日本を代表するキャラクター「ゴジラ」その歴史を網羅……だけじゃない! 大充実のゴジラ&特撮本!

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更新日:2021/11/19

ゴジラ全怪獣大図鑑
『ゴジラ全怪獣大図鑑』(講談社:編/講談社)

 夏に公開された海外版『ゴジラVS.コング』を観てきた。大画面で大暴れのゴジラとコングに大満足! 帰り際に周囲を見ると親子連れもかなり居て、どの子も興奮したような顔だった。独身の小生だが、怪獣は親子……いや既に三世代に亘り楽しめる文化だと思っており、大人と子どもが対等に語り合えるものだと自分で勝手に定義づけている。だからこそ、親子共々、老いも若きも、数多の怪獣たちを見分ける知識があれば楽しみが広がるに違いない。

『ゴジラ全怪獣大図鑑』(講談社:編/講談社)は、1作目の『ゴジラ』(1954年公開)から、海外版最新作『ゴジラVS.コング』まで全ての登場怪獣を網羅。迫力満点の写真付きで紹介されており、造形の違いも一目瞭然。そう、ゴジラと一口にいっても制作年により着ぐるみの造形が違うのだ。マニアには常識とされているが、いくつかのポイントを読者の皆さんにも覚えてほしい。そして子どもたちと怪獣知識を競い合うのだ!

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 まずはやはり第1作ゴジラから始まる。モノクロ時代の作品だけに、本書でもモノクロで紹介されているが、かえってそれが独特の空気や不気味さを醸し出している。デザイン的にも生物的爬虫類的な艶めかしさが感じられないだろうか。小生が初めてこの第1作を見たのは学生時代、地元の深夜放送だった。雑誌などでスチル写真は見ていたが、やはり動く姿は感慨深かった。しかし、何よりも終戦から10年も経っていない公開当時の空気を画面を通してしっかり感じられたことが驚きだった。

ゴジラ全怪獣大図鑑
『ゴジラ』(1954年公開)/TM & © TOHO CO., LTD.

 第1作の大ヒットにより以降の続編が制作されたが、その度に少しずつゴジラのデザインが変わっていった。当初は凶暴そうな雰囲気だったのだが、やがて目が大きくなり柔和な顔つきになっていったのは、子どもたちの人気が上がるにつれてなのか。特にゴジラの幼体とされるミニラが登場した『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』での着ぐるみは親の温もりを表現したものかも知れない。また個人的な感想だが、横浜中華街で春節祭の折、中国獅子舞を見た際、似ているなぁと思ったことがある。特に黒獅子が似ていると思うのだ。

ゴジラ全怪獣大図鑑
ゴジラ 1967/TM & © TOHO CO., LTD.

 その後また精悍な顔つきと、畏怖を感じさせる造形になっていく。近年の海外版ゴジラは首が太く筋肉質な印象で、米国文化を感じる。また庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』では、目と腕が小さくなりより一層「異形の怪物」といった雰囲気だ。その中で小生が最も「恐怖」を感じたのは、2001年公開『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』のゴジラだ。太平洋戦争で命を落とした人々の想いを背負うという設定。その眼には瞳がなく、実に冷たい眼差しで背筋が凍る思いだ。

ゴジラ全怪獣大図鑑
ゴジラ 2001/TM & © TOHO CO., LTD.

 では、現在のゴジラはみな厳ついのだろうか? 否、ここで皆さんにお伝えしたいゴジラがいる。彼の名は「ゴジラくん」。YouTubeを中心に展開される怪獣人形劇『ゴジばん』の主人公だ。可愛らしくディフォルメされつつリアルな質感をもった怪獣たちが繰り広げる楽しい物語は、子どもたちにも親しみやすい上、特撮愛に溢れた小ネタの数々が古くからのファンを魅了して止まない。YouTube Godzilla Channelゴジラ(東宝特撮)チャンネルにて全話配信中、是非ともご覧いただきたい。

ゴジラ全怪獣大図鑑
ゴジぱん/TM & © TOHO CO., LTD.

 実は本書、ゴジラ映画だけでなく、幻の作品『獣人雪男』をはじめ『透明人間』や『美女と液体人間』といった東宝の古典特撮に加え、伝説の子ども向けテレビバラエティ『おはよう!こどもショー』のコーナーだった『行け!ゴッドマン』や『行け!グリーンマン』も紹介している。いずれも東宝制作のヒーロー作品で、ゴジラ怪獣が敵として登場するからだ。これだけ知識の詰まった本書で特撮の歴史に触れた子どもたちの将来がどうなるのか、実に楽しみなのである。

文=犬山しんのすけ