大人として恥ずかしいしぐさ、していない? 身振りからデキる人になる方法
更新日:2021/10/4
慎重な言葉選びや相手への気遣いをしているつもりでも、なぜかうまく人間関係が築けないと感じる人もいるのではないだろうか。それはもしかしたら、自分の「しぐさ」が原因かもしれない。そんなことを楽しい読書体験の中で気付かせてくれるのが、この『仕事のしぐさ図鑑 「デキる人」「残念な人」を決める50のポイント』(荒木シゲル/ダイヤモンド社)だ。
本書の著者は、イギリスを中心にパントマイム・アーティストとして活躍し、身体表現やコミュニケーションに関する講演・セミナーなども行う荒木シゲル氏。しぐさや表情による非言語コミュニケーションのスペシャリストだ。本書では、パントマイムで培った身体表現技術や、企業や学生に対するトレーニングの経験をベースに、しぐさで自分を魅力的に見せるテクニックを紹介。「デキる人」と「残念な人」のしぐさを対比しながら、そのノウハウを、髙栁浩太郎氏のイラストとともにユーモアたっぷりに伝えている。
たとえば、社外の人と接するときに貫録を感じさせるテクニックのひとつが、「グーとパーの選択肢を間違えない」だ。意気込みを示したいときは、グーにした両手を効果的に使うと良い。一方で、手をパーにして腕を伸ばすしぐさは、純粋に見えるがスマートではないため、許されるのは若者だけ。30歳を過ぎたら使わないように、というアドバイスには思わず笑ってしまった。
交渉で優位に立つためには、「ノー」と首を横に振った頭の角度で会話をすることで相手にプレッシャーを与えられるなど、上級者向けのノウハウもある。大きな手振りなどは恥ずかしくてできないと感じる人もいそうだが、「去り際は大名のようにゆっくり大股で歩く」、打ち合わせ中に使える「尖塔のポーズ=両手の指先部分を合わせて組む」など、取り入れやすいものもあり実践的だ。なかなか自分がいい感じに映らず困ってしまいがちなオンライン会議でのスマートなしぐさも、とても参考になる。
著者はまえがきで、「『振り』をすることこそが実は、意識を変えるきっかけとなる」と語っている。実際にデキる人のしぐさを真似してみると、心がどっしりと落ち着き、堂々としたキャラクターのような気分になれるから不思議だ。
手の甲をさすりながら話して悪徳商人風になっている人や、キーボード操作音が大きく壊れかけの家電のようにうるさい人など、残念なしぐさの例はどれも可笑しい。「こういう人、いるよね」というあるあるコラムとしても読めて単純に楽しいが、同時に、自分もやってしまっていることがあると気付いてハッとする。自分のちょっと恥ずかしい振る舞いを見直す意味でも、本書でチェックしたい。
個人的な感想を付け足すと、本書は人や組織の成熟度合いを測るバロメーターにもなりそうだ。周りが、この本で紹介されているような残念なしぐさをする上司や先輩ばかりだという人は、もしかしたら、自分のいる場所を考えなおしたほうがいいかもしれないと思った。
そのほか、「ついていきたい!と思わせる上司風」のしぐさや「かわいがられる部下風」のしぐさは、仕事だけではなく、私生活にも役立ちそうだ。いくつかのしぐさを意識して実践しているうちに、年長者や後輩としての理想的な行動が伴って、自然と周りに良い人が集まってくるかもしれない。余裕があってカッコいい大人になるために、まずは本書を手に取って、形から入ってみてはいかがだろうか。
文=川辺美希