お母さんの食事作りのストレスを減らしたいーーアスリートの夫を食で支える本田朋子が提案「迷わず、栄養が整う献立作り」
公開日:2021/9/16
料理の腕とアスリートフードマイスターの資格を活かして、プロバスケットボール選手の夫・五十嵐圭氏を食事でサポートしているフリーアナウンサーの本田朋子さん。週末の試合に向けて夫のコンディションを整えつつ、本田さん自身も無理なく食事作りを続けるために、1週間をサイクル化した食べ方を考案したといいます。そんな献立作りのポイントと、本田さんの定番レシピを紹介する初の書籍『栄養満点の献立が迷わずに決まる! 本田朋子のweekly献立』が発売。本田さんに、レシピ本でこだわったポイントや、体調に悩まされている人へのメッセージまで、幅広く話を聞きました。
(取材・文=川辺美希)
ハードな毎日の献立作りはルーティーンを決めれば楽になる
――1週間というサイクルで献立を作る考え方は、どのように身につけていったんですか?
本田:結婚してすぐアスリードフードマイスターの資格をとって、主人をサポートするために食事作りをしてきたんですけど、食事は毎日作るものだから、自分のルーティーンを決めないと、すごく大変だったんです。毎日スーパーで食材を買って食事作りをしていても、今週はお魚を食べてなかったとか、豚肉多かったなとか、偏りが出てしまって。資格を取ってそのロジックはわかっていたんですけど、生活の中で食事のサポートを繰り返す中で、自分の形が見えていなかったんですね。2年くらい試行錯誤を重ねてようやく、週末の試合に向けてバランスよく食べていくためには、主菜の食材を曜日で決めてしまえばいいと思ったんです。そうすれば買い物も楽だし、メニューも決まりやすい。栄養も1週間を通して整うということに気付いて、曜日ごとの食材を決めるルーティーンを始めました。
――献立作りのノウハウをレシピ本として出版しようと思われたきっかけは何だったんでしょうか。
本田:周りの主婦仲間と話していると、毎日買い物には行くんだけれども、どういう組み合わせで何を作ったらいいか、毎日迷っている方が多くて。世のお忙しいお母さんたちはみんなそうだと実感して、曜日で主菜の食材を決めれば楽だし、栄養が整いますよ、と提案したいと思ったんです。食事って、作るだけではなくて何を作るか考えるところから始まっているので、そこも含めて時短になるんですよね。
――献立全体で5色の色を入れるというアイデアはどう生まれたんですか?
本田:この本では、曜日で主菜の食材を決める+5色の色で副菜も揃えるという提案をしているんですけど、5色というぱっと見てわかる基準で献立を決めたほうがあまり考えなくて済むし、栄養バランスも整うんです。それを発見したときに、「これはすごいことに気付いた!」と思って。献立を決めるって、主婦にとってけっこうなストレスなんですよね。朝起きて朝ご飯を作って、食べてるときにはもう「夕飯、何にしようかな」って考えなければいけないぐらい、いつも献立に追われていて。ただでさえ大変なのにさらに栄養バランスを整えるなんて、そこまで頭が回らないと思うんです。だから、理詰めで考えるんじゃなくて、5色でチェックするという、目で分かる献立作りをおすすめしたいですね。
会社員時代は、偏った食事で肌もボロボロ…バランスよく食べるようになって、体が変わった
――五十嵐選手は食事作りで本田さんのサポートを受けられるようになってから、体調に変化はありましたか?
本田:大きな怪我をしにくくなったとは言ってくれています。独身時代は、オフのときは開放的になって、食べたいものを食べたいだけ食べることもあったらしいんですけど、日々の食生活が整うことで体重の増減の幅が狭くなって、調整もしやすくなったと言ってもらえました。1週間の食材の流れを習慣化することで、主人が遠征に行ったときでも、食べるものを決めやすくなったようです。
――アスリートではなくても、忙しかったり独り暮らしだったりすると、食ってサボりがちですよね。本田さんからご覧になって、人にとって「食べること」とはどんな意義があると思っていますか?
本田:食べることは、自分の細胞を作っていくことです。すぐには効果が出ないから後回しにしがちなんですけど、バランスのよい食事をとることによって、髪の毛や肌、内臓が生まれ変わっていくんです。食事を変えたら、1ヵ月後とか半年後、1年後の自分は必ず変わってくるものなので。私自身、炭水化物と脂に偏った食生活をしていた会社員時代は、肌もボロボロで、気持ちも落ちやすかったし、風邪もひきやすかったんですよね。退社して自分でバランスのいい食事を作るようになってから、肌荒れもほとんどしなくなりました。自分の体でも感じていることなので、日々の食生活や栄養バランスは大切にしてほしいなと思いますね。
――今回のレシピ本は、主菜から副菜、サラダに汁物、残った食材で作るリメイクご飯まで、たくさんの料理が載っていますが、掲載するレシピはどう選んだんですか?
本田:本当に私の等身大のレシピなので、簡単すぎてレシピと呼べないようなものも載せてしまっているんですけど(笑)。一番は、あまり手が込んでいない、簡単に作れる日々のお料理をベースにしています。こういう提案をしている自分でさえも、主菜と副菜2品、サラダ、汁物を作るのってけっこう大変だなと思うこともあるので、簡単さや、食材を余らせない実用性も大事にしました。材料からの逆引きもできるようにインデックスもつけています。副菜のページは色で分類して視覚的にわかりやすくして、スーパーで買い物をしているときに、「白の食材はあのレシピがあったな」ってぱっと思い出せるようなデザインにしました。ずっとキッチンのそばに置いて、長く愛用していただけるような1冊にしたかったので、実用性にはこだわりましたね。
――確かに、調理法も焼くやレンチンとか簡単なものがメインですし、材料も使い回しがきくものばかりで実用的ですよね。食材や調理法以外でこだわったところはありますか?
本田:食卓を見た瞬間に、「わぁ、おいしそう! 食べたいな」って思う彩りや盛り付けも大事にしています。アスリートだからって揚げ物は絶対NG、にはしていなくて。「おいしい」とか「食べたい」って思う心の栄養も大事にしているので、家族のモチベーションや気持ちを上げられるようなメニューもたくさん載せています。
――ランチョンマット使いも工夫されているそうですね。
本田:そうですね。同じサイズで色違いのランチョンマットをいくつか持っているんですけど、ランチョンマットを使うと、「今日は1品少なかったな」など品数がわかりますし、ランチョンマットの使い方で、食事の雰囲気をガラッと変えることもできるんです。器とランチョンマットの色味のバランスで、前日の残り物でも雰囲気を変えて食卓に出すようにしていますね。人の気分とかモチベーションって視覚から来るものもあると思うので、その変化も楽しんでいます。
思いを伝え、大事な試合へ向かう気持ちを上げる勝負メシ
――初のレシピ本ですが、作る上で一番苦労したのはどんなことでしたか?
本田:食材の分量を量ってレシピにまとめることが一番大変でしたね。私はわりと感覚で料理をするタイプ。ほかの方の料理本やテレビでレシピを見ても、そのとおりに作るというより、これとこれを合わせればおいしいんだなとか、アイデアをいただいて自分の感覚で作るんです。逆に言うと、量るのがすごく苦手な性格で(笑)。だから、ニンジンを何センチとか、しょうゆを小さじ1杯とか、とにかく量るのが大変でしたね。
――いつも作っているお料理を、量りながら作り直していく感じだったんですか?
本田:そうです。時間が2倍、3倍くらいかかりました(笑)。だから私、お菓子作りがすごく苦手なんですよ。お菓子って、材料を厳密に図らないと膨らまなかったり、ボウルに少しでも水分がついてるときれいに泡立たなかったりするので、今までに何回も失敗していて。バレンタインデーは毎年、主人にとって恐怖だったみたいです。家に帰ってきたら、私が鬼のような形相でお菓子を作って、結局失敗して、ひとりでイライラして。だから、「バレンタインデーは何も作らないで」と言われてます(笑)。
――今まで食事が家族を救ったとか、五十嵐選手が大一番を乗り越えたというエピソードはありますか?
本田:うちでは試合前は牛肉と決めているんですけど、以前主人が所属していたチームが地区優勝を果たした年があって、それを決める試合前の勝負メシも牛肉だったんですね。そのときは奮発して、ヒレ肉のステーキを作って送り出しました。毎週、ヒレ肉のステーキを出せるわけじゃないですが(笑)。ここぞっていうときは、勝負メシを作るようにしていますね。
――毎日食べるものだから、その変化で、気持ちを上げたりもできるのが食事なんですね。
本田:そうですね。ヒレ肉のステーキを出せば、私の気持ちも主人に伝わるじゃないですか。それを食べて、主人もよしやるぞ!っていう気持ちになってくれていたらいいなと思っています。お料理で気持ちが伝わったり、発奮材料になったりすることがあると思うので、そういう意味でも、食べることは心にも体にも大事なことだと思いますね。
――コロナ禍で、疲れがとれなかったり、眠れなかったりと、不調を抱えている人も多いと思います。この本は、家庭での食事作りの助けにという目的があると思いますが、このような状況下で、読む人の生活にどういう影響や変化を与える1冊になってほしいと思いますか?
本田:体の中が健康であることと心が健康であること、この両面が揃ってないと幸福感はなかなか感じることができないと思うんですけど、このコロナ禍は、それが人間にとって一番大切だって感じるきっかけになりましたよね。毎日おいしく食べることは、心と体の健康をつかさどるものだと思います。だからこそ、作るほうもストレスなく、そして食べるみんなが笑顔になる、そんな食事作りのために、この本を通して少しでもサポートとご提案ができたら嬉しいですね。