テレビアニメ『鬼滅の刃』無限列車編――列車に乗る前夜、煉獄さんの身に起こったこととは…おいしそうな食べ物や大正時代ならではの背景にも注目/第1話
公開日:2021/10/12
※この記事は第1話の内容を含みます。ご了承の上お読みください。
10月10日、テレビアニメ『鬼滅の刃』無限列車編がスタートした。テレビアニメ第1期『竈門炭治郎 立志編』が反響を呼んだ後、公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は日本映画史上最高の興行収入400億円を突破。『鬼滅の刃』2期の放送が決定したとき、多くの人が映画の続きだと考えていた。しかし続編は、新しいストーリーや追加映像を含めた「無限列車編」からスタートする。映画を見ている人も見ていない人も楽しめるのだ。
特筆したいのが、テレビアニメ『鬼滅の刃』無限列車編の第1話は完全新作だということ。原作にもないストーリーで、映画で圧倒的な存在感を示した炎柱・煉獄杏寿郎を主人公にして、映画の前日譚が明かされる。
そば、あんパン、お弁当……1話の前半では、物語と並行しながら大正から現在まで愛されている食べ物が登場した。SNSで「飯テロ」という言葉があふれるほどおいしそうに描かれ、食べることが好きな煉獄というキャラクターを象徴していたのではないだろうか。織りなされる物語はもちろんフィクションだが、そば屋で働く主人、弁当を売る少女とその祖母、列車の整備工場の工員たちなど、働く人たちの描写や、背景に映る情景は大正時代の「リアル」を表していた。
第1話は無限列車で車掌が何者かに襲われるところから始まる。
すぐに場面は変わり、そば屋で食事中の煉獄のもとに、鬼殺隊の隊員が訪れる。どうやら前夜、彼は別の鬼との戦いで煉獄と一緒だったらしい。そば屋の主人は、新聞を広げ、無限列車で多くの乗客が行方不明になり運行停止になったと2人に話す。煉獄は不穏な気配を感じ、車掌の遺体が発見された駅を検分しに行く。
駅にいたのが、駅でお弁当を売る幼い少女ふくとその祖母である。煉獄はふくに「鬼を見ていませんか?」と単刀直入に尋ね「鬼なんかいるわけない」と怒られる。ふくは、車掌を殺したのは切り裂き魔だと思っていた。煉獄は明るい笑顔のまま、切り裂き魔はおれが片づけると言い、客足が遠のき、売れ残っていたお弁当を全部買う。
ふくの祖母は、いやな予感がしていた。これは第1話後半の伏線でもある。煉獄は車庫行きの列車に乗り込むが、車庫にはもう無限列車はなく、整備工場に運ばれたと知った煉獄は列車から飛び降り工場に向かう。
工場で無限列車を目にした煉獄は、鬼がいた気配を感じ取る。既に深夜だが、工員たちは明朝の無限列車運行再開に向けて整備をしていた。そこに登場したのが「切り裂き魔」の鬼だ。子供の工員をつかまえ、ふくたちが売っていた弁当をふみにじる。鬼は、人間の食べるものがまずそうに見えて仕方がなく、弁当を作った奴を殺したいと言うのだ。煉獄によって退けられた鬼は、ふくを狙って逃走し、煉獄はその後を追う。
ふくに襲いかかる鬼に向かって駆ける煉獄の描写は炎そのものだ。煉獄が刀を振るうときの炎の迫力や、鬼を斬った瞬間に変化する表情は注目どころだ。
それを見ていたふくの祖母は、過去の記憶とだぶる姿に、20年前、同じように炎柱に救われたことを思い出す。
「それは、きっとおれの父でしょう」
煉獄ははっきりと言う。映画では気力を喪失し、酒浸りだった煉獄の父。彼の過去の栄光が描写される貴重な場面でもある。
煉獄は、多くの犠牲者を出した鬼はこいつではない、もっと強力で得体が知れないはずだと夜が明けるなか確信し、この日、煉獄は無限列車に乗り込む。彼にとっての運命の日だ。
煉獄が無限列車で炭治郎たちに会ったとき、食べていた弁当はふくたちが売っていたものだということが明かされ、映画の要となる人物たちも画面に映る。最後の台詞は、煉獄が無限列車の中で弁当を食べたときの「うまい!」だ。
第2話からは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の内容に入る。映画にはなかった、新しい映像やBGMも追加されているそうだ。
公式ホームページでは、他の柱たちがそれぞれの煉獄のイメージを語る次回予告特別版が視聴できる。第1話をふまえて見れば、この後の展開により心が動かされるはずだ。
文=若林理央