徳島県にはゴミステーションに隣接するホテルがある! 明日誰かに話したくなる「全国各地のゴミ事情」

暮らし

公開日:2021/9/4

日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話
『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』(滝沢秀一/主婦の友社)

 最近、遠方で暮らす友人と久しぶりに会った時、彼女の体に染みついたペットボトルの捨て方が自分とは違いすぎて驚いた。同じ日本に住んでいるのに、地域によって求められる分別法がこんなにも違うなんて…。

 そんな衝撃を受けると共に、自分が暮らしている自治体以外のゴミ事情をこれまで気にしてこなかったことに初めて気づき、何とも言えない気持ちになった。『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』(滝沢秀一/主婦の友社)に出会ったのは、そんな時だ。

 著者の滝沢さんはお笑いコンビ「マシンガンズ」として活躍する傍ら、ゴミ清掃員としても奮闘中。2012年にゴミ収集会社に就職して以来、ゴミ収集中の経験をしたためたエッセイを多数手がける。ユーモアを入れ込みながら清掃員の苦悩を綴り、ゴミを分別することや減らすことの大切さを訴えかけてきた。

 本書では日本全国32の自治体と9つの企業が行っているゴミにまつわるユニークな取り組みを紹介。環境に関する話は堅苦しくなりがちだが、滝沢さんは笑いを交え、分かりやすく最新のゴミ事情を教えてくれる。

advertisement

お金にもなる! あっと驚く生ゴミの処理法

 数あるゴミの中でも、生ゴミの処理には特に悩まされる。自宅で処理して資源にしようと思っても、大掛かりな装置が必要な気がして二の足を踏んでしまう。

 ところが、埼玉県ふじみ野市には生ゴミを消しさる魔法のようなお手軽アイテムが! それが、「ベランダdeキエーロ」。これは、初期費用以外お金がかからないコンポスト(生ゴミを堆肥化させる容器)。黒土の中にすむ無数のバクテリアが生ゴミを分解してくれるのだ。

 しかも、バクテリアが生きていくためには水が必要であるため、生ゴミの水切りは不要。使用後の油を入れることができる点も嬉しい。

 卵の殻やアサリの貝殻、肉の骨などは分解に時間がかかるそうだが、そうしたものだけを可燃ゴミとして捨てるようにするだけでもゴミの量はかなり変わる。ベランダdeキエーロは現在、ふじみ野市だけでなく他の自治体でも推奨されている、一歩先行く生ゴミ処理法なのだ。

 また、香川県・三豊市には生ゴミをお金に変える魔法の方法がある。2017年より導入された「トンネルコンポスト方式」だ。これは、生ゴミなどの可燃ゴミを「バイオトンネル」という密閉発酵槽に堆積させ、微生物が最も活発になる環境を作り、その際に出る熱と通気を利用して「乾燥処理」を行うというもの。可燃ゴミを燃やさない・排水しない・臭いが出ないという点が新しい。

 三豊市では年間1万トンの廃棄物を4500トンの石炭代替品の固形燃料に変換。それを売り、収入を得ているという。

 各自治体の努力を知ると、生ゴミにはまだまだ無限の可能性があるように思えてくる。どんな衝撃的な処理法が誕生するのか、今後も目が離せない。

徳島県・上勝町にはゴミステーションの敷地内に「ホテル」が!

 焼却施設は作る時に莫大な予算がかかるが、作った後にも修繕費やメンテナンス費などが必要。お金がかかるため、過疎化などの問題を抱えている地方自治体は頭を抱えてしまうことも。

 では、予算が少ない地方自治体はどうすればいいのか。その問いに、斬新な答えを出したのが徳島県にある上勝町だ。

 実は上勝町、全国で最も早く、無駄や浪費をなくしてゴミを出さない「ゼロ・ウェイスト宣言」をした町。上勝町には集積場がなく、町民たちはゴミを45種類に分別し、町内にあるゴミステーション「ゼロ・ウェイストセンター」に持っていく。

 そこで町民たちは協力し、リサイクル。日本全国のリサイクル率は19.9%であるが、上勝町は驚異の81%。町民たちの意識の高さがうかがえる。

 上勝町の凄さは、それだけではない。リサイクル数が話題となり、世界中から視察がくるようになったため、なんとゴミステーションの敷地内にホテルを建設。

 ホテルには上勝町で伐採された杉材や不要になった建具・家具などが使われており、宿泊客はゴミの45分別を体験できる。上勝町は自分たちの取り組みを広い層に深く知ってもらうことで、社会全体を変えていこうとしているのだ。

 日本の最終処分場は今、全国平均21.4年で満杯になると言われているほど危機的な状況。しかし、ゴミを資源だと捉える人や自治体が増えていけば、絶望的な未来は変えられる。

“捨てれば何でもゴミになるけど、言葉を変えれば捨てなければ何でも資源になる。言葉だけじゃない、本当に資源になるんだ。”

 滝沢さんのこの熱い言葉を目にすると、自分にできることを考えてみたくなる。ぜひ本書との出会いを期に、物を捨てる前に一度思いとどまれる自分になってみてほしい。

文=古川諭香