こんなことを言ってあげたい」ことを本番中に書き留めているという。しかも、以前のアドバイスと重なっているかまで確認しているそうだ。
これだけでも「理想の上司」だが、藤井アナはさらに「言葉を寝かせる」「相手に合わせる」ことでアドバイスを届きやすくしている。たとえば、「入社3年目でこのレベルはきつい」と感じた場合。「あと少しで3年目として十分なレベル」と言い換えるだけでもポジティブになる。さらに工夫して、「3年目としては合格だが、目指すのは合格じゃないだろ?」と言えば、後輩はもっと頑張るだろう。
藤井アナが入社以来27年間続けてきた「5行日記」
テレビに映らないところでも、丁寧に言葉を選ぶ藤井アナ。その言葉遣いの原点はどこにあるのだろうか。本書を読み進めていくと、彼が入社以来27年間続けてきたという「5行日記」が関係しているようだ。藤井アナは、1日5行、その日の仕事内容や何を感じたかを日記に書いている。
5行、というところがミソだ。まずは、単純に短いから続けやすい。藤井アナは、1日1~3分ほどで書いている。そして、5行と字数が限られているからこそ、収まるために言葉を選ぶようになる。たとえば、「もっと努力する必要があると本気で思った」→「真の努力が必要だと痛感した」という感じだ。こうした言い換えを続けていると、日常生活でも状況に合った言葉を選べるようになるとか。
日記には、書き出すことでその日のストレスをリセットする効果や、後で読み返したときに過去の自分と比較できるメリットもある。5行日記は、いろいろな意味で藤井アナを形作る大きな要素になっていたようだ。本書ではほかにも、藤井アナが大切にする「いつもこころに絶対値」という言葉や、「アナウンサー人生で最初の失敗」などについても語っている。人の心を動かす言葉を生み出すために、まずは自分の中に言葉をためていこう。
文=中川凌
(@ryo_nakagawa_7)