「私にしかできないことなんてない」自分の“市場価値”を知るための9の質問/マンガ 転職の思考法

ビジネス

公開日:2021/9/14

あなたのマーケットバリュー(市場価値)はいくら?

マーケットバリューを測るための9の質問

① 技術資産

質問1 会社を変えても、価値のあるスキルをどれだけ持っているか?

質問2 そのスキルの「賞味期限」はいつまでか?

質問3 他の会社でも通用する「レアな経験」がどれだけあるか? その経験は、世の中からどれだけ「強いニーズ」があるか?

② 人的資産

質問4 社内に、自分が会社を変えても、喜んで力を貸してくれる人が、どれだけ存在するか? その人物たちは、意思決定の力がどれだけあるか?

質問5 社外に、自分のために喜んで力を貸してくれる人物がどれだけ存在するか?

質問6 その人物たちは、意思決定の力がどれだけあるか?

③ 業界の生産性

質問7 自分が所属しているマーケットの「一人当たりの生産性」はどれだけ高いか?

質問8 自分が所属しているマーケットに今後の「成長性」はあるか?

質問9 今後、どれだけ「自分の市場価値」は成長が見込まれるか?

 

マーケットバリューは、箱の大きさで表現できます。この箱の大きさは、①技術資産、②人的資産、③業界の生産性という3つの要素で決まります。

いくつか例を挙げてみると、どんな会社からも必要とされる高い技術力を持った人は、技術資産がある人です。どんな人とも仲良くなり、可愛がられる力を持った人は人的資産のある人です。とくに才能がなくても安定して高い給与をもらい続けられる人は、所属する業界の生産性が高い人です。

あなたには、どんな資産があるでしょうか。上の9つの質問をヒントにして、自分の資産が何であるかを洗い出してみましょう。

マーケットバリューを高める3つの方法

前項で、マーケットバリューを箱の大きさで表現しました。マーケットバリューが最も高くなるのは、①技術資産、②人的資産、③業界の生産性を3つすべて備えている人だということがわかります。理想は2つ以上が高いことですが、1つでもいいのです。まずは、どれか1つを取りにいきましょう。

①技術資産

技術資産は、ほかの会社でも通用する技術的な蓄積のことで、大きく分けて2つあります。1つは職種に紐付く「専門性」で、法人営業やマーケティング、経理、プログラミング、デザインなど、職種に近いものです。もう1つは職種に紐付かない「経験」で、リーダーの経験、マネジメント業務、商品開発などの経験です。 できれば20代で専門性を身につけて、30代で経験を重ねていくのがベストです。

特に女性は、早いうちに専門性と経験が得られる職場を選んでください。出産・子育てを見据えた場合、ついつい企業固有の魅力的な福利厚生に注目しがちですが、その福利厚生がずっと続いていくという保証はありませんし、転職・転籍で使えなくなる可能性もあります。

一方、仕事で得る知識と経験は、自分に蓄積されていくものです。十分な専門性と経験があれば、たとえ離職期間があっても、働ける場所はたくさんあります。

②人的資産

ひと言で言うと、人脈のことです。「あなただから」と動いてくれる人がどれだけいるかです。自分にマーケットバリューがあることが前提で、40代以降の活躍を大きく左右する資産です。もちろん、20代、30代でも人的資産は大切です。あなたを信頼し、認めてくれる人を増やしましょう。

③業界の生産性

業界の生産性は、一人当たりの粗利のことで、これが、給料の原資となります。 「業界の生産性」は、業界によって、最大20倍ほどの差があります。そのため、同じくらいの激務なのに、給与が高い業界と安い業界が存在するわけです。

もし、技術資産も人的資産も乏しいなら、「生産性が高い業界」「今後、伸びる業界」を選んで働くことで、マーケットバリューを高められます。

「伸びている業界で働いた経験」には価値がある

今まさに伸びゆく業界で働いた経験を持っていると、マーケットバリューは高まります。たとえば、2010年からの5年間は、スマホゲームの売上が爆発的に伸びていた時期でした。そのため、この時期に、この産業で働いた経験というのは、それだけで貴重な「技術資産」になりました。

なぜなら、多くの会社がスマホゲームビジネスへの参入を考え、どうにかして経験者を雇いたいと考える会社が山ほどあったからです。社長から号令が飛び、社内で新しい事業を立ち上げるような場合、同業他社で成功を経験している人を、喉から手が出るほどに「欲しい!」と思うのは当然です。

その後も、AI(人工知能)を使ったビジネスの経験者、データマイニングやビッグデータ分析の実務経験者など、伸びゆく業界では、引く手あまたの求人がありました。

けれども、伸びゆく業界がある一方で、ひたすら衰退している業界というのも存在します。

そうした衰退産業では、これまで通りの熱量で仕事をしていたとしても、成果が上がりません。毎年、売上がジリジリと下がっていくのです。

そして、そのような衰退しているビジネスに、新たな人材を雇ってまで参入しようとする会社はありません。ゆえに、ここで働いた経験では、自分のマーケットバリューを高められないのです。

自分のいる業界が衰退業界であるかどうかは、同業他社の動向を見てみると、わかります。自社だけでなく、競合を含めた全体が利益を落としているのは、マーケットが縮小している証です。新たな市場を作り出すこともできず、飽和している市場の中でもがき、競合と値下げ合戦を繰り返して衰退していくのです。

残念ながら、衰退している産業で働いた経験の価値は非常に低く、無効化してしまいます。

今まさに伸びている業界に身を置くことは、究極的には、ただそれだけで価値があります。会社選びも大切ですが、自分のマーケットバリューを高めるためには、業界選びが重要なのです。

「やりたいこと」はなくてもいい

人には、2種類のタイプがあります。

「何をするか」に重きをおくto do型の人と、「どんな人でありたいか、どんな状態でありたいか」を重視するbeing型の人です。この2つのタイプは、仕事に対する意識も異なります。

to do型の人は、「世の中に変革を起こす」「会社を大きくする」などと、仕事の楽しみをto do(コト)で語ります。

being型の人は、「尊敬できる人のもとで働く」「プライベートも充実させる」「周囲の人に喜んでもらう」などと、being(状態)を重視します。

「何をするか」にこだわるto do型の人は、明確な夢や目標を持ち、やりたいことを見つけて突進していきます。たとえば、「心からやりたいことを見つけろ」とか「無理だと思ってもチャレンジしろ」といった成功哲学を発信している人の多くがto do型の人です。

では、being型の人も、to do型をめざせばよいのでしょうか?

答えはNO。めざす必要もなければ、「やりたいこと」も持たなくていいのです。

実際のところ、働く人たちの99%はbeing型です。そして、being型にとっての幸せは、to do型のそれとは異なります。ですから、「心からやりたいことを見つけなければいけない」という幻想にとらわれる必要はありません。

being型の人が日々の仕事に価値を見いだせるかどうかは、次の2つの条件のクリアが鍵となります。

条件1:マーケットバリューを高めること
条件2:自分を信頼すること

1つめのマーケットバリューの高め方については先ほど説明しました。2つめは自分への信頼です。being型の人は、仕事をしていく中で、自分に対して小さな嘘をついてしまいがちです。たとえば、内心、価値があるとは思えないものを売ったり、賛同できない周囲の意見に流されたり。これらはすべて、自分に対する嘘です。嘘をゼロにすることは無理かもしれませんが、小さくしていくことは可能です。自分を信頼できるようになると、仕事の手応えに変化の兆しが見えてきます。

<第3回に続く>