先輩の言うことは絶対、陰口はダダ漏れ……厳しい職場環境をサバイブする方法『女社会の歩き方』

マンガ

更新日:2021/9/13

女社会の歩き方
『女社会の歩き方』(ぼのこ/KADOKAWA)

 組織で働いたことがある人ならば、誰もが職場の人間関係に多少なりとも悩んだことがあるのではないだろうか。中には、人間関係に追い詰められ、休職や退職に至ったりしたケースも少なくないはずだ。『女社会の歩き方』(ぼのこ/KADOKAWA)は、女ばかりでちょっと難ありな職場に配属された主人公が、周りを巻き込みながら成長していく物語。女社会だけでなく、組織やチームは地道な積み重ねで変えられるという気付きと勇気をくれるコミックエッセイだ。

 著者は、ベビー・子ども服のショップ店員として7年間働き、店長も経験したというぼのこ。会社を退職してからは、ブログやSNSで、自らの体験をもとに働き方や生き方について発信している人物だ。

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 アパレルで働くぼのこは、派閥争いや、新人や異動してきたスタッフへの当たりが厳しく、退職者が多い店舗として知られるB店に配属される。配属初日の挨拶から、店長やベテラン社員は冷たい態度。店内には社歴に応じたヒエラルキーが確立され、過剰な上下関係による非効率や、お店や顧客のためであっても、他のスタッフとは違うことをしてはいけないという謎ルールが存在している。売上は個人名で計上されるため、誰の売上になるのか、私の売上をあの人が取ったなどと、し烈な売上争いが繰り広げられている。スタッフ同士でつるんで陰口を言っていたかと思えば、別の場所でその陰口をバラされる。先輩からは、「下っ端のくせに!」と、理不尽なパワハラまがいの罵声を浴びせられる。

女社会の歩き方

女社会の歩き方

 嫉妬などのどす黒い感情や、誰かを仲間外れにして優位に立とうとするマウンティングは、女社会に限らずどこにでも存在する。自分も似たような意地悪な感情を抱いたことがあるという人も多いだろう。そういう体験が一度でもある読者は、穏やかそうなイメージもあるベビー・子ども服アパレルの女社会の醜いありさまに、身を締め付けられるような気持ちになるかもしれない。

 ぼのこはそんな職場環境のストレスから、通勤中に激しい頭痛に襲われたり、涙が止まらなくなったりと、精神に支障をきたしていく。上司に相談するも、取り合ってもらえないどころか、飲み会でネタにされる始末。心を許していたはずの同僚にも売上を妨害され、ぼのこは、店長まで上り詰めて職場環境を変えてやると、一念発起する。

女社会の歩き方

女社会の歩き方

 勇気を出して声を上げても受け入れられなかったり、周りが動いてくれなかったりと、ぼのこの前には何度も壁が立ちふさがる。それでもあきらめず、すべてを前向きに受け止めて進んでいくぼのこは頼もしい。ただがむしゃらに頑張るのではなく、無理だと言われても違う道筋でチャレンジしたり、どうすれば上司が動いてくれるか考えたりと、深い思慮による根拠を持って進んでいく彼女の姿は聡明にも映る。店長を目指す中でお店全体を見まわすうちに、「仕事の対する熱量は人それぞれ」「相手への苦手意識は相手にも伝わる」「誰もが自分だけの強みを持っているのに、発揮できる環境が整っていない」といった、人間関係や、人を育てることに関わる気付きを得ていく。

女社会の歩き方

 人間関係をうまくやるこれらのヒント以外にも、年長者に指示を出すことに抵抗があったぼのこが考えた先輩を立てながら動かしていくアプローチや、新人の活力から学ぶ姿勢など、組織で生きる上で大切な知恵がたくさん詰まっている。ただの怖い女社会あるあるエッセイだと、あなどることなかれ。厳しい女社会で身を削った著者による渾身のルポタージュは、今日も人間関係に悩むすべての人を元気づけてくれるだろう。

文=川辺美希