YOASOBI以外にも!adieu(上白石萌歌)、羊文学…コラボで誕生したmonogatary.comの名曲、名作とは?

文芸・カルチャー

公開日:2021/9/6

 2020年12月31日、「第71回NHK紅白歌合戦」に出場し、小説『夜に駆ける』(星野舞夜)を原作としたデビュー曲「夜に駆ける」のパフォーマンスで話題をさらった2人組ユニット「YOASOBI」。“小説を音楽にする”彼らは、運営より毎日出される「お題」に対して自由に「物語」を投稿でき、その投稿に対して挿絵やコメントをつけるなど、いろいろなリアクションをして遊べるストーリーエンタテインメントプラットフォーム「monogatary.com」のプロジェクトから誕生したユニットだ。

 monogatary.com の特色は、なんといっても、投稿した「物語」が音楽や映像などに形を変えて、自由で壮大に展開しうるという点だろう。monogatary.comのプロジェクトからは、YOASOBI以外にも、さまざまなコラボレーションの結果、たくさんの名曲、名作が誕生していることをご存じだろうか?

 たとえば、2021年1月に開催された「羊文学賞」は、monogatary.comでは初の試みとして、“純文学”を募集したコンテストだ。このコンテストは、ユーザーが3ピースオルタナティブロックバンド「羊文学」の楽曲「おまじない」を視聴し、そこから着想した物語を自由に投稿するというもの。思春期のひりつきのようにナイーヴな気分の歌詞を、メロウなサウンドで歌い上げる楽曲は、ある言葉をきっかけに「自分」という存在を発見する小説『この溝について』(脆衣はがね)などの作品となり、本作を含む3作品に賞が贈られた。受賞作は講談社から電子書籍化される予定だ。

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 また、「【Omoinotake】告白」というお題のコラボ企画では、ユーザーがピアノ・トリオバンド「Omoinotake」の新曲デモを聴いて生みだした、「告白」をテーマとするあらゆる形式の物語が募集された。大賞受賞作品『袖振り合うは、下北沢 – 小田急小田原線にて』(葉一朗)は、Omoinotakeの手で「プリクエル」というタイトルの歌詞へと姿を変え、MV化まで果たしている。はやる鼓動を感じる楽曲、告白に至る胸の高鳴りを綴った小説、シンプルな決意が伝わるMVが、一体となって楽しめるコラボレート作品となっている。

 さらに、楽曲をもとに紡ぎだされた物語も紹介しよう。

 モノコン2020「いきものがかり賞」では、楽曲「きらきらにひかる」の世界観をテーマにした小説が募集された。SFテイストの受賞作『星屑の子』(杏仁五月)は、『全裸監督』などで知られる内田英治監督により映像化、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル& アジア2021」のオープニング作品として、グローバルに配信された。

「【adieu】よるのあとのあと」というお題で作品を募ったのは、そばにいるのに孤独な夜と決意を描いたadieu(上白石萌歌)の楽曲「よるのあと」のMVや歌詞から、そのアフターストーリーを考えだすというコラボ企画。大賞を受賞した『ハレーション・ホロウ』(朝野鳩)からは、別れの朝を経たキャラクターの哀しみと、再起の予感が読み取れる。昨日、大賞受賞作の物語をベースにし、adieu「よるのあと」のその後を映しだす“アフターMV”が公開された。

 また、西野カナとのコラボ企画では、ユーザーが楽曲「恋する気持ち」やそのMVから連想した“片想い”の物語が投稿された。受賞作『勇気の行方』(ともかさこころ)は、幼馴染に対するフレッシュで甘酸っぱい想いを綴った、爽やかな作品だ。これを原案として、漫画家・ごめんの協力を得て、「恋する気持ち」の漫画MVが制作される。

 今年4度目の実施となるmonogatary.com主催のコンテスト「モノコン」は、受賞した物語が音楽やコミックや映像など、別の才能と結びつき、新たなコンテンツに花開く極めて特異な試みである。今年は従来の【物語部門】に加えて、プロデビューも目指せる【モノカキ部門】、団体戦ならではの化学変化が期待される【チーム戦部門】が新設された。これまで「物語」を起点にして、さまざまな才能と才能を結びつけてきたmonogatary.comのコンセプトを余すことなく注ぎ込まれた部門制になっていると言える。

 monogatary.comというプラットフォームから次はどんなヒットコンテンツが、いったいどんな形態で産み出されるのか、目が離せない。そして、それはもしかしたら、あなたの頭の中に今はまだ眠っている「物語」かもしれない。だから、ぜひ気軽に投稿を。

文=三田ゆき