声優業界のリアルがここに!?──オーディオブック『声優ラジオのウラオモテ』豊田萌絵インタビュー
更新日:2021/10/7
声優たちのオモテの顔とウラの顔が見える!? 第26回電撃小説大賞の大賞受賞のエンタメノベル『声優ラジオのウラオモテ』。シリーズ累計10万部を突破した、この人気作品がオーディオブックとして展開することになった。第1巻の朗読を担当しているのは声優の豊田萌絵。ラジオパーソナリティの仕事も多く経験し、ラジオのヘビーリスナーとしても知られる彼女に、『声優ラジオのウラオモテ』への想いを語ってもらった。
この作品には女子あるあると新人声優あるあるがたくさん詰まってる
――『声優ラジオのウラオモテ』がオーディオブック化されました。豊田さんはこれまでラジオ内でコラボをしたり、PVやTVCMに出演されたりと、この作品とはとても縁が深いと思います。あらためて、この作品の印象をお聞かせください。
豊田:自分の職業を題材にした作品だったので、他人事ではなかったです。世界中の誰よりも私が一番感情移入できたんじゃないかなって思います。読んでいて感情が揺さぶられてしまって、シンプルに泣いちゃいました。
――豊田さんが感情移入した登場人物はどなたでしたか。
豊田:由美子(歌種やすみ)です。私はPVで千佳(夕暮夕陽)を演じているんですけど(笑)。10代のころの私の気持ちに近いのが千佳だなって思ってました。
――豊田さんは10代のころから声優として活動をされていますが、当時は千佳に近かった?
豊田:千佳は頑固なんですよね。声優なのにアイドルみたいな活動をするのは違うんじゃないか、とか、ラジオのイベントでも作品を背負っていないとうまくふるまえないと考えていて。声優だから「こうあるべきだ」みたいな固定概念に縛られがちなんですよね。そういうところが、以前の私っぽいなって。
――豊田さんにもそんな過去が! 今の自分とは違いますか?
豊田:そうですね。千佳を見ていると「もう少しこうすれば、生きやすくなるのに」って思っちゃいます。今20代の私から見ると「10代だと、気づかないんだよね、わかるよ」と共感してしまいますね。
――先ほど、一番共感したのは由美子だとおっしゃっていましたが、20代の豊田さん自身は由美子に近い?
豊田:ある程度、この業界をやってきて、いろいろわかってきて、対応できるようになって、私も由美子みたいな考え方になれたと思うんです。だから、おもしろかったですよ。10代の私(千佳)と20代の私(由美子)の掛け合いみたいな感じがあって。
――今20代の豊田さんだから、由美子に共感したということですね。
豊田:由美子は「生きることが上手な子」で、千佳は「生きることが下手な子」だなって。千佳の言動を見ていると「なんでそういうこといっちゃうの!」と老婆心がわきましたね(笑)。「こうしたら生きるのが楽なのに!」と。でも、由美子も今はまだ高校生で、そう思うと、彼女は人生何周目なんだろうなって思っちゃいますよね。私がようやくわかってきたことを、まだ高校生の由美子がやっているので、尊敬していました。
――華やかな声優活動とその実情を描いている作品ですが、かなりリアリティはあるということでしょうか。
豊田:めちゃめちゃリアリティがあると思いました。 著者の二月 公先生はこの業界にお詳しいなって。しかも、女の子特有の描写がすごく上手なんですね。女子あるあるがすごく丁寧に描かれていて、ハッとすることも多かったです。
――女子あるある! どんな描写に感じましたか?
豊田:たとえば、10代の女の子同士の距離感って、大人同士の距離感と違うと思うんですよね。由美子は友達がたくさんいて、常に周りに誰かいる。千佳は友だちがあまりいない。由美子は仕事面で千佳に嫉妬しているけれど、千佳は人間として由美子にあこがれとうらやましいって気持ちがあるんです。そういう感覚って女の子っぽいなって思いました。
――人間関係が生々しく描かれているということですね。
豊田:お仕事の描写だけでなく、女子高生の人間関係まで描いているところに感動しました。あと、娘から見る父親への気持ちとか。「これはわかるなあ」と思いながら、読んでいました。
――声優のお仕事面についてもリアリティを感じましたか?
豊田:そうですね。公開収録、ライブイベント……新人声優あるあるがたくさん盛り込まれていました。声優の賞味期限なんて単語も出てきて、マネージャーに「ここで爪痕を残さないと」みたいなことを言われるのも、「めちゃめちゃリアルに描くじゃん(笑)!」って思っていました。フィクションを感じたのは、お風呂シーンくらいかな。いや、リアルでもお友達とお風呂に入るし……全体的にすごくリアリティがあると感じていました。
――今回のオーディオブックでは、第1巻を豊田さんがおひとりで収録したわけですが、収録はいかがでしたか?
豊田:大変でした。著者のお名前から最後の奥付まで、全部あますところなく読むうえに、台本が190ページ近くあって……。物量が多かったですし、ト書きから登場する人物まですべて演じるんです。男女問わず年齢も幅広く演じるのは楽しかったんですが、ト書きを読むのは大変でした。
――小説のト書きは風景描写だけでなく心情描写も混ざるから複雑でしょうね……。
豊田:説明の文章は淡々と読みつつ、モノローグは感情を込めて。その切り替えは難しくはなかったんですが、言い慣れていない言い回しがたくさんあって。小説には著者さんの文体があるので、読むときにはなかなか慣れなくて、ナレーション原稿を読むのとは違う難しさがありました。
――オーディオブックで収録をしてみて、作品の印象は変わりましたか?
豊田:変わりました。実際に音読すると、状況が目に浮かびやすくなりました。とくに、お泊りをするシーンで、由美子が千佳のお母さんに千佳のことを語って、それを千佳がこっそり聴いているという一連のシーンは収録をして、すごく好きになりました。個人的に一番好きなシーンです。
ラジオの時は、私の素が一番出ていると思います
――豊田さんの「ウラ」と「オモテ」について聞かせてください。声優・豊田さんと普段の豊田さんには違いがありますか?
豊田:「ウラ」と「オモテ」の違いですか……。あるかなあって思ったんですけど。いまはないかもしれないです。ネガティブな一面や繊細なところは、私にもあると思うんですけど、誰もがもっているものだと思うし……。この作品で由美子や千佳は、本当の自分を隠して、ファンに受けるために、声優としてわかりやすいキャラ付けをしているんですよね。そういうところは似ていて、私も新人のころは、キャラ付けというほどではないですけど、すごく探りさぐり慎重にやっていたと思います。私、茨城出身なんですけど、当時の茨城にいた私の世代の女の子は、みんなギャルだったんです(笑)。悪いことをしていたわけではなく、ギャル文化が当たり前だったので、私の見た目もギャルでした。声優になった直後は黒髪の子が多い時代だったので、私も黒髪にしましたし、眉毛も頑張ってはやしたんですよ(笑)。
――デビュー当時は「オモテ」と「ウラ」があった?
豊田:デビュー前の私は、由美子そっくりでしたね。学校大好き、友だち大好き、楽しいこと大好き。でも、声優としてデビューしたら、千佳そっくりになりました(笑)。
――デビューをして千佳のようになっていた、豊田さんが現在のように「オモテ」と「ウラ」がなくなったのは、どんな転機があったのでしょうか。
豊田:この『声優ラジオのウラオモテ』では、由美子と千佳がキャラ付けをやめた瞬間に、ラジオが面白くなっていくというストーリーがあるんですが、本当にそのとおりだなと思うんです。私も新人のころは、発言するときも「これは言っちゃいけないのかな?」「これって面白いのかな」って探ってばかりだったんですけど、最近は「言っちゃえ!」「面白くなるなら良いか」って、いい意味で探らなくなったんですよ。そうしたら、ラジオの仕事が増えました。ここ数年やってきて「自分を飾らないほうが評価されるんだな」って思うことが多くなりましたね。
――豊田さんのお仕事には、2016年から続いているラジオ番組(「Pyxisの夜空の下de Meeting」)もありますが、ラジオのパーソナリティをするときに大事にしていることは何ですか?
豊田:今ラジオのパーソナリティをしているときは、「こうしたほうがいいのかな?」こうしたほうが聴いてもらえるかな?」みたいなことを深く考えていないんですよね。そもそも人前でしゃべることも好きだし、自分の話をしゃべるのも好きだし、多くの人たちとやりとりすることが好きなんです。たぶん、根が陽キャなんだと思います(笑)。ラジオは私に向いているなって思います。ラジオの時は、私の素が一番出ていると思います。
――ラジオのどんなところが好きですか?
豊田:ラジオはコミュニケーションツールだと思っていて、よい交流の場だと思っています。とくにファンの方からのメールやお手紙を読むのが好きですね。自分が出ているラジオに関するリアクションは、Twitterのハッシュタグを全部追ってみていますよ。
――豊田さんは芸人さんのラジオのヘビーリスナーでもあるそうですね。
豊田:深夜の生放送番組をよく聴いているんです。リアルタイムに時間を共有している感じがあって好きなんです。空気階段さん、霜降り明星さん、マジカルラブリーさん……みなさんから影響をすごく受けていますね。
――どんなときにラジオを聴いているんですか?
豊田:私は家事が嫌いなんです(笑)。でも、ラジオを聴いている間は、家事を頑張れるんです。家に帰ってきたら、ラジオをつけて。深夜放送の2時間の間に、食器を洗って、お風呂に入って、寝る準備をして。ラジオが終わったころに寝落ちするみたいな(笑)。そういうルーティンみたいにラジオを聴いています。
――豊田さんの日常生活にラジオが入っているんですね。
豊田:そうなんです。そういうふうに今回のオーディオブックは、日常生活の中でも聴けると思うんです。日常でも流して、作品をまるまる楽しむことができるんじゃないかと思います。みなさんにラジオドラマ感覚で、日常の中で楽しんでもらえたら嬉しいです。
取材・文=志田英邦 写真=竹花聖美
豊田萌絵(とよた・もえ)
声優。茨城県出身、スタイルキューブ所属。『響け! ユーフォニアム』川島緑輝役、『ノブナガ先生の幼な妻』熱田杏役などを演じる。ラジオパーソナリティとして「Pyxisの夜空の下de Meeting」(超!A&G+・ニコニコチャンネル)「ヴァイナル・ミュージック~歌謡曲2.0~」(文化放送)など多彩な活動を行っている。
第26回電撃小説大賞《大賞》受賞作品『声優ラジオのウラオモテ』がオーディオブックになって登場!
人気声優として活躍中の豊田萌絵さん(1巻・3巻)、伊藤美来さん(2巻・4巻)による朗読。
1巻購入者限定スペシャル特典の配信が決定。
ListenGo by dwango.jp(リスンゴ)にて好評配信中!サイト内では試聴も可能です。
https://listengo.dwango.jp/page/audiobook-seiyuuradio
▼オーディオブック配信情報
【タイトル】声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?
【著者】二月 公
【イラスト】さばみぞれ
【ナレーター】豊田萌絵
【配信日】2021年9月16日
【セール価格】880円 (880pt) 税込
【セール期間】2021年11月30日(火)まで
【通常価格】1,386円 (1,386pt) 税込
【購入特典】2021年10月4日(月) 18:00~ ニコ生特番で発表!
【特設ページURL】 https://listengo.dwango.jp/page/audiobook-seiyuuradio
【生放送視聴URL】 https://live.nicovideo.jp/watch/lv333484467