楽しい“蝕ランド”ついに出現!カラー原画300点以上「大ベルセルク展~三浦建太郎 画業32年の軌跡~」の全貌
更新日:2021/9/13
1989年の連載開始から32年、ついに『ベルセルク』の世界を体感できる「大ベルセルク展~三浦建太郎 画業32年の軌跡~」が東京・池袋のサンシャインシティでスタートした。これまで『ベルセルク』に関する展示などは白泉社の関連イベントのみで、作家や作品単独での開催はなく、原画を目にする機会は編集者をはじめごく一部の限られた人にだけ許されたものであった。また原作者の三浦建太郎先生もメディアへの出演やインタビューを受けることがほとんどなかったため、肉声を聞く機会もほぼなかった。
それが今回、連載開始から32年にわたる画業を振り返るというコンセプトで開催が決定、企画の段階から三浦先生も関わり、開催を楽しみにされていたという(惜しくも三浦先生は2021年5月6日に逝去されました)。本展は300点を超える原画(カラー原画やモノクロ原稿)を中心に、作品世界を模したジオラマ、フィギュアや武具のレプリカといった立体物など、見る者を圧倒するボリュームで展開される。
会場へ入ると、最初に三浦先生からのコメントが掲出されている。
三浦先生の言葉にグッと胸が熱くなったところで、次に目に入ってくるのは巨大な「ドラゴンころし」だ。ここからは主要キャラクターたちが名場面と名ゼリフとともに紹介される。
その後は「年代記」が続いていく。順にストーリーを追い、名場面の原画がこれでもかと目白押しで、じっくり見入ってしまうこと間違いなしだ(『ベルセルク』単行本をお持ちの方は、全巻読み返しておくことをお勧めしたい)。本で見た絵がどれほど緻密、かつ大胆な筆致で描かれているのかを自分の目で確かめると、三浦先生によって引かれた一本一本の線に心がゾワゾワすることだろう。印刷では潰れてしまってよく見えない部分まで丁寧に描き込まれ、さらにその上から全面にスクリーントーンを貼って絵全体に影を落とすというテクニックなども駆使されているので、一枚一枚じっくりと鑑賞してもらいたい。最後のパートでは作画がアナログからデジタルへと移行するので、絵の仕上がりの違いも見比べられる(本展に掲出された原画は、物販スペースで販売される公式イラストレーションブック『THE ARTWORK OF BERSERK』に多数掲載されている)。
そして会場内には平沢進さんによる『ベルセルク』の音楽が流れているのもたまらない。
降魔の儀である「蝕」の世界を再現したジオラマと、最後の三浦先生の画業を振り返るコーナーにも注目したい。「蝕」のジオラマは受肉するグリフィスやボイド、スラン、ユービック、コンラッドらゴッドハンドたちのフィギュア、そして苦痛に歪む顔が壁面にたくさん並び、おどろおどろしい音楽と照明で再現されているので、あまり長居はしたくないかもしれない……。
画業を振り返るコーナーには高校時代の同級生で盟友の森恒二先生や技来静也先生、影響を公言されていた『北斗の拳』原作者の武論尊先生と作画を担当した原哲夫先生、アニメ版の音楽を担当した平沢進さん、声優の岩永洋昭さんや行成とあさんなどのサインがズラリと並んでいる。
さらにここでの見どころは、三浦先生が作画する際に実際に座っていたデスクだ(寝食を忘れ、長時間机に向かって作画に没頭されていたという)。机上にはWacom製の液晶ペンタブレットが置かれている。そしてダ・ヴィンチニュース的には、やはり三浦先生の蔵書に目が行く。
特撮技術の歴史を作ったアメリカの映画監督レイ・ハリーハウゼンの『An Animated Life』、現代美術に大きな影響を与えたドイツの写真家ベルント・ベッヒャーとヒラ・ベッヒャー夫妻(※)の写真集『Industrial Landscapes』、人体構造の仕組みを解説する『やさしい美術解剖図』(J.シェパード/マール社)、栗本薫先生を敬愛していた三浦先生らしいグイン・サーガ外伝『黄金の盾』(円城寺忍/早川書房)、大友克洋先生の画集『GENGA OTOMO KATSUHIRO ORIGINAL PICTURES』(パイインターナショナル)、松本零士先生のメカ設定画を網羅した『零次元機械紀行』(松本零士、板橋克己/小学館)、さらには薬用植物などに関する本や『聖刻大全』(伸童社)、アレイスター・クロウリーの『魔術―理論と実践』(国書刊行会)などなど、さらには資料用のイラストや切り抜きもあり、『ベルセルク』の世界がどう構築されたのかを想像できるような展示だ。また以前三浦先生を取材した際、「『スター・ウォーズ』のキャラを日本武者バージョンに変えたフィギュアがあるじゃないですか。そのダース・ベイダーやトルーパーなどをアイアンマンと一緒に飾ってますよ」とおっしゃっていたフィギュアもデスクに飾られているので、こちらもお見逃しなく。
そしてここではインタビューを受ける、在りし日の三浦先生の姿を動画で見ることもできる。本展と『ベルセルク』のこと、作画についての貴重なお話をされているので、どうぞお聞き漏らしのないよう。最後は来場者がメッセージを寄せられるコーナーもあるので、ぜひ天国の三浦先生へ届く言葉を書き込みたい。物販スペースにはベルセルクの世界を堪能できる様々なグッズが。お財布と相談しながらお気に入りのものを手に入れられたし。
最後に、三浦先生が動画で80年代の漫画について熱く語っていらしたのを受けて、ダ・ヴィンチニュースで『スター・ウォーズ』についてのインタビューでお話しされていたことを――
「80年代って、一個のアイデアで全部が勝ちになる、オセロのように変わる作品がたくさんあったんですよ。『聖闘士星矢』は“クロス”、『超時空要塞マクロス』は“バルキリー”、『北斗の拳』は“北斗神拳で突いたら人体が爆発する”というようなね。これを考えられたら、勝ちなんです。『スター・ウォーズ』の“ライトセーバー”もそうですよね。ひとつのアイデアで、全部がパタパタパタっと決まっていく。『ベルセルク』もそうやって、ライトセーバーとまではいかなくても、これ一個で回せるすごいアイデアっていうのがなきゃダメなんだっていうんで、一生懸命考えた挙句、ちょうどあのサイズの剣になったんですよ。そうやって考える方も作る方も、80年代に『スター・ウォーズ』に影響されてた頃のような志が戻ってくると、もうちょっと活性化するような気がするんですけどね。ちょっとしたことなんだけど、難しいんですよねぇ」
これほどの規模で原画などが見られる機会は、おそらくそうないだろう。東京の会期は2週間。迷っている暇はない。ガッツたちの勇姿、そして三浦先生の熱いスピリットを感じるため、サンシャインへ急げ!
取材・文=成田全(ナリタタモツ)撮影=内海裕之
(※)ベッヒャー夫妻の薫陶を受けたのが、現代美術の分野で活躍する写真家のアンドレアス・グルスキー、カンディダ・ヘーファー、トーマス・ルフ、トーマス・シュトゥルートで、彼らは「ベッヒャー派」と呼ばれている。
大ベルセルク展~三浦建太郎 画業32年の軌跡~
会期 2021年9月10日(金)~23日(木・祝)
営業時間 入場10時~19時/閉場20時(最終日のみ:最終入場16時/閉場17時)
会場 池袋・サンシャインシティ 展示ホールA(170-8630 東京都豊島区東池袋3-1-3 サンシャインシティ ワールドインポートマートビル 4F)
主催 「大ベルセルク展」実行委員会
協力 WOWOW、フィールズ
展示協力 株式会社謙信(ART OF WAR)、株式会社プライム1スタジオ、株式会社マックスファクトリー
チケット(混雑緩和のため一部入場時間指定制)
一般 前売:1800円 当日:2000円(小学生以下無料)
記念グッズA(ART OF WAR製作 本展記念ベヘリット ペンダント)付き 前売:5000円 当日:5200円
記念グッズB(ドラゴンころし ピンバッジ)付き 前売:2500円 当日:2700円
音声ガイド 700円
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「大ベルセルク展~三浦建太郎 画業32年の軌跡~」大阪巡回決定!