2022年アニメ化決定の漫画『アオアシ』、スピンオフ始動! アシトの兄・瞬のサッカー人生が今、動き出す

マンガ

更新日:2021/10/11

アオアシ ブラザーフット
『アオアシ ブラザーフット(1)』(小林有吾/小学館)

 漫画誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」で好評連載中のサッカー漫画『アオアシ』。主人公・青井葦人がサッカークラブのユースチームで仲間たちと切磋琢磨しながら成長していく姿が人気を博し、2022年にはアニメ化も決定している。そんな人気タイトルにスピンオフ作品が登場するのはよくある話。しかし『アオアシ ブラザーフット(1)』(小林有吾/小学館)はスピンオフではあるが、『アオアシ』の作者自らが手がけており、本編の世界観そのままに楽しめる。

 本編である『アオアシ』では、愛媛のサッカー少年・アシトが「東京シティ・エスペリオンFC」ユースチームの監督からセレクション受験に誘われるところから始まるが、アシトの家庭には東京に行くだけの金銭的余裕がなく、母親は反対。そんな彼を助けたのが、兄の瞬であった。瞬は自らバイトをして東京行きの資金を工面し、アシトを送り出した。そんな理解ある兄なのだが、一方で弟の活躍を素直に喜べない感情も同時に抱えていた。実は彼も小学生の頃、その才能を期待されていたサッカー少年だったのである。しかし小児ぜんそくの持病があり、地元ユースチーム入りの夢を諦めざるを得なかった――そう、本作はアシトの兄・瞬が、サッカーにもう一度真剣に向き合う姿を描いた物語なのである。

 小児ぜんそくは完治したが、サッカーへの未練に蓋をして生きてきた瞬は、いつしか真剣にサッカーをやっている試合を観ることができなくなっていた。しかしアシトの中学時代の同級生・椎名七波から東京でのアシトの活躍を伝えられ、さらに頼まれて参加したクラスマッチでのサッカーの試合で、かつて得意だった左足でのフリーキックを見事に決めたことで、彼のくすぶっていた思いに再び火が付く。まずは部活のサッカーから、と母親を説得しようとしていた矢先、瞬の家に思いがけない連絡が。それはかつて誘われていたACE(アスレティカクラブ愛媛)ユースチームからの、練習生としての参加要請であった。

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 ACEはJ2のクラブチームで万年下位。そのユースチーム入りには瞬の高校の教頭も賛同しなかった。なぜなら彼の成績は優秀、どこの大学でも受かるであろう中で、そんなリスクを負う必要はなかったからだ。それでも瞬は母親や七波らと共に、ACEの試合観戦に向かう。しかし万年下位というだけあり、試合はACEの惨敗。サポーターは意気消沈し、クラブの営業はスポンサーに平身低頭である。ユースチームの選手にすら「踏み台」としか見られていなかったが、瞬の目には弱くても見捨てないサポーターや、必死にチームを支えるボランティアたちの姿が輝いて見えたのだ。このときに彼の心はハッキリと決まり、練習生としてユースチームへ合流することに──。

 私は当初、本作のタイトルを「兄弟の絆」などを意味する「ブラザーフッド」だと思っていた。しかしよくよく見れば「ブラザーフット」だったのだ。無論これはフットボールのフットにかけた造語であり、瞬の持つ芸術的な左足にもかかっているのだろう。愛媛の地でリスタートした瞬と、東京で強敵たちと戦うアシト。舞台はそれぞれ異なるが、同じ日本のユースチームである。いつかふたりの進む道の交わる日が来るかもしれないと考えると、今後の展開が楽しみで仕方ない。

文=木谷誠