なかやまきんに君「5年前まではプロテイン飲んで大丈夫? とか聞かれていた」ブレずに筋肉と向き合ってきた25年間
更新日:2021/10/17
筋肉を愛し、筋肉とともに人生を歩んできた、元祖「筋肉芸人」なかやまきんに君。10月13日に、日めくりカレンダー『なかやまきんに君の[日めくり]パワー!ワード!』(ヨシモトブックス)が発売された。このカレンダーには、きんに君による前向きな「31の筋肉メッセージ」が掲載されている。カレンダーになぞらえ「言葉」について聞いてみると、実直でブレないきんに君の“人間性”が見えてきた。
(取材・文=堀越愛 撮影=島本絵梨佳)
行動を変えた言葉
――トレーニングをすることで身体が変わるように、これまできんに君さんが「言葉」で変わったと思うことはありますか?
なかやまきんに君(以下、きんに君):あります。小学生の頃バスケットボールをやっていて、あるとき他校に練習試合に行ったんです。その学校の廊下に掲示されていた、おそらく環境問題をテーマにした5・7・5の標語作品のひとつに、「それくらい・これが破壊の・第1歩」って書かれていたんですよ。シンプルな言葉なんですけど、すごく覚えています。
――小学生のときですか! すごい記憶力ですね。その言葉がきっかけで、行動が変わったんですか?
きんに君:覚えているのはたまたまですよ(笑)。それだけ衝撃的だったのかもしれないですね。この言葉をきっかけに環境問題について調べるようになって、ごみの分別も気をつけるようになりました。あと、高校卒業後に大阪で一人暮らしをしていたときは、アルバイト生活でお金がないのに高い洗剤を買ったりしてましたね。環境に配慮した洗剤を買うために、自転車で30分くらいかけて洗剤が売られているお店に行ってました。
――30分かけてですか! 徹底してますね。ちなみに、最近気になっている「言葉」はありますか?
きんに君:仏教用語とか気になりますね。「人間って結局のところこうなんだ」みたいなことを説いてるじゃないですか。すべての欲を捨てろ、とか。「この時代にはもう答え出てたのか! 今頃言われても!」って思います(笑)。ちっちゃいときから学びたかったですね。こういうことを知って、育ちたかったです。
――仏教には修行もありますし、筋トレとも近いものがあるのかもしれないですね。
きんに君:こういう話をすると重くなっちゃいますかね(笑)。でも、仏教用語は本当に気になりますね。
良いトレーニングをした後は、ポジティブになれる
――きんに君さんは、ネタも含め前向きな言葉を使うことが多い印象があります。もともとポジティブな性格なんですか?
きんに君:ネガティブなところもありますよ(笑)。誰しも両方の面を持ってると思うんです。でも「なかやまきんに君」として、タンクトップを着て短パンを穿いて人前に出るときは、やっぱり暗く出ていくことはできないですよね。自分の中にないものは出せないし、演じてるわけではないですけど、普段とは少し違うかもしれません。
――そうですよね。筋トレをすることでポジティブ思考になれる、という側面もあるんでしょうか?
きんに君:僕は17歳からトレーニングをしてるんで……もう少し後から始めていたら、「昔は暗かったけど段々明るくなった」とか比較できるんですけど(笑)。だから、正直なところあんまり分かんないんです。でも、“良いトレーニングをした後”は絶対ポジティブになりますね。調子が悪いときって、関節とかに力が入ってしまって全然筋肉に効いてない感じがあるんです。でも良い筋トレができると、すごいきついんですけど、「これは成長するぞ」って分かるんですよ。そういうときは、めちゃめちゃ楽しいです。仕事で失敗しても、「でも筋トレで成長してるし」って思えたりしますし。
――自己肯定感もすごく上がりそうですね。
きんに君:そういうサイクルのときは、すごく上がります。逆に、ケガをしてしまってあまりトレーニングができないときは落ち込んだりもします。
――筋トレは今でこそ流行になっていますが、以前はけっこうマイノリティでしたよね。
きんに君:そうですね。25年前に筋トレを始めましたけど、5年前くらいまでは「変わっている人」っていうイメージを持たれてたと思います。「プロテイン飲んで大丈夫?」とか「なんのために鍛えてるの?」とか。「頭まで筋肉バカだよね」とか、バカにされることも多かったですね。そんなふうにネガティブなことを言われても笑って返す、というのを続けてきた分、少し勉強はできたかもしれないですね。マイナーなことをやってる人の気持ちが分かる、というか。自分が変な目で見られていた分、「こういう人もいる」って思えるようになったかもしれません。
――きんに君さんは、ブレずにずっと同じスタイルを継続して来てますし、すごいなと思います。
きんに君:キャラクターがあって珍しいのでテレビには出られたんですけど、「すぐ飽きられる」とか「筋肉でお笑いは無理だよ」とか、いろいろ言われましたね。確かに、よく考えると長い間やってますね(笑)。僕は、筋肉がついたら単純に「かっこいい」と思って筋トレを始めたんです。そんなかっこいい筋肉とお笑いが合わさったら、「必ずなにかが起きる」ってずっと思ってたんですよ。でも、同じようなことをしている先輩がいなかったので……常に「どうしたら良いのかな」とか「またスベってしまった」とか思ってましたね。でもそういう積み重ねが、今の芸風につながっているんだと思います。
80歳で世界大会へ
――2021年は、ボディビルの大会で優勝されたこともあり、一つの節目を感じる年だったのではと思います。きんに君さんのこれからの目標を教えてください。
きんに君:「これができたら筋肉芸の完成」だと思える、“お笑い”の目標があります。アメリカから、ボン・ジョヴィさんに来ていただいて、生バンドで『It’s My Life』を演奏してもらうんです。僕が「どーもー」って出てきて、客席に「一緒にやりたい人いませんか?」と募って、舞台に上がってきてもらうんですね。それで「お名前はなんていうんですか?」と聞くと、「アーノルド・シュワルツェネッガーです」と。「来てくれたんですね! チケットはどうやって買ったんですか?」「ぴあで」「ぴあか~い!」(笑)。で、ネタの最後にシュワルツェネッガーさんと「ヤー!」をやって終わりっていう。これが、「お笑い」の目標です。
――すごい、壮大な目標ですね!
きんに君:それから、「筋肉」の目標は80歳くらいでボディビル大会の日本代表になることですね。今の若い世代には筋肉のすごい人が多いので、世界大会に行くのってかなり厳しいんです。でも60代くらいになると、ケガをしたりしてボディビルを続ける人がかなり少なくなるんですよ。僕はできるだけ身体を維持しながら、ずっと続けていきたいと思っていて。80歳くらいで世界大会に行きたいので、今から食べ物に気をつけたり、ストレスを溜めないようにしてますね。とにかく「でかくしたい」という気持ちもあるんですけど、それをしてしまうと関節に良くないのでちょっとブレーキをかけたり……。
――そこまで見据えながら、筋トレをしているんですね。
きんに君:はい。80歳で世界大会に行きたいと思います。