SNSで大反響! 『毒親に育てられました』に学ぶ、“そこから自分を逃がす”方法
更新日:2021/9/16
暴言・暴力、過干渉などで子どもを支配する毒親は、近年、社会問題として大きな関心を呼んでいる。そんな毒親に育てられた子どもたちの一人、つつみさんのコミックエッセイが『毒親に育てられました』(KADOKAWA)だ。
つつみさんは母親からの干渉や虐待のトラウマから「うつ病」を発症してしまい、そのときに始めたのが、ノートに辛かったことや、思い出をつづることで心を軽くする「日記療法」。その流れで描いた漫画が本作で、Instagramで多くの反響を呼んだ。なお描いたことがセラピー的な効果になったのか「うつ病」は快方にむかったという。
単行本化された『毒親に育てられました 母から逃げて自分を取り戻すまで』も大きな話題となり、今やつつみさんのインスタのフォロワーは19.5万人(2021年9月1日時点)にも達している。
本稿では2021年6月に発売された2巻『毒親に育てられました2 多感な思春期に毒母と暮らして 自己肯定感ゼロの少女になりました』(KADOKAWA)を中心に紹介していく。読んで欲しいのは、つつみさんも作品内で言っている通り、まずは毒親に苦しんでいる、悩んでいる人。さらには毒親に育てられていない人たちにも本作を通して、このような状況で心に傷を負った人間がいると知ってほしい、機会があれば手を貸してあげてほしいと思う。
虐待され続けた子どもが、思春期に毒親から離れる一歩をようやく踏み出す
Instagramで発表していたショートコミックエッセイを描き直し、親子問題の専門家・親野智可等(おやの ちから)氏による「毒親の心理」の解説も収録した1巻の内容をまずはまとめていこう。
つつみさんが2歳のときに離婚し、シングルマザーとなった母親。子どもだったつつみさんを待ち受けていたのは、その母からの暴言、暴力、ネグレクトの数々だった。母との地獄のような日々を何とかサバイブしたつつみさんが、精神的に自立するまでを描く。読者が目を背けたくなるような虐待である一方、生々しいというよりは、かわいらしい絵で描かれており、それがまた静かに恐怖を引き立たせる。胸が痛くなるどころではなく、子を持つ身として親がなぜこんなことを言えるのか、実行できるのか理解ができず、ただただ悲しくなり、ぞっとした。
2巻『毒親に育てられました 多感な思春期に毒母と暮らして 自己肯定感ゼロの少女になりました』は、彼女が中学生から高校生、つまり思春期の母親との暮らしを、前巻よりも詳細に読むことができる。
中学生になっても母親からの暴言と暴力は続いていた。ある日、母はつつみさんの祖父から暴力を受けていたことを告白。「そういう育てられ方をされたから、私の育て方もこうなんだ」と開き直る……。
母親とのトラブルが学校に知られかかることもあった。しかしつつみさんは、幼いころから続いてきた今までの虐待により、精神的に支配されていた。そのため周囲に知られないために仮面をつけるようになる。“母と仲が良い娘”という仮面を。
つつみさんは高校生になった。そこで友達たちが、親に対しての不満を当たり前のように話すことに衝撃を受ける。ただ自分の状況は話せないでいた。
高校で唯一無二の親友となるA子さんに、つつみさんは勇気を振り絞って、母親についてうちあける。彼女はつつみさんに共感し、すべてを聞いてくれた。A子さんに「毒親」という言葉を教えてもらい「自分は悪くないのだ」とようやく思えるようになるのだった。
つつみさんは、母親と二人だけの世界を生きていた。中高生では、まだ自分の周りの狭い世界がすべてと思い込みがちだ。そこから飛び出すという発想すら持てないかもしれない。親は未成年にとって絶対的で、物理的に離れることは困難を極めるからだ。しかし、つつみさんは高校生になってようやく、新しい人生への一歩を踏み出せた。
毒親から逃げるため、毒親かどうか分からない、悩んだらそんなあなたがやるべきこと
親との関係に悩んでいるあなたが、本稿を読んで「つつみさんとまったく同じではないからウチは大丈夫かな……」と単純に考えたとしたら、それは少し危険だ。
つつみさんがブログで以下のように書いていた。辛さや気持ちの痛みの感じ方は人それぞれで、同じように「毒親」の悩みも千差万別。つつみさんは彼女自身が経験した毒親の漫画を描いているのだと。
ぜひ信頼できる第三者に勇気をもって相談してほしい。辛い人、悩んでいる人は「毒親」によって、精神的に支配され、コントロールされている自覚がない可能性があるからだ。
ブログ、Instagramで連載は続いている。一歩を踏み出したつつみさんのその先、今のささやかな幸せをつかむまでの話になるだろう続編にも期待したい。
文=古林恭