転職の成否を左右する「再現性」を見つけるポイント/マンガ 転職の思考法

ビジネス

公開日:2021/9/15

大事なのは転職よりも「転職できる」というカード

誤解して欲しくないのですが、本書は「何がなんでも転職すべき」と言っているわけではありません。大事なのは、転職自体ではなく、「転職できる」というカードを持つことだからです。

転職を考えてみた結果、「いつでも転職できるけど、あえて今の会社にとどまる」と決断する人もいます。今の会社で、胸の内ポケットにカードを隠し持つのです。

たとえば、お店に行って何かモノを買おうとするときに、商品の選択肢が1つしかなかったら―。ちょっとつまらないですよね。買い物は、「どれでも好きな商品を選べる」という権利を持っているから楽しくなるのです。

それと同じで、「この会社でしか生きていけない……」と思っていると、仕事に対して「やらされてる感」を持つでしょう。

逆に、「いつでも転職できるけど、今はこの会社で働こう」と思って仕事に向き合っていると、仕事に自発的に取り組めます。自分で選んだ仕事ですから、やりがいも感じられ、次はこうしよう、ああしようというアイデアも生まれるでしょう。上司の理不尽な仕打ちにも、はっきり「NO」と言えます。

同じ社内で働いていても、両者の仕事に向き合う姿勢は、まったく異なってくるのです。

転職を考えることは、外の世界を知ることです。そして、自分の市場価値を知ることでもあります。

もし、今の仕事にやりがいを感じられず、会社を辞めようかどうしようかと考えている人は、まず、外の世界に向けてアクションしてみてください。

たとえば、自分の会社にはいない職種の人、聞いたことのないような小さな会社で楽しそうに働いている人、そんな人たちの話を聞きに行くのもいいですね。転職エージェントに会って話をするのもいいでしょう。副業にチャレンジする、副業が禁止ならボランティアに参加するのもいいと思います。

会社の中にいて、半径5メートル以内の生活をしていると、自分のことはわかりません。外の世界を知ることによって、自分のことが相対化されて見えてくるはずです。

自分自身の棚卸しのやり方①
過去やってきたことを書き出す

自分の棚卸しをする目的は、自分自身を発見することです。

・自分はどんなことをしてきたのか?
・自分は何ができるのか?
・自分は何が得意で、何を好むのか?

こんなふうに自分に問いかけて、書き出してみてください。

たとえば、履歴書に「総務部人事課 ○年勤務」という経歴が書いてあっても、実際のところ、その人のことがよくわかりません。そこで具体的に何をやってきたのかを書き出して、これまでの自分を見つめ直してみましょう。

もしかすると、自分でも「私=総務の人」などと思い込んでしまっているかもしれませんが、それは非常にもったいないことです。

「自分はたいしたことをしてこなかった」と思っていても、案外、多様な経験を積んでいるものです。

棚卸しでわかったことは、転職活動で活用できるのはもちろん、たとえ転職しなくても、今の仕事で役立てられます。

「自分は、こういう仕事が得意だったのか。じゃあ、今の仕事もこういうふうに進めてみたら効率的に進められるかも」

「この経験があるから、今度の新しいプロジェクトに手を挙げてみようかな」

自分の強みを知れば、こんなふうに戦略を立てることも可能です。自分を知ることは、自分のキャリアを考える上で大切なことなのです。

棚卸しで書き出す内容は、社会人になってから「自分がしてきた仕事の目的と中身」「どういう成果をおさめたのか」です。これらを時系列で具体的に書き出していきましょう。そこまでは難しいというのであれば、まず、この1、2年について詳しく書き出してみてください。

なかなか思い出せないという人は、自分のパソコンの中に保存されているフォルダやドキュメント類、メールの履歴などを探ってみましょう。「この時期こうだったな」「こんなことで苦労していたな」などと、細かいことを思い出す手がかりになるはずです。

自分自身の棚卸しのやり方②
再現性を見つける

これまでの自分の仕事を書き出せたら、次は、そこから再現性を見つけます。

転職では、志望している業務にふさわしい再現性を提示できるかどうかが、採用の成否を左右します。

採用する側の企業の多くは、応募者のことを「この人は、うちの会社で成果を出せるだろうか」という目で見ています。つまり、これまでやってきた実績や業務の内容から、自社に来ても同じように活躍できるか(再現できるか)、あるいは、さらなる成長を見せてくれるかどうかを知りたいと思っているのです。

そこで、企業が欲しい再現性の情報を、こちらで事前に準備しておきます。

【再現性を見つけるときのポイント】
客観的な事実(=数字)で語られているか
それがうまくいった理由が、その人のどういう頑張りなのか

なぜ、再現性で数値が重要なのかというと、数字があると、相手(面接官や履歴書の読み手)とイメージが共有しやすく、話の内容の説得力が増すからです。

たとえば、「法務を担当している」と言っても、契約金が10万円の案件を扱っているのか1億円の案件なのか。年間で何件扱っているのか。国内だけなのか、海外とも取引しているのか―。仕事のスケールがまったく違いますよね。

総務や人事など、事務系の業務でも、さまざまな実績を数値で表せます。たとえば、「8人のチームで5カ月かけて部内の業務改善に取り組み、業務プロセスが5%改善した」「経費精算のシステムを改善し、帳票を700枚から500枚に削減した」「50名の新人教育の内容を策定している」「月に2000件の請求書を発行しているが5年間ミスがない」。棚卸しで出てきた経験を数値を使って表してみましょう。

また、再現性には、こんなメリットもあります。

実は、採用活動には、運・不運がつきものです。たとえば、その日に限って面接官のやる気がなかったとか、スキルが未熟とか。残念ながら、こちらがコントロールできない状況も起こり得ます。調子が悪い相手の都合に運命を委ねるのはイヤですよね。けれども、再現性を明示できれば、相手の理解力が少々鈍っていても安心です。特に、数値を用いた再現性は、伝えたいことがダイレクトに伝わります。

<第4回に続く>